絵になるシーンだった。 必殺技2回でイベントボスを撃破!その後、主人公HIV(ジタン)はトランスを解除しながらフェードアウトしていく。 だが私は、その余りにも出来すぎたシーンに不自然さを感じていた。 これは作られたシーンなんじゃないか。 『ファイナルファンタジー\』(以下、FF9)に着手した。 贅沢の粋を極めた様なこのゲームは、確かに凄い。 ゲーム開始してすぐに私は脱帽した。 また、序盤はテンポよく話が進んでいくので、すんなりとゲームの世界に溶け込むことが出来たし、こりゃ認めざる得ないと思った。 しかし、その反面、こんな事でいいのだろうか?とも思った。 というのも、私は何もしていなかったのである。 何もしていないんだけど、なんだか話はどんどん進んでいくのだ。 そんなときに訪れる、イベントボスとの戦い。 仲間はみんな眠ってしまい、主人公HIVは一人でイベントボスと戦うことになる。 1対1。 かと思いきや、イベントボスは見かけは強そうな仲間を呼びだした。 2対1だ。 ところで、FF9ではトランスという概念が導入された。 簡単に言うと、ダメージを受けるたびに貯まっていくゲージが満タンになると「スーパーサイヤ人」に変身する、といったものである。(「ドラゴンボール」はご存じですよね?) バランス上当然とも言えるが、イベントボスの攻撃は弱かった。 だが、主人公一人に攻撃が集中するので、あっという間にトランスゲージが貯まっていく。 トランス状態になると使える必殺技は強力だ。 イベントボスは、それぞれ必殺技一発ずつで撃沈されていった、あっけなく。 不利な状況だっただけに私は、おおっ、と感動した。 なんだか自分で困難を脱したような気がした。 しかし、そうではなかったろう。 はじめから仕組まれていたに違いあるまい。 おそらく大半のプレイヤーが私と同じ経験をしたはずだ。 なぜ主人公を一人にするシチュエーションをつくる必要があったのか? なぜイベントボスの攻撃力とヒットポイントを2倍にせず、2体に分けたのか? それはトランスさせるためだったに違いない。 プレイヤーが自分で何事かを成したかのような錯覚を起こさせるために。 こう書くと一見FF9を否定的に見ているように感じるかもしれないが、そうではない。 私はむしろ大きくプラスに捉えている。 RPGっていうのは、立ち上げが難しいものである。 ゲームが自分の中で立ち上がってくるまでは、なかなか楽しいと思えないものだ。 そういった中で、最大公約数的なFFシリーズのあるべき姿として、誰にでもプレイでき、それでいて達成感も持ってもらおうという心遣いが感じられた。 こういう丁寧な作りには大賛成なのである。 一つ一つのシーンに拘ることの出来る大作ゲームならではの演出だ。 |