ともチャンの川柳句集

1999.9〜2000.9月作品

この1年間で作った句です。

 

 

1999.9

「光」

いつしかに 灯ともし頃の 汽車となり

一人旅 女は車窓の 方をむき

交叉点 だいだい色は やわらかに

通夜の門 紋提灯も さびしげに

月の夜に あわてて纏う 貸浴衣

やはり華 光かがやく フィナ−レ

震災の 光求めて 二夜三夜

灯がついた ほっと見合す 顔と顔

復興か 光りつながる 商店街

「風」

風鈴は 好き嫌い無く 風と逢い

幕間の 風は前から 後ろから

甲子園 風は六甲 おろしだけ

嵯峨野吹く 風はのどかに 品も良く

永田町 歯切れの悪い 風ばかり

ラ.マンチャの男 風無きゃ のたれ死に

春の風 小樽運河を みぎひだり

風吹くな やっと二人の 観覧車

(この句はアイフルが募集している月例句会で佳作となり[時宗新子選]1万円獲得した句です)

風向きを 気にする奴ほど ダボばかり

 

 

 

1999.10

「流行」

流行に 背を向け生きる 心地よさ

夫婦とも 流行縁無し 除夜の鐘

もう在庫 流行(はやり)すたりの 早い事

強がらず 流行にすれば [君ガ代」も

流行を 追わず離れず 芦屋人(びと)

平成の 流行みんな 腹が立ち

屈託の 無い流行は 長続き

満州へ 渡りし流行 今いずこ

流行を わざと無視する 年になり

「花」

コスモスは より添いながら 秋を待ち

菊人形 今年も同じ 顔に見え

見覚えの 有る花なのに 名を忘れ

まず花で 気を引いてみる 誕生日

ガングロと 上げ底花とは 縁が無し

コスモスさん 動かないでよ 撮るまでは

道東の 原いっぱいに 花は咲き

売れ残り 花だけ綺麗 分譲地

桜散る ひらりはらりと 犬の背に

 

 

 

1999.11

「夢」

夢でこそ ここまで出来る 度胸あり

夢不倫 道行の原も 花少し

寝巻き着て 夢見たうどんが 欲しくなり

見覚えの ある夢やっぱり 里の母

亡き母に ふと会えそうな 今日の夢

たしかめる とも無く夢の 水の音

この夢は ゴッホの好きな 橋を行き

札幌は 夢でもまぶしい 白い朝

さめないで 欲しい夢ほど すぐさめる

「競馬」

何故いつも 買った馬券は 後(あと)と先(さき)

この馬券 走るがままに まかせたり

いつしかに 最終レ−スを 買いそこね

振り向けば 人波ゆれる 万馬券

夕刊の 昨日の予想が 捨てられず

今日も負け 靴下の柄も くたびれて

勝ち組みは おでんをつつく 帰り道

歯茎まで 見せて笑うな 万馬券

はちまきを 締めなおしてみても 又ハズレ

 

 

1999.12

「顔」

政治家の 顔はいやしく 品もなく

老夫婦 顔見詰め合う 除夜の鐘

花火見る 顔はどなたも 口を開け

銀行が 見捨てた顔に 金を貸し

冬の夜の 顔夫々に 呑んだくれ

競馬場 なじみの有る顔 3、4人

同窓会 顔とあだ名が 一致せず

ふと可笑しい 車窓に映る われの顔

国滅ぶ 日本の顔が 小渕では

「ニュ−ス色々」

これ地球 貧乏ゆすりも ほどほどに

イチロ−も 艶球魔女に 打ち取られ

世は動転 福引5等の バケツから

楽屋裏 さらけてテレビは 恥じさらし

不祥事の オンパレ−ドで 年も暮れ

日本中 人を刺したり 刺されたり

隣から 小便かけられ 笑う国

国中が ガングロ底上げ 品も無し

日本国 国があるのか 2000年

 

 

