愛唱歌歌詞解説

 早春賦 (『新作唱歌第三集』大正2年 に発表) 作詞 吉丸一昌(1973-1916) 作曲 中田章(1886-1931)

―――【解題】―――

 この詩に歌われたのは、長野県安曇野の早春。この歌の歌碑が、JR穂高駅から東に1.5km、穂高川右岸の堤の上にある。


―――【解析】―――

○春 は|名のみ の|風の寒さや
 春とは|名ばかりの|風の寒さよ!

○谷  の鶯| |  歌      は思へど
 谷に住む鶯|も、春の歌を歌いたいとは思うが、

○    時に |あら|ず|と    声も立て ず
 まだその時では|  ない |と思って、声も立てない。

○氷 解け去り 葦は|角(つの)ぐむ
 氷は解け去り、葦は|芽をふくらませる。

○さては     |  時|ぞと思ふ |あやにく
 さては、いよいよ|その時|かと思うと、期待に反して、

○今日も|きのふ|も|雪の空
 今日も| 昨日 |も|雪の空が続く。

○  |春 と聞か | ね  |ば 知ら|  で|あり|し| を
 暦は|春だと聞いて|いなけれ|ば、知ら|ないで|い |た|のに、

○  |聞け  ば|  |急(せ)か| るる |  胸の|    思ひ|を
 春と|聞いたから|こそ|     | つい |
            |待ち焦がれ|てしまう|この胸の|春を待つ思い|を

○    |いかに|せよ と| の    この頃               |か
 いったい|どう |晴らせと|いう、今日この頃の季節の進みのじれったさだろう|か!


【語注】

春は名のみの 曲名の『早春賦』が示すように、暦の上ではすでに立春が過ぎ、人々の心の中には春が到来している。それなのに、現実の春はなかなかやってこない。

角ぐむ 接尾語「ぐむ」は、内部にある力や物が外に現れようとする意。「涙ぐむ」などの例と同じ。

今日も昨日も 普通なら「昨日も今日も」という所を、さりげなく倒置表現を用いて、詩的な味わいを持たせた。

急かるる 「るる」は自発。


 赤とんぼ

―――【解析】―――

○夕焼け小焼けの 赤とんぼ

○    | 負われて|見たのは いつの日      か

 ねえやに|背負われて|見たのは いつの日だっただろうか。

○山の畑の 桑の実を 小籠に摘んだ      は|まぼろし   か
              摘んだ楽しい思い出は|まぼろしだろうか。

○十五 で|ねえやは 嫁に行き
 十五歳で|

○  |お里  の|たより|も 絶え果てた
 私の|実家からの| 連絡 |も 絶え果てた。私は預けられた親戚の家で、一人ぼっちになってしまった。

○夕焼け小焼けの 赤とんぼ とまっているよ 竿の先

【語注】

ねえや 裕福な家に雇われる、子守娘。

お里 諸説あって、真相は分からない。露風が幼い頃、母親は放蕩三昧の父親を嫌って家を出てしまい、露風を育てられなくなった父親は、祖父に預けてしまった。おさととは、自分の生まれた家、つまり父の家を指すという解釈がある。

 椰子の実

「椰子の実」は島崎藤村の詩集『落梅集』に収められている。昭和11年に国民歌謡の一つとして、山田耕筰門下の大中寅二が作曲した。

―――【解析】―――

○名 も知らぬ |遠き島より 流れ寄る |椰子の実一つ
 名前も知らない|遠い島から 流れ着いた|椰子の実一つ。

                           ┌───────────-┐
○ふるさとの岸をはなれて|なれ|は| そも |波に|いく月|     |   ↓
  故郷 の岸を 離 れて|お前|は|いったい|波に|
幾 月|漂ったこと|だろうか。

                             ┌───────────┐
○        |もとの樹は          |生い|や|茂れ|  る|   ↓
 お前が実っていた| 元 の樹は、今でも遠い南の島で|生い| |茂っ|ている|だろうか。

                     ┌───────────┐
○    枝は    なお|  |かげを|や|なせ|  る|   ↓
 その樹の枝は、今でもまだ|濃い| 陰 を| |作っ|ている|だろうか。


