実況パワフルプロ野球10_4

好きなことだけやっていけたら 2003_08_29

 

奇跡だと思った。
今まで何回やっても最後の試合、3点ビハインドだったのに、今回は3点勝ってる。
もうこの時点で勝利は確定していた。
2軍に行かされることもないし、交通事故にも遭いようがない。
こうして私の対キャットハンズ抗争は終焉を迎える事になった。
それはプレイ数30回を優に越える長い長い戦いだった。
これでやっと本来のパワプロに戻ることが出来る。

今回プレイしていて、私はサクセスモードって凄いな、ということを久しぶりに感じていた。
なんといっても、キャットハンズばっかり30回以上連続してやっていたのに、私はずぅ〜と楽しかったのだ。
全く苦しいとは思わなかった。

なんで苦しくないのかというと、それはサクセスモードに「パワプロシステム」がそのままインクルードされているからだ。
よくRPGなり育成シミュレーションなりにミニゲームが組み込まれていることがあるが、ああいうのは大抵つまらない。
片手間に作ったミニゲームがそんなに面白いわけないのである。
そこへいくとサクセスモードは、それ単体が面白いパワプロをそのまま使っているんだから、面白くないはずがないのだ。(楽勝の部分はつまんないけど)

元々なんでサクセスモードが創られるようになったのかというと、毎年パワプロの新作をある程度の価格で販売したい、という要請があったからだろう。
システムの改良はマニアにしか価値がないし、データの更新だけでは訴求力が弱い。
だから何か付加価値を付けたかったに違いない。
そこで改めて何かを創ろう、と考えるのではなく、パワプロをそのまま使えるサイドゲームを開発したことが結果的に良かった。

こういうアプローチをしたゲームは意外と少ないけど、探せば他にもある。
私が知っている中で一番古いのは、PCエンジンの『プロテニスワールドコート』あたりか。
近いところではPSで発売された「TOBAL」っていう格闘ゲームに、格闘システムをそのまま使ったRPGが付いていた。
こういうアプローチはこれから増えていくんだろう。
ゲームを変えるんじゃなくて、組み込まれる側をそのまま填め込めるように舞台設定しておいた方が、きっと旨くいく。
もちろん基のゲームが面白くなければ、どうやっても面白くなりようがないのだが。


それともう一つ、サクセスについて私の気に入っていることを書いておきたい。
それは野球のことしか考えない、ということ。
友人も彼女も親も野球がうまくなるために存在しているに過ぎないんだね、サクセスっていうのは。
一つのことしか考えないって美しい。

だが、現実の世界はそうはいかなくって、好きなことだけやっていればいいというわけにはいかない。
野球が好きな人は野球で食べていけたらそれが一番だけど、そうは出来ない人の方が圧倒的に多いのだ。

たとえば、私はこんな男を知っている。
○大学野球で盗塁王だったと言い張っている男を、である。(そんなタイトルは存在しないので自称)
彼の思い出話を聞くと謙信やら由伸が出てくるので、そんな高いレベルでやってきたならプロ目指せば良かったじゃん!と私はいつも思うのである。
実際に聞いてみたこともあるのだが、そういう選択肢は用意されていなかったんだそうだ。
プロにいくような奴は全然違う、肉体が違う、というのである。
確かに彼の肉体は一般人の範囲を超えていない。
中学生の頃から野球と勉強以外の何ものをもしてこなかったと豪語する彼は、野球の道を諦めて学問の道に進んだ。
ひどく寂しい話である。(ただし、やり抜いたという満足はあるんだそうだ)
私は何かを一生懸命やったという経験を持っていないので、彼の寂しさを本当の意味で理解することは出来ないけどね。

サクセスが持っている美しさというのは、オマケとして開発されたという起源から来る、あるいは繰り返しプレイさせることを想定していることから来る単純さが生んだものだ。
おそらく、狙ってそうしたんじゃなくて、創っているうちにそうなったんだろう。
しかし、私は確信しているのである。
野球だけやって生きていけたらいいのにな、好きなことだけやって生きていけたらいいのにな、という思いが私達をプレイへと突き動かしているのだということを。
「こいつら、ホントにうらやましいよ」
そう思いながら、私はずっとプレイしていた。



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