2000.1

「年の瀬」

大掃除 家の古さが 良く目立ち

年の瀬に 賞与が恋しい 年金者

姑去り 喪中の宛名も 軽やかに

年の瀬を 有馬記念に かけて見る

悪人が 栄えたままで 年も暮れ

何もかも 壊して見たい 年の瀬に

「第九」聞き 歓喜も来ない 年の暮れ

恋も無し イブも1人で 掘りごたつ

年の瀬に 爽やか見事な ルミナリエ

「風邪」

薬局で お水お願い 旅の風邪

風邪ひいた ヤクザはちょつと 遠慮がち

妻の風邪 亭主そこらを 片付ける

休むには 中と半端な 風邪をひき

たかが風邪 家々で違う 治療法

コンサ−ト 風邪もひかぬに 咳ばかり

「風邪ですね」 一言使わぬ 聴診器

「風邪ですね」 つまらなそうに 医者は言い

保津川の 船頭くしゃみで 船走る

 

 

2000.2

「家族」

黄信号 家族みんなで 走り出し

リストラで 家族の絆も もろいもの

さあ写真 並ばぬ次男を 叱り付け

チュ−リップ 咲かせて故郷に 母ひとり

老妻が 手真似で叱る 孫昼寝

北枕 平気で寝ている 若夫婦

この傷に 母親がんこに ゆきのした

年賀状 孫の写真も 鼻につき

おならして 家族みんなで テレ笑い

「年初め」

初出勤 香典返しの 靴下で

パソコンに 縁なくおかげで 寝正月

今日ですか? 4日の初出は 見下され

Y2K キィ−は叩かず 口ばかり

並ばして 売れ残りを売る 福袋

宝くじ 何処かで当たった 奴も居る

年賀状 やたら子供の 写真だけ

元旦は うつらうつらと 夜があける

2000年 それがどうした 寝正月

 

 

2000.3

「寒い」

「寒いから 休む」と一言 今の子は

寒波来る 嬉しさこらえる 予報官

故郷は 氷柱の音に 眼がさめる

宅急便 各地の寒さを ばらまいて

寒くとも ほっと離宮の 雪化粧

ラ−メン屋 風に押された 列が出来

この冬は さぞ寒かろう ノックさん

冬の夜の 星座の下で 待ちぼうけ

手のしみが 大きく見える この寒さ

「どきどき」

面接に 度胸は未だ 定まらず

初舞台 人を舐めても 効果なし

美人でも ないのに何故か 手をつなぎ

初申告 税務署の人 鬼に見え

入国に 「サイトシ−ン」と 繰り返し 

  60の 旅の夫婦に 「カバン開け」

カタコトの 英語が分かるか この税関

払うまで 値切った英語に 自信無し

添乗が 行くなと言う場所 迷い込み

 

 

 

 

2000.4

「古い」

蓄音機 田端義夫が よく似合い

古参ほど 身分が危ない この会社

『古いから』 この一言で 失業者

尊さは 古きと共に 消えて行き

おいしさが 峠を越える 期限切れ

見るからに 古い仏像 昭和初期

見習うな 古い日本の 良さ悪さ

 古いから 取りかえられたら この妻を

古いから 取り替えたいわ この夫

 

「新しい」

新所属 同じビルでも こう違う?

靴もサラ 背広もサラで ラッシュとは

ランドセル 一人歩きの 邪魔ばかり

新しい テレビも阪神 やはり負け

隅々の 記事まで目が行く 新定年

新しい パソコンその地位 3ケ月

初仕事 嫌がることを わざとさせ

どう見ても 森なら日本は 土建国

 

 

 

2000.5

「すっきり」

この5年 日本のスッキリ 何処へやら

わが人生 死んで地獄も やむをえず

何とまあ 昇給も0(ゼロ) 賞与無し

申告に 還付の葉書 早く着き

生きてるぞ 気持ちスッキリ バイアグラ

銀行は スッキリしない 税に泣き

車線変え 勘が当たって 走り出し

かたことの 意味が分かると 孫楽し

温泉の 桶の臭いも 肌に取り

 

「そんな馬鹿な」

教師から セクハラ習って 子は育ち

阪神が 首位では困る 評論家

外交は 愛想しかない 森総理

最近の 常識?借金 踏み倒せ

「そごう」では [支払いませんよ]で 物が買え

機関銃 レンタルもします 自衛隊?

