午前10時前。 爆睡している店長に、一本の電話が・・・来た。
「今から行きま〜す」  それは、駅前の店で働くH君から・・・だった。 
彼の車の、バンパーのキズを直す、約束だった。
15分後。 彼が到着し、修理は始まった・・・・エーックス!

   店長は、思った。 「1時間でパテ埋めまでやって、サフ吹いたら飯だ・・・」。
   天気が、許さなかった。    台風9号が、近づいていた。
   そして、パテ埋めが終わる頃H君が・・・言った。
   「これで大丈夫ですか?」  差し出されたのは、「タッチペン」だった。
   「スプレーが無い」・・・彼は言った。 
   詳しく話を聞いた店長は、すぐにカー用品店に行くことを・・・決めた。

一軒目(A/W)。スプレーが並ぶ棚に、目的の色が・・・無い。   焦った。
備え付けのカラー見本帳にも、彼の車の色は、無かった。
『これは調色してもらうしかない・・・』 一瞬の判断だった。
調色設備を持つ店を、考えた。   「そうだ! 新しく出来たあそこなら!」
二軒目(A/R)に、着いた。 店内の一角に、調色設備を・・・見つけた。
二人は、安堵した・・・・エーックス!

    さっそく店員を呼ぶと、目的の色を、伝えた。
    ハンディPCを操るのは、若い女性だった。
    そして、彼女の口から発せられた言葉は・・・「データが無いので無理です」。
    二人は顔を、見合わせた。 
    そこの看板には 「世界中の車の色を、10分で作ります」 と書いてあった。
    彼の車は日本製で、もちろん純正色である。

データが無いから・・・という店員に、店長が言った。
「データがあれば、作れるんですね?」 念を押すように投げかけた言葉に、
「そーぉ、です・・・ね」 明言を避けるように、店員は去った。
直後。 迷わず目の前に並ぶ商品を手に取り、裏の電話番号を見た。
次の瞬間。 ものすごいスピードで、携帯電話のボタンを押していた。

    0120で始まるお客様センターは、つながりにくい。
    もちろん店長は06で始まる大阪の一般番号に、掛けた。
    すぐに相手が・・・出た。
    事情を説明すると、あっさり 「データありますよ」 と言われた。
    『当たり前だ』 店長は、思った。
    市販されてない色のスプレーを作るために、この設備があるのだ。

「すぐにデータを店舗のFAX宛に送ってくれ!」 精一杯感情を抑えて、指示をした。
店舗のFAX番号は調べてある。
「店舗からの依頼でないと、送れない」 電話の向こうで静かに言った。
先ほどの店員に、データが有ることを・・・伝えた。
そして、店舗から再度、電話を掛けるように、指示をした。
受話器を取った店員は、面倒くさそうに厚いファイルを・・・めくった。
「電話番号なら、ここに有る」 携帯電話に映し出された番号を、見せた。
ふて腐れた態度で、店員はその番号に、電話を掛けた。

    電話が終わって、こちらを向いた店員が口を開いた。
    「出来ますが、塗料が足りなければ出来ません」
    『そんなことは言われなくたってわかる』 苛立ちが、募った。
『よほど売りたくないのか』 とも思った。

この後、何度かのやり取りを経て、二人はスプレーを手にすることが出来た。

ヘ〜ッドラ〜イ、テールラ〜ア〜イ、旅は〜まだ、終わら〜ない〜♪