ボクは小さい_2

タックンは悪くない 2002_12_04

 

タックンは全然悪くない。
悪いのはルリちゃんの方である。
貯金箱をもっていく必要なんかないのだ!
私はタックンを全面的に支持したい。
ああ、なんて可愛らしいタックン!

私がここで「タックン」と呼んでいるのは「スペースボーイが大好きな可愛い幼稚園児、ユウキ・タクヤ5歳」のことであり、「ルリちゃん」と呼んでいるのは「幼なじみとの恋に悩む高校一年生、ユウキ・ルリ15歳」の事である。
2人は姉弟であり、ゲーム『ボクは小さい』の登場人物。
私はかつての自分がそうだったように、「タックンは悪くない!」と主張したいのである。


子供の頃の私はよく兄におどかされたものだ。
いや、毎日だったといってもいい。
当時は階段を登るのが本当に恐かった。
そのことを説明するには相当の努力を要する。

私が何歳のことだったか忘れてしまったが、改築した私の家には二階が出来た。
階段が作られるのは当然のこと。
この階段には登り口と降り口の両方に照明スイッチが付いており、どちらからでもオン・オフが出来た。
おまけに階段を降りきった脇には兄の部屋があったのである。
これが私の苦悩の原因であった。

私が電気をつけて階段を下りたり登ったりするごとに、兄がわざわざ部屋から出てきて「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」と叫びつつ電気を消して階段をダン!ダン!ダン!と駆け上ってくるのである。
後ろから追いかけられるときは殊のほか恐かった。
私がどれほど恐かったのか?
それを説明するには、更なる説明が必要である。

この当時は『八つ墓村』が恐くてしょうがなかった。
何が恐いって「晒し首」が恐い。
劇中に晒し首が8個並んでいるシーンがあるのだが、動くはずのない顔が「ニヤッ」と笑うのである。
アレは恐かった。
殺人事件は恐くないにしても、そういうのは勘弁して欲しいと子供心に思った。
あと、狂ったお婆ちゃんが「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」と叫ぶシーンがイヤ。
祟りよりもアンタが恐いっちゅうねん!とツッコミたいところだったが、残念なことに私は関西人ではなかった。
というか、そもそも関西弁は知らなかったかもしれないし、日本語がちゃんと喋れたかも今一つ記憶にない。

そんなわけで、私は『八つ墓村』に激しくビビっていた。
それを知っている兄は「八つ墓村のた〜た〜り〜じゃ〜」といって私をおどかすのである。
それも階段を上り下りする度、わざわざ部屋から出てきて!
おまけに数年渡って!
なんと非道い兄だろう。

私はいつもチビリそうなほど、びびっていたものである。
いや、あるいはチビっていたかもしれない。
しかし、よしんばチビっていたとして、私になんの非があろうか!?
悪いのは兄の方である。
私がやるべきなのはパンツを履き替えることだけであって、後始末をするべきなのは兄のはずだ。
それと同様にタックンは全く悪くないのであって、後始末をするべきなのはルリちゃんの方なのである。
それが私の主張!
もっとも、私が主張するまでもなく、ルリちゃんはちゃんとわかっているのだが。


「君は一体なんの話を書いとるのかね?」
そう思う方がいるかもしれない。
つまり、それこそが私の狙いなのである。



<備考>
『ボクは小さい』はPS2用です。


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