タックンは全然悪くない。 悪いのはルリちゃんの方である。 貯金箱をもっていく必要なんかないのだ! 私はタックンを全面的に支持したい。 ああ、なんて可愛らしいタックン! 私がここで「タックン」と呼んでいるのは「スペースボーイが大好きな可愛い幼稚園児、ユウキ・タクヤ5歳」のことであり、「ルリちゃん」と呼んでいるのは「幼なじみとの恋に悩む高校一年生、ユウキ・ルリ15歳」の事である。 2人は姉弟であり、ゲーム『ボクは小さい』の登場人物。 私はかつての自分がそうだったように、「タックンは悪くない!」と主張したいのである。 子供の頃の私はよく兄におどかされたものだ。 いや、毎日だったといってもいい。 当時は階段を登るのが本当に恐かった。 そのことを説明するには相当の努力を要する。 私が何歳のことだったか忘れてしまったが、改築した私の家には二階が出来た。 階段が作られるのは当然のこと。 この階段には登り口と降り口の両方に照明スイッチが付いており、どちらからでもオン・オフが出来た。 おまけに階段を降りきった脇には兄の部屋があったのである。 これが私の苦悩の原因であった。 私が電気をつけて階段を下りたり登ったりするごとに、兄がわざわざ部屋から出てきて「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」と叫びつつ電気を消して階段をダン!ダン!ダン!と駆け上ってくるのである。 後ろから追いかけられるときは殊のほか恐かった。 私がどれほど恐かったのか? それを説明するには、更なる説明が必要である。 この当時は『八つ墓村』が恐くてしょうがなかった。 何が恐いって「晒し首」が恐い。 劇中に晒し首が8個並んでいるシーンがあるのだが、動くはずのない顔が「ニヤッ」と笑うのである。 アレは恐かった。 殺人事件は恐くないにしても、そういうのは勘弁して欲しいと子供心に思った。 あと、狂ったお婆ちゃんが「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」と叫ぶシーンがイヤ。 祟りよりもアンタが恐いっちゅうねん!とツッコミたいところだったが、残念なことに私は関西人ではなかった。 というか、そもそも関西弁は知らなかったかもしれないし、日本語がちゃんと喋れたかも今一つ記憶にない。 そんなわけで、私は『八つ墓村』に激しくビビっていた。 それを知っている兄は「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」といって私をおどかすのである。 それも階段を上り下りする度、わざわざ部屋から出てきて! おまけに数年渡って! なんと非道い兄だろう。 私はいつもチビリそうなほど、びびっていたものである。 いや、あるいはチビっていたかもしれない。 しかし、よしんばチビっていたとして、私になんの非があろうか!? 悪いのは兄の方である。 私がやるべきなのはパンツを履き替えることだけであって、後始末をするべきなのは兄のはずだ。 それと同様にタックンは全く悪くないのであって、後始末をするべきなのはルリちゃんの方なのである。 それが私の主張! もっとも、私が主張するまでもなく、ルリちゃんはちゃんとわかっているのだが。 「君は一体なんの話を書いとるのかね?」 そう思う方がいるかもしれない。 つまり、それこそが私の狙いなのである。 <備考> 『ボクは小さい』はPS2用です。 |