クロス探偵物語

それはささやかな夢 '99_11_29

 

ああ、ゲームっていうのは、こんな夢までも叶えてくれるのか・・。
そんな事を考えていた。

「クロス探偵物語」の中に登場する友子ちゃんに私は心を奪われていた。
彼女は冴木探偵事務所の受付兼経理担当として劇中に登場する。
彼女はとても表情が豊かだ。
というか主人公・黒須剣に対しては、口元を常に歪めているので、むしろ崩れている
といった方が正しいだろうか?
絵が比較的劇画調ということもあってか、その崩れた表情は必ずしも美しくはない。
それでも私は、この主人公と憎まれ口をたたき合う友子ちゃんにこころ惹かれていっ
たのだ。

私はこの友子ちゃんの魅力について考えていた。
どうして自分がこうもこのキャラクターにこころ奪われるのか?
そして考えていくうち、、学生時代のある先輩との会話を思いだした。

その先輩は、むさ苦しい外見に反して(人のことは言えないが)、白馬の王子様を待
ち望んでいる様なところのある人だった。
ある日、たまたま二人で深夜まで飲んだとき、彼は突然こういった。
「おまえどんな恋愛がいい?
 僕なんかさあ、あの、なんていうかな・・・、こう、クラスで隣の席の女の子と、
 ごく自然にカップルになる、みたいのに憧れるやん。」
私は平素物事に冷ややかな眼差しを向けているせいもあり、それまでこの一風変わっ
た先輩の話を気にかけることはなかったが、このときは違った。
なるほど、それはそうかも、と思った。(返事は適当にしたが)

『隣の席の女の子』が意味するものは、おそらく『そこにいることが必然である』と
いうことであろう。
あからさまに好きだと言わなくても、彼女は決していなくならない。
少しぐらい喧嘩したっていい。
彼女以外の不特定な誰かを探す不安を抱く必要がない。

そして、それはつまり友子ちゃんなのだ。
冴木探偵事務所に勤務していて、剣は(つまりプレイヤーは)毎日顔をあわせる。
帰り際に口喧嘩しても、次の日にはまた会わなければならない。
自分の彼女への好意に気づかなくても、友子ちゃんは去っていかない。
そんな友子ちゃんだから、知らず知らずのうちに、彼女に惹かれていったのかもしれ
ない。
それはある意味、自分の弱さでもあるだろう。
不特定多数の中から誰かを選ぶというプロセスに、恐怖や面倒くささを感じている証
拠でもあるからだ。

でも、ゲームの中くらい、それで良いんじゃないかと思った。
それはささやかな夢なのだ。


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