○われもまた|        |なぎさを枕     |ひとり身 の|うき寝 の旅    ぞ
  私 もまた|お前と同じように| 渚 を枕にして眠る、一人ぼっちの|さすらいの旅にいるのだ。
 
○   実を|  とりて|胸に|あつれ|ば|新たなり      |流離のうれい
 椰子の実を|手にとって|胸に|当てる|と、          |漂泊の悲しみが
                     |新たに込み上げてくる。

○海の日の 沈む を見れば|たぎり落つ |異郷        の涙|
 海の日が 沈むのを見ると、      |異国をさまよう悲しみの涙|が
             |たぎり落ちる。

                           ┌──────────────┐
○思いやる|八重の |汐々  |  |いずれの日に |か| 国 に|帰ら |   ん|
 思いやる|遠い遠い|海の旅路、私は|いつになったら| |故郷に|帰れる|のだろう|か。

 菩提樹  詩:ヴィルフェルム=ミュラー 訳詞:近藤朔風 作曲:シューベルト

―――【解析】―――

○泉に沿いて 茂る   菩提樹
 泉に沿って、茂っている菩提樹

○     |慕い 行きては    |うまし夢 見|つ
 その木陰を|訪ねて行っては、いつも|楽しい夢を見|た。

○幹(みき)には|彫(え)り  |ぬ      |ゆかし|言葉
 幹    には|彫(ほ)りつけ|た、あなたへの|愛の |言葉。

○うれし     悲し に   とひ|し|その 陰(かげ)
 うれしいにつけ、悲しいにつけ、訪れ|た|その木蔭    よ。

○今日も過(よぎ)りぬ 暗き|小夜中(さよなか)
 今日も通り過ぎ  た、暗い|真夜中     に。

○   |ま闇(やみ)に立ちて|まなこ 閉(と)づれ|ば
 今でも、暗闇    に立って、 目 を閉   じる|と、

○枝は  そよぎて   |語る   |ごとし
 枝は風にそよいで、私に|語りかける|ようだ。

○    来(こ)よ、いとし 友 |此処(ここ)に|幸(さち) |あり
 「帰っておいで  、いとしい友よ、ここ    に|幸せ   が|あるよ」と。

○  面(おも)をかすめて|吹く風 寒く
 私の顔    をかすめて、吹く風は寒く、

○笠(かさ)は飛べ     |  ども|捨てて急ぎぬ
 笠    は飛んでしまった|けれども、捨てて急いだ。

○         |はるか 離(さか)りて|  |たたずま へ |ば
 今、あの菩提樹から|はるかに離    れて、一人|たたずんでいる|と、

○   |なおも|きこゆる        此処に幸  あり
 今でも|まだ |聞こえる、菩提樹の声、「ここに幸せがあるよ」

【語注】

たたずまへば 「へ」は四段活用の動詞を作り、継続・反復を表す接尾語。「たたずまへ」は「たたずまふ」の已然形。

うまし夢 ゆかし言葉 いとし友

 形容詞の終止形を連体修飾に使うことは、連体形が発達しなかった古代に行われ、万葉集などに例がある。

○うまし  |国ぞ 秋津島 大和の国は
 素晴らしい|国だ 秋津島 大和の国は (万葉集・巻一・舒明天皇の歌)

 近代の訳詩者は、これを応用し、詩的表現としてしばしば使った。


 花


作詞:武島又次郎(1872-1967)
作曲:滝廉太郎
―――【解析】―――

○春の|うらゝ   の|隅田川 のぼりくだりの|船人|が

 春の|うららかな日の|隅田川。       |船人|の

○櫂(かい)  の| 雫 |も|花|   と|散る
 櫂から落ちる水の|しずく|も|花|のように|散る、

             ┌──────────────┐
○       ながめを|何に|たとふ|   べき  |
 この素晴らしい 眺 めを|何に| 喩 え|たらよいだろう|か。

○見ずや   あけぼの | 露 浴びて われ に|もの言ふ |櫻 木を
 御覧なさい、あけぼのに|朝露を浴びて、私たちに|語りかける|桜の樹を。

○見ずや   夕ぐれ | 手 |を|のべ  て われ  |さしまねく|青柳
 御覧なさい、夕暮れに|細い枝|を|差し出して、私たちを|   招 く|青柳を。

○    |  錦| |をりなす     長 堤に   暮るれ|ば|のぼるおぼろ月
 桜と柳が|春の錦|を|織り上げる隅田川の長い堤に 日が暮れる|と| 上 る 朧 月

