タシテン

理想と現実 2007_10_26

 

これはよく知られていることだが、アメリカあたりではお釣りの計算方法が日本と違う。
我々は「出した金額−代金=おつり」を計算するが、あちらでは「代金+おつり=出した金額」を計算する。
私も昔遊びに行って、目の前で代金14ドル98セントに2セント足して15ドル、更に5ドル足して20ドルね、という具合におつりを渡された経験がある。
引き算で計算する事と足し算で計算する事の違いがどこにあるのか、あるいはそれにどんな背景があって、人間にどんな影響を与えるのか、を考えると凄く面白いかもしれない。
しかし、それは今書いている主題ではない。

引き算ではなく、足し算でやる事は単純に私たちにとって不慣れなことである。
不慣れなことであれば、これはゲームになるだろう。
そう考えることは至極当たり前のことじゃないか。
私は『タシテン』というゲームをプレイしながら、きっとこのゲームの着想はこのあたりからだろうな、と想像していた。

実際、この『タシテン』というゲーム、決して悪くはない。
なかなか面白い着眼だと思う。
キャラクターも私は決して嫌いじゃないな。
むしろスキ。
しかし一方で、メンドクセーゲームだな、とも思っていた。

私はこのゲームを創ったクリエイターのHPをたまに読んでいるのだが、この人はゲームを小さく創りたいと何回か書いていた。
大変すばらしいことである。
ところが、実際の作品はそうなっていない。
発売元の任天堂の意向だから仕方ないのかもしれないが、結局ボリューム稼ぎをやらざるを得なくなっているのである。
それは4800円のゲームにするためだろう。

この作品は単に計算をやらせるだけでなく、計算ステージにたどり着くまでをアドベンチャー仕立てにしてある。
アドベンチャー仕立てとは言っても大したものではない。
ただ先に進むためのフラグになっている場所を概ねタッチするだけで、ハッキリ言ってどうでもいいようなものだ。
面白くはない。
結局、4800円にするために無駄な時間を使わせられる結果となっているのである。
多分2800円だったら、もっとシンプルな出来になっていたんじゃないかな。

ゲームを作る人の中にも当然理想はある。
こうあるべき、と思うゲームのあり方があるはずだ。
しかし、現実は思うようにはならない。
小さくゲームを創りたいと言っている人が『タシテン』をこういう風に創った事が、それを象徴しているように思える。


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