ドラゴンクエスト8 空と海と大地と呪われし姫君_2

本を買いに代々木まで 2005_03_10

 

葛藤は喜びを大きくする。
どうするべきか、と考えることが乗り越えるべき壁となるからである。
プレイヤーに葛藤を提供することが出来るゲームがあれば、それは素晴らしいゲームなのではないか。

代々木まで行かなければ買えない参考書が必要だった。
通販で買ってもいいのだが、千円の本を買うのに現金書留で代金を送ってかつ送料まで支払うのはどうにももったいない。
地図で調べたところ、職場から目的地まで自転車で20分もあればいけそうに思えた。
昼休みの45分で往復できる。
記録的に暖かかった某日、私は自転車をとばして代々木へと向かった。

しかし、これは些か見込みが甘かった。
初めての道はやはり思ったように進めない。
大体からして東京の西側は関東平野の仲間ではないのである。
強烈な坂道の連続で大変だった。
そうこうしているうちに時間はどんどん過ぎていく。

私は思った。
これでは昼休みが終わるまでに戻れない!
引き返した方がいいのではないか?
でも、ここで戻ったら勿体ないぞ。
進むべきか戻るべきか、私は迷いつつも、最終的には腹をくくって目的地を目指すことにした。
目的地に着いたとき、私は何となく嬉しかったのである。
そのとき私は、ああ、これってドラクエみたいだな、と感じていた。

『ドラゴンクエスト8』をやっていて、なるほど上手いなと思うのは、ギリギリのバランス取り。
セーブは教会でしかできないし、復活の呪文も少なくとも序盤は使えない。
HPもMPもあまり余裕がなくて、常に緊張を強いられる。
後の戦いがきつくなるんで、一人でも死んだら、結局教会まで戻らなくちゃいけない。
最近はかなりパラメーターに余裕を持たせているものが多い中で、なかなか意地っ張りな仕様になっているのだ。
一応全滅しても教会から再スタートできるのだが、お金が半分になってしまう。
お金が貯まりにくいのがうまく作用して、死んじゃいけない!という気分になるんだな。
そうすると、せっかくここまで来たから進もうか、いやいや、ここは安全に1回戻るべきだ、とかいう葛藤が生まれる。
この葛藤が生まれるからクリアした時、とても嬉しい。
一方、自重していったん戻ったりすると、自分でゲームボリュームを稼いでいることにもなるわけで、実にうまいことできているのである。

同じ葛藤を私はリアルに感じていたわけだが、坂道を自転車で登って行かなくても、それを味わうことは出来るわけである。
それもまたゲームの素晴らしさだな。



戻る