さくら讃歌  

【解題】

 
初心者も熟練者も共に楽しく合奏できる事を目的として作曲したもので日本古来の曲調を移して素朴で大らかな雰囲気を表したつもりです。
公開演奏の場合の人員は最小限度箏の各部二名(計六名)に対して唄は各部六名(計十二名)以上が効果的です。(作曲者の解説による)

【解析】


○をとめ ら が|かざし のために   |みやび | を が|かづら   の|ため と|
 乙女 たちが|髪に挿す ために、また、 風雅 な|若者が|髪飾りにする |ためにと|

○   |    しき|ませ |  る|  国の|はたてに|さきにける|
 天皇が|隅々まで領有|なさっ|ている|この国の|果て に|咲いている|

○桜の花の|にほひはも|あなに
 桜の花の|色つやは!|何と美しいことよ。(万葉集・巻第八・春雑・1429・若宮年魚麻呂)

【背景】

 かづら

 「カミ(髪)ツラ(蔓)」の約。ツラは「蔓」(つる)で、植物の細長く伸びた茎のこと。カヅラは、それを編んで髪飾りにしたものの意。蔓だけでなく、梅・菖蒲・橘・さ百合など、また、この歌に詠まれているように、桜も使われた。

 はたて


 「ハタ(極)テ(方)」の意。ハタはハテ(極)などと同根。テは「行くて」などのテと同じ。

 にほひ

 「にほひ」は色艶のことで、視覚的感覚。「香(か)・薫(かほ)り」は嗅覚的感覚。

 あなに

 強い感動を表す語。古事記に伊弉諾(イザナギ)・伊弉冊(イザナミ)二神が互いを褒め合って、「アナニヤシ、エヲトコヲ」「アナニヤシ、 エヲトメヲ」と言ったという記事がある。

作詞:若宮年魚麻呂 
作曲:初世伊藤松超





【語注】

かざし 「カミ(髪)サシ(挿し)」の約。髪に挿(さ)すこと。また、髪に挿すもの。簪(かんざし)
みやびを 「ミヤ(宮廷)ビ(風)ヲ(男)」の意。風流の士。
かづら⇒背景
かづらのためと 「咲きにける」に掛かる。
はたて⇒背景
にほひ⇒背景
あなに
⇒背景

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