ゲームのタイトル。 きっとそこには何かしらの思いが込められているんじゃないかと、私は思っている。 だったら、タイトルからゲームを考えていくことは出来ないか? 『君が望む永遠』っていうタイトルから。 『君が望む永遠』という作品は、エロゲーの世界では金字塔のようなものらしい。 本当のことを言うと、あまりに有名なゲームなので私はやりたくなかった。 だが、『マブラヴ』という同じメーカーの作品が面白くて、こっちの方もエロゲーマーとして避けては通れないんだろうな、とついに年貢を納めることにした(DVD版)。 しかしまあ、このゲームには参った。 本当にイヤな話で、途中でウインドウを消した回数は軽く30を超えたし、途中で席を立った回数は100ではきかなかった。 正直な話、かなわんな、と思った。 良くできた話と面白い話は違うね。 面白くはないけど良くできた話っていうのはあるのだ。 ストーリーを極めて簡単に書くと、主人公は二人のヒロインのうちどちらを選ぶのか、という話である。 一方を選ぶと一方を傷つけることになるので選ぶことが出来ない!と主人公が悩み続けるのだ。 おそらくここにアクセスする方はエロゲーはやらないだろうから、あらすじを最後に書いておくことにする。 私がこの作品をプレイし終えて考えていたことは、ゲームのタイトルに何かヒントがないかなあ、ということである。 どういう軸でこのゲームを考えたらいいのか、正直言ってわからなかったので、搦め手から攻めてみようかと思った次第だ。 『君が望む永遠』というタイトルからは、誰かが望んでいる状態を永遠に続けたい、という意味が汲み取れるんじゃないか。 ここからスタートしてみよう。 主人公が望んでいた永遠とはきっと、色恋沙汰抜きでヒロインや親友とワイワイやってた状態なんだろう。 そのころの主人公は親や社会に守られ、あまり深く物事を考えなくても毎日生きてゆけたし、少なくとも可能性に満ちていた。 遙(ヒロインの一人)の望んでいた永遠とは、きっと事故に遭う直前の状態だろう。 目の前には新しい世界が広がっていた。 ただ、ことによると、この時点ではそれほど強い独占欲ではなかったのかもしれないが。 問題は水月の方だ。 私の見たところ、水月が真のヒロインだと思うのだが。 彼女はいったい何を望んでいたのか? 主人公に遙を紹介した後に、ひょっとしたら遙が振られるんじゃないかと、淡い期待を抱いている状態か。 紹介する前の状態か。 遙が昏睡状態になって主人公と一緒にいられるようになった状態か。 これは判断が付きかねる。 ここで、もう一つヒントを導入しないと話が見えてこないんじゃないか。 4人で撮ったあの写真。 水月も含めて、みんなとてもいい顔してるね。 そうすると、きっと水月はその笑顔を守りたかっただけなんだろう。 自分が我慢することで守れるものなら守りたかった。 それが彼女が望んだ永遠。 水月と慎二(主人公の親友)が我慢することによって保たれる4人のバインド(結合)。 それは望んでいる永遠が少しずれているんだけど、何とか保たれているソフトなバインド。 でも、一本の手だけが強くバインドしているから、とても不安定なんだ。 主人公を諦める代わりに自分が好きだったことの証が何か欲しい、と水月が思っただけで、その結合は崩れた。 交通事故はその象徴にすぎないんじゃないか。 事故が起きなくても、やっぱり主人公はいつか選ぶことになったんだろう。 そして選んだ時、やはり望んでいた状態は終わりを迎える。 永遠を欲するのは永遠があり得ないからだ。 そう考えると、この物語は結局、人間関係の力学の話なんだよなあ、ということになる。 一対一の関係はあり得なくて、多対多のパワーバランスの上に、人間っていうのは成り立っているんだ、ということなのかな。 このゲームをクリアした後はかなり精神的に動揺して、なんか結論を導き出さなければと考えたのだが、だからどうなんだよ、という気がしないでもない。 私がプレイしながら思っていたことは、本当をいえば、救済されなければならないのは水月なんじゃないの、ということなのだが。 <補足> これ載っけてイイのかな、と躊躇したのですが、とりあえずスッキリしたいので載せちゃいます。 後で書き直すかも。 <追記 2003_09_05> 自分の書いたことを検証しなくちゃいけないと思っているのだが、これ以上プレイするのが辛くて検証できない。 私の立場は原則慎二と同じだと書いておけば、大体言い訳にはなるだろう、と思ってはいるのだが。 <私の見解によるあらすじ> これからプレイする気のある人は読んじゃダメ 速瀬水月(はやせみつき)と涼宮遙(すずみやはるか)は同じ高校に通う大の親友。 水月は男勝りで、実業団から誘いを受けるほどの水泳選手。 遙はお淑やかでちょっと内気なお嬢様。 遙は主人公のことが気になって仕方ないのですが、とても告白なんて出来ません。 そこで、親友を自負する水月が橋渡しをしようと企てます。 そのためにまず主人公と親しくなろうとしたのが運の尽き。 水月も主人公を好きになってしまいます。 しかし、親友を出し抜くことも出来ず、当初の予定通り橋渡しをすることに。 紆余曲折を経て、主人公と遙はめでたく恋人同士となります。 二人は一ヶ月ほどの蜜月を過ごします。 初めは息苦しさを感じていた主人公も、次第にその心地良さに埋もれていくことに。 そんなある日悲劇は起こるのです。 遙はデートの待ち合わせ場所で一方的に突っ込んできた車に轢かれてしまいます。 遙はいつ覚めるともわからぬ昏睡状態に。 デートに遅刻さえしなければ遙が轢かれることはなかったのに! 主人公は自分を責めます。 デートに遅刻する原因を作った水月も苦しみます。 主人公は大学へ進学する意欲を失い、水月は水泳をやめることに。 苦しむ二人はいつしか求め合うようになります。 心の傷が深ければ深いほど、激しく求め合います。 激しく求め合えば求め合うほど、傷は癒えていくように思えました。 そして3年が過ぎ、二人の傷が癒えようとしたころ、遙は目を覚ますのです。 彼女の時間は3年前に止まったままで。 <後記 2003_09_05> あらすじの下から3〜5行目が正しいかどうか結構難しい。 主人公は水月が苦しんでいることに気が付いていないという設定なので、求め合いの意味が両者の間でズレている可能性はある。 精神的に余裕のある水月に主人公は一方的な救済を受けているという雰囲気があるかもしれない。 水月が救済されないシナリオに進むと、主人公最低!と思う。 水月が救済されるシナリオでも、許容範囲の限界ギリギリ。 こんな男現実にいたら、ぶん殴るよ、ホント。 |