シルバー事件

ゲームのタイトル 2002_04_09〜10

 

これは私が高校生だった時の話。
美術の先生が突然「作品のタイトルって何だ?」と言い出した。
答えを右端の学生から一人一人聞いていくのである。
私も当てられた。
その時なんと答えたのか正確に思い出すことは出来ないのだが、「作品のテーマみたいなものをタイトルに付けるのではないか」とかなんとか答えたように記憶している。
当てられた学生の数が10人、20人となっても、先生は納得しない様子であった。
40人クラスの3分の2ぐらいまで来て、美術部に所属する女の子の答えが彼を納得させた。

「作品のタイトルとは、作品を識別するためのものです」

彼は我が意を得たりとばかりに、こう言い放つのだった。

「そうだ。タイトルなんてのは、極端な話、『1』でも『2』でもいいんだ!」と。

なぜ彼がそんな話をし始めたのかは思い出せないが、割と印象に残っているエピソードである。
ちなみにその美術部の女の子が、学年一かわいいと評判だったりとか、胸がとても大きかったとかは、また別の話。

私はその時、「まあ、それはそうなんだけど、それはそれでどうなの?」とか思ったような思わなかったような・・・。
少なくとも、タイトルには何かしらの思いが込められているんじゃないの?、と今は思う。

どうしてこんなことを書いているかというと、私が『シルバー事件』をプレイして、これは『カムイ事件』と名付けた方が良いじゃないの?と思ったからだ。
『シルバー事件』とは、1999年にアスキーから発売されたPS用アドベンチャーゲーム。(特殊な刑事物)
『花と太陽と雨と』をプレイした私は、どうしてもこれをやらねばならなかった。
この作品は「須田剛一」が独立して初めて作った作品であり、『花と太陽と雨と』とベースでつながっているらしいのだ。
煙に巻かれたまま黙っていられるほど私はお人好しではない。

『シルバー事件』は全5話+αで構成されている。
その一つ一つの話は、私にはある種の風刺のようにしか思えなかった。
一話ごとに解明していくことにあまり価値を感じなかったので、「須田剛一」という人物は結局何が言いたいのか?ということを考えながら私はプレイを進めていった。

ところが、私はここで行き詰まってしまったのである。
ゲーム中に描かれているのは『カムイ事件』とでも呼ぶべき事態であって(勝手に命名)、『シルバー事件』についてはほとんど語られていない。
『カムイ事件』は『シルバー事件』の単なる副作用なのではないか。
つまり、このゲームを『カムイ事件』だと捉える場合と『シルバー事件』と捉える場合とでは、メッセージが違うのではないか、と思ったのだ。

これは全くの私見だが、これが『シルバー事件』だとするならば、おそらく彼の言わんとするところは、「我々は柵の中で繁殖させられた家畜みたいなものだ」ということなのではないか。(『花と太陽と雨と』の合わせ技で)
もちろん家畜は家畜なりに生きようとする訳なのだが。
一方、これを『カムイ事件』だとするならば、「人はイレギュラーなものだ」とでも言っているのかもしれない。(「カムイが転移する」ということに私は理由付けが出来なかった)

果たして『シルバー事件』と『カムイ事件』は一本の軸で考えられるものか否か?

ひょっとすると、『カムイ事件』は『シルバー事件』のホンの序章にすぎないのかもしれない。
『カムイ事件』は『シルバー事件』の副作用ではなく、反作用であり、本来先に書くべき作用の前に反作用だけ書いた、と考えれば納得できないこともない。
いや、そう考えないと納得できない。
であればこそ、タイトルが『シルバー事件』になったんじゃないか。
全ては「須田剛一」の胸一つに託されているわけなのだが・・・。

今のところ、この辺が精一杯。
どうやら私はまた煙に巻かれてしまったようだ。
連敗である。




<補足>

古い作品なので、中身を書いちゃおうかなとも思ったのですが、止めておきました。
多分これからも迷える子羊たちがこのゲームに出会うでしょうから。

私はこの作品を多くの人にやって欲しいとは決して思いません。
しかし、手に入れるのならば、早いほうがいいかも知れません。
ベスト版が定価2000円で出ています。
アスキーがゲーム事業から撤退することになったので、今後再プレスされることはないかも。


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