                          ┌──────────────┐
○げに  一刻も千金 の        |ながめを|何に|たとふ|   べき  |
 本当に、一刻が千金もの価値がある、この| 眺 めを、何に| 喩 え|たらよいだろう|か

【語注】




櫂(かい) 「掻き」(水を掻くもの)の音便なので、「かひ」ではない。
櫂の雫も花と散る⇒【背景】



見ずや 直訳は「見ないか」。ここは疑問ではなく、勧誘。




錦をりなす⇒【背景】



一刻も千金の⇒【背景】
―――【背景】―――

 櫂の雫も花と散る

○春の日のうらら に|  さして |行く船は 
            《差し》
 春の日がうららかに|  射す中に|
          |棹を差して |行く船は、

○ 棹(さを)  の|しずく|も花 |ぞ|散り         |ける
 
《棹》
  棹から落ちる水の| 雫 |も花が|!|散るような長閑さである|ことよ。

 源氏物語・胡蝶の巻で、栄華の絶頂にあった光源氏三十六歳の、六条院の春の賑わいを歌った、上の歌から引いたもの。

 錦をりなす

 自然が織りなす錦には、秋の錦と春の錦がある。秋の錦は紅葉、この錦は、桜と柳が織りなす春の錦である。

○花盛りに京を|見 やり|て|よめ|る| 。
       |  遠く|
       |眺め  |て|詠ん|だ|歌。

○見渡せば 柳    桜   を|こきまぜ て|都ぞ |春の錦   |なり | ける
 見渡すと、柳の薄緑、桜の薄紅を|混ぜ合わせて|都は今|春の錦の織物|である|ことよ。

                          (古今集・巻一・春上・素性法師)

 一刻も千金の

春夜   蘇軾

春宵一刻値千金 ○春 宵(しゅんせう)|一刻 |値(あたひ)|千金 |
         春の宵      は、一刻が|      |千金に|
                       |値する   |

花有C香月有陰 ○花に C   香  有り|月に|   陰(かげ) |有り
         花に 清らかな香りがあり、月に|微妙な陰影   が|ある。

        (か くわん)  (ろうだい)  (さいさい)
歌管樓臺聲細細 ○歌  管     楼 台   声 細 細
         歌声と笛の音が、 高 殿から 声も細 々と|聞こえてくる。

                 
(しうせん  ゐんらく) (よる)(ちんちん)
鞦韆院落夜沈沈 ○        | 鞦韆  |院 落    夜   沈 沈
         昼は乙女が乗った|ぶらんこが|中 庭に残り、夜は静かに更けてゆく。

 宋の詩人蘇軾の、上の七言絶句から引用したもの。

【語注】



差し
は縁語。


























蘇軾(そしょく)
 1036〜1101。北宋の文人、政治家。号は東坡。「赤壁賦」の作者としても有名。




 冬の星座 作詞 堀内敬三 作曲 ヘイズ

○木枯らし |途絶えて 冴(さ)ゆる    |空より 地上に|降りしく  奇(くす)しき  |光よ
 木枯らしが|途絶えて 冴え    わたる |空から 地上に|降りそそぐ 不思議なほど美しい|光よ。

○もの皆 |憩へ|  る しじまの中に きらめき|揺れつつ  星座は|  巡る
 もの皆が|休ん|でいる 静けさの中に、きらめき|揺れながら、星座は|空を巡る。

○ほのぼの |明かりて   流るる銀河 オリオン 舞い立ち|スバルは|さざめく
 ほのぼのと|明るくなって 流れる銀河 オリオンは舞い立ち、スバルは|囁き合う

○無窮   を|指差す 北斗  の|   針と    きらめき揺れつつ |星座は  巡る
 無限の彼方を|指差す 北斗七星の|時計の針とともに きらめき揺れながら|星座は空を巡る。