保険業 殺人教唆の 乱世かな

UFOか 見上げる夜空に 月2つ

借金を まともに返せば 馬鹿にされ

 

 

 

2000.6

「恥ずかしい」

棚ボタの 総理意思無し 施策なし

イヤリング 外す仕草の 太い腕

年甲斐も 無いと知りつつ これも恋

社内旅行 一人浴衣の 宴の席

言い負けて 亭主そのへん 片付ける

ロケットは 何処へプロペラ 巨人軍

汚れても 自分の枕に しがみつき

何時までも 未練が残る ラストラブ

釣りなんか 数えて渡すな ポルノ館

「ラッキ−」

旅楽し 現地ガイドが この美人

端だけど 主役がミエ切る 今日の席

ふりむけば のれんがゆれる 雨宿り

目覚めると 横に美人が 一人旅

大吉の 昨日の運勢 すてられず

夕立に 重さこらえた 傘がいき

さしかかる 次々青の 交叉点

エレベ−タ− 客皆降りて 2人だけ

バス遅れ サリンの地下鉄 乗りそこね

 

 

  

2000.7

「うるさい」

猫2匹 道ならぬ恋か 唸りあい

静香なら 静かにしゃべれ 下品面(づら)

NHK ゲスト解説 皆いらん

政治家も 「アホの坂田」で 芸がなし

勝った日の 阪神電車は 庶民馬鹿

見苦しく けなしあうだけ また選挙

出来もせぬ 公約、マイクは 唾だらけ

怒鳴るなよ 見てればわかる そのゴ−ル

象さんに キリンも付けて 犀も売る

「ホット一息」

世は不思議 負けて安泰 森政権

つらいけど 私学入学 また次男

小走りで 入ったホテルで まずお茶を

8;59 今日もセ−フだ 羽田から

時刻表 忘れて駅に 我1人

女中さり 手と手を握り 軽くキス

マスクとり レスラ−一人で 歯を磨き

ご焼香 終わって受け付け 顔弛め

初戦勝ち エラ−モミスも すぐ忘れ

 

 

  

2000.8

「しまった」

あの時に 辞めておればと 今日倒産 (そごう)

成田から 梅干し忘れた ヨ−ロッパ

電話では 凄い美人の 保健主婦

待ちぼうけ 駅には出口が 3つあり

母に似た 人が売ってた まずい菓子

読み違い 俺の株だけ なぜ下がる?

国宝と 聞いてもバスは 出る時間

同居して やたらに分かる ひどい奴

高速に のってふと見た ゲ−ジE  

 

 「意味ないじゃん」

金だせば ロボットでもよい 議長国

終わったら みんなが言い出す 無駄遣い

着飾って 待機が長い 炎天下

横走る ボデイ−ガ−ドに 蹴躓き

議長役 写真が2枚 真ん中で

島の中 舗装は出来たが 基地残り

金取られ へいこらするだけ 我が日本

口先の IT革命 中身無し

プ−チンの デモスト領土も 背負い投げ

 

 

 

2000.9

 

 

「がまんがまん」

マスコミの 為に握手を もう1回

ユニフォ−ム 着ても出番の 無い補欠

歯を削る 音もうつろに この虫歯

昼寝前 どうせ落選 選挙カ−

妻旅行 風呂に入らぬ 日が続き

我が人生 ロ−ン背負って 上る坂

逢いたいが 道ならぬ恋は ほどほどに

見も知らぬ 人の弔辞の 長いこと

無視されて 点が入らぬ 自信作

「早く」

何故早く 走らぬ今日の 本命馬

揚げ物を ランチにするな あと5分

盆の経 時間短く 足早く

見たいのに サンバの美女は 早く去り

早くせい どうせ入らぬ パットだろ

そうめんの 流れは早く 箸は下手

太極拳 早く動けば 安来節

あれこれと 言うなドクタ− ガン告知

終着駅 車掌の足取り 早くなり

 

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