―――【背景】―――

冴ゆる ヤ行下二段活用「冴ゆ」の連体形。現代語では「冴える」。

憩へる ハ行四段活用「憩ふ」の已然形「憩へ」+存続の助動詞「り」の連体形「る」。

奇しき 形容詞「くすし」の連体形。「くす」は「薬」と同根で、人智を超えた霊力を言う。

オリオン舞い立ち オリオン座は、冬の深夜の頃、南の夜空の中央にこん棒と獅子の皮の楯を持って直立した形になる。

スバル スバルは散開星団で、主要な五つから七つの星の周りに白い霧のような星間物質がにじみ広がり、夜空の大気の動きによって、囁き合っているように見える。スバルは本来の日本語で、ラ行四段活用の「統(す)ばる」(結ぶ・統一する)と同じで、「統(す)ぶ」(バ行下二段活用)・「総(すべ)て」などと同根と言われている。

北斗の針 北斗七星は北天にあって、一日に一度天の北極(北極星のすぐ近く)の周りを回る。その動きは、人間の作った時計よりも正確である。なぜなら、人間の時計は星の運行を基準にして時を決めるものだからである。そこで北斗七星は天上の時計の針に譬えられる。

 ふるさと

○兎 |(うさぎ)追ひ   |し|かの山
 兎を|    追って遊ん|だ|あの山

○小鮒(こぶな) |釣り   |し|かの川
 小鮒    を|釣って遊ん|だ|あの川

○  夢は|今も         |  めぐりて
 私の夢は|今も ふるさとの野山を|駆けめぐって

○忘れがたき |故郷(ふるさと)
 忘れられない|ふるさとであることよ。

 ┌────────────────┐
○如何(いか)に|在(い)ます |   |父母(ちちはは)
 どうして  |いらっしゃる|だろうか、父母は。

○恙(つつが)なし        |や 友 がき
 無事で健康に暮らしているだろう|か、友人たちは。

○雨に風に つけても
 雨に風に つけても、

○思ひ出(い)づる 故郷
 思い出す    故郷であることよ。

○志(こころざし)を はたして
 志      を 果 して、

○いつの日にか 帰ら|ん
 いつの日にか 帰ろ|う

○山は青き 故郷
 山は青い 故郷。

○水は清き 故郷
 水は清い 故郷。

―――【背景】―――

兎追ひしかの山 「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、この「き」は直接経験したことを回想して述べる、またその記憶がはっきりと残っていることを表すことが本来の用法である。従ってここは、「兎を追って遊んだ、そのことを今でもはっきり憶えているあの山」の意味になる。

帰らん
 「ん」は「む」が音便化した助動詞で、ここでは意志を表す。

 荒城の月 作詞;土井晩翠 作曲;滝廉太郎

○春 高楼の|花の 宴|      |巡る盃 |  影 |さして
 春は高殿の|花見の宴、侍たちの中を|巡る盃に|月の光が|射して、

○千代   の|松が技 |   分け出で し|  昔の  光 |今いづこ|
 千年を経た |松の枝が|幹から分け出ていた、その昔の月の光は、今どこ |に消えたのか。
 
○秋 陣営の|霜の色      |  鳴きゆく|雁(かり)の|数 |見せ         て
 秋は陣営の|霜の色を白く照らし、空を鳴き行く|雁    の|数が|見えるほど明るく照らして、

○        植うる   | 剣に|照り添ひ  し|  昔  の光 |今いづこ|
 侍たちが手に手に振りかざした|白刃に|射し添っていた|その昔の月の光は、今どこ |に消えたのか。

○いま|  荒城の|夜半の月 |  変はらぬ光 |誰がため        ぞ
 いま、この荒城の|夜半の月の|昔と変わらぬ光は、誰のために照らしているのか。

○ 垣に|残る    は ただ葛(かづら) 松  に|歌ふ は|ただ嵐
 石垣に|残っているのは ただ葛だけである。松の枝に|歌うのは|ただ嵐の音だけである。

○天上 影は 変はら|ね |  ど|   栄枯は移る      |      世の|姿
 天上の姿は 変わら|ない|けれど、地上の栄枯は移り変わって行く、そういうこの世の|姿を

○映さ|ん|と て|   か 今も|なほ     |鳴呼|荒城の|夜半の月
 映そ|う|として|だろうか、今も|なお変わらない、ああ、荒城の|夜半の月であることよ。

高楼 「高楼」は高い建物。ここは天守閣のこと。
陣営 野戦などの陣地のこと。「春」と「秋」、「高楼」と「陣営」は対句。
霜の色 上杉謙信が天正5年9月15日、能登の七尾城を攻略した時、名月を賞(め)でて吟じたという漢詩「九月十三夜」を踏まえた表現と言われる。

○霜は軍営に満ちて秋気清し
○数行(すうかう)の過雁(くわがん)、月三更(さんかう)
○越山(ゑつざん)併(あは)せ得たり、能州の景
○さもあらばあれ、家郷の遠征を懐ふを


鳴きゆく雁の数見せて

○白雲に羽うちかはし飛ぶ雁の数さへ見ゆる秋の夜の月
(古今集・巻第四・秋下・191・よみ人しらず)

植うる剣 この言葉には諸説があるが、定説は見つかっていない。
葛 つる草の総称。

 ローレライ 作詞:ハイネ 訳詩:近藤朔風

○なじかは|知らね   ど|心 |わび   て
 何故かは|知らないけれど|心が|侘しくなって、

○昔  の|伝へは|そぞろ |身にしむ
 昔からの|伝説は|訳もなく|身に染みる。

○さびしく|暮れ ゆく|ラインのながれ
  淋 しく|暮れてゆく|ラインのながれ、

○入り日に山々 |赤く映ゆる
 入り日に山々が|赤く映える。

○うるわし|乙女の|いわお  に|立ちて
 美しい |乙女が|岩山 の上に|立って、

○こがねの櫛 |  とり|髪のみだれを
  黄金 の櫛を|手に取り、髪のみだれを

○梳(す)きつつ |くちずさぶ|歌の声の
 櫛けずり ながら|くちずさむ|歌の声の

○くすしき|魔力(ちから)に|   魂(たま)も迷う
 不思議な|魔力     に|舟頭の心    も迷う。

○こぎゆく舟びと |   歌に|  憧れ
 漕ぎ行く舟頭 は|乙女の歌に|心を奪われ、

○   岩根も|みやらず|      |  仰げ   ば|やがて|
 浅瀬の岩 も|注意せず|岩山の乙女を|振り仰いでいると、やがて

○浪間に沈むる   |ひとも舟も
 波間に沈んでしまう、舟頭も舟も

○くすしき魔  歌(まがうた)|歌うローレライ
 不思議な魔女の歌、    を|歌うローレライの岩山

 語注

なじか 《ナニシカの転》どうして。なぜ。

○なじかは罪深くかかる物をば取らむとする。(発心集)

赤く映ゆる 「映ゆる」は「映ゆ」(ヤ行下二段)の連体形。ここは連体止め。
うるわし乙女 古い言い方で、形容詞の終止形を連体形のように使っている。

 
あふげば尊し(仰げば尊し) 小学唱歌。作詞者未詳


○  あふげば|たふとし   。わ  が 師 の|    恩  。
 ふり仰げ ば、 尊 いことよ、私たちの先生の|教えのめぐみは。

                     ┌─────────────-┐
○ヘ(をし)への庭     にも。はや|いくとせ |         ↓
 教    えの場、この学校にも、早や|
何 年 が|過ぎたこと|だろうか。

○おもへ     ば|いと |疾(と)し     。このとし月 。
 思い 出してみると、とても|速く過ぎ去ったことよ、このとし月は。

○    今こそ|わかれ め。いざ|さらば  。
 しかし、今 は |別 れよう。さあ、さようなら。


○   | 互 に|むつみ  し。日ごろの 恩  。
 師弟が|お互いに|親しみ合った、日ごろの愛情を、

○わかるゝ |後(のち)にも。やよ|     |わするな 。
 別れ  た|後    にも、なあ、いつまでも、忘れるなよ。

○  身を  |たて    |  名を  あげ。やよ    、はげめ    よ。
 わが身を世に|興(おこ)し、わが名を世に揚げ、なあ、みんな、努力して生きろよ。

○   |今こそ|わかれ め。いざ|さらば  。
 しかし、今 は |別 れよう、では、さようなら。


○朝ゆふ|なれ   にし。  |まなびの|      窓。
 朝 夕 |慣れ親しん だ |この| 学 びの|舎(いえ)の窓。

○ほたるの  |ともし火       。   |つむ白雪     |       。
  蛍 の光を| 灯  にして本を読み、窓辺に|積む白雪の明かりで、ノートをとった。

○わするゝ|まぞなき|    。  ゆく|とし月 。
 忘れる |間もない|懐かしい|過ぎ行く|
年 月よ。

○今こそ|わかれ め     。いざ  |さらば  。
 今 は |別 れよう、しかし…、それでは、さようなら。

今こそわかれめ 「め」は意志の助動詞「む」の已然形で、係助詞の「こそ」の結び。「今は別れむ」を係り結びで強調したもので、「別れ目」ではない。この係り結びは逆説的に後に続く場合が多く、また、特に三番の「今こそ別れめ」の後はフェルマーターを付け、別離の感慨を込めて歌う。

 嬉しい雛(ひな)祭り 作詞:サトウハチロー 作曲:川村光陽

○明かりを 点けましょ 雪洞(ぼんぼり)に

○お花を あげましょ 桃の花


○五人囃子の 笛 太鼓


○今日は 楽しい 雛祭り

○お内裏(だいり)様と お雛様


○二人 並んで すまし顔

○お嫁に いらした     ねえ 様 に

 お嫁に いらっしゃった お 姉 さまに

○よく似た 官女の 白い顔

○金の 屏風に 映る|     |灯(ひ)を

 金の 屏風に 映る|ぼんぼりの|明かり を


○微かに 揺する 春の風

○少し 白酒  召さ   |れ|た|    か

 少し 白酒を 召しあがら|れ|た|のだろうか。

○赤い お顔の 右大臣

○着物を 着替えて 帯締めて


○今日は 私も 晴れ姿


○春の 弥生の この佳き日


○何より 嬉しい 雛祭り


雪洞(ぼんぼり)
 「ぼんやりと柔らかな様子」という副詞から転じて、「小さな行燈(あんどん)」を言うようになった。柱などの上に据えた固定式のものが多い。「行燈」は、木の枠に紙を張った箱の中に油皿を置いて灯火にしたもの。普通は上に取っ手が付いていて、夜、手に提げて歩いた。

○百千のぼんぼり灯し花まつり (佐藤 沙園女(花まつり・四月八日))

五人囃子 能を上演する際に囃子方(バックミュージック)を担当する五人の奏者をあらわし、それぞれ「太鼓(たいこ)」「大鼓(おおつづみ)」「小鼓」「笛」「謡(扇を持っている)」である。

お内裏様 「内裏(宮中)」に住んでいる人、つまり天皇の敬称で、「天皇様」の意。

お雛様 普通は「雛人形」を敬い親しんで呼ぶ言葉だが、この場合はお内裏さま(天皇)の横にいる妃を指している。

官女 宮中に仕える女官、女房。この場合は三人官女のこと。

召されたか 「召す」は「飲む・食ふ」などの尊敬語で、貴人が「飲む・食う」こと。「れ」は尊敬の助動詞。

弥生 旧暦の三月で、太陽暦の四月にほぼ相当する、桃の花の咲く季節である。

 雛祭り 作詞:        作曲:宮城道雄

赤い毛氈、緋毛氈
赤い段々 緋段々
緋桃 白桃 花の枝
桜 橘 えぼんぼり
右に 左に 段々に
並べて 雛の お祭り日



五人囃子に 官女衛士
ずいしん並ぶ 下段には
金具も 蒔絵も 金銀の
お道具そろえて 上段に
お行儀のよい 旦那様
おうれしそうな お顔つき



餅は草餅 菱の餅
赤白青の 重ね餅
さざえ はまぐり お炒り豆
赤飯 白酒 なんなりと
どうぞご遠慮なさらずに
私は雛菓子ごちそうさま