サクラ大戦4

舞い散る桜に何を見る 2002_04_17

 

私には『サクラ大戦4』をプレイするにあたって決めていたことがある。
絶対一回しかやらない。
「サクラ大戦」シリーズは本当に戦闘パートがくだらない。
全員のエンディングを見ようとか思ったら、腹が立つに決まっている。
だから一回だけやって止めようと思っていた。
しかし、一回目のエンディングに辿り着いた私は、結局全ての幕引きを見なければならないんだろうな、という気になっている。
米田中将は舞い散る桜に、青春を駆け足で通り過ぎていった乙女の姿を見たが、私はセガサターンに始まりドリームキャストに終わる戦いの日々を見ていた。

「サクラ大戦」というのは、もともと広井王子というゲームデザイナーをセガ陣営に留めておくために開発されたゲームだと私は思っている。
当時まだPSとトップシェア争いを続けていたセガは、彼の作りたいものを作らせることで彼をセガ陣営に留めた。
そのために「サクラ大戦」の舞台公演のサポートまで約束していたと記憶している。
FFやDQシリーズの誘致に失敗した結果、「サクラ大戦」はセガサターンの看板タイトルになった。
そして、再びトップシェアを取るべく開発されたドリームキャストにおいても、『サクラ大戦3』は看板タイトルになってしまったのである。

『サクラ大戦4』を開始してすぐにわかるのだが、この作品は幕引きゲームである。
それまでの『1』『2』『3』では、前7割でキャラ立て(共通部分)後ろ3割で攻略キャラ特定、という構成になっているのに、『4』では後ろ3割に相当する部分だけで構成されている。
もう同じキャラで続編を作ることはありません、という意思表示だと私は思った。
ある意味、スタッフ一同の打ち上げパーティみたいな作品なのではないか。
ドリームキャストの終焉と共にこの「サクラ大戦」も終わるのである。(PS2で「サクラ大戦」が出るとしても、恐らく新キャラになるのではないか)

ドリームキャストは終わったよねえ。
でも、精一杯戦ったじゃない。
会社が傾くまで戦ったよね。
及ばずながら私も一緒に戦ったよ。

この終演に対して、私は涙を流してあげたい。
セガサターンのために、ドリームキャストのために、セガのために、そして自分のために。
誰も泣いてあげなかったら可哀想じゃない。

だから、この『サクラ大戦4』の幕引きを全部見届けてやらなくちゃならないな、私はと思うのだ。
正直な話、13人分のエンディングを見ると思うと、目眩がするのだが。
不幸にして私には多くの時間が残されている。
だって、もう今後セガから新しいゲームマシンが発売されることはないのだから。



<追記 2002_04_21>

「セガサターンから始まりドリームキャストに終わる戦いの日々」というのは、正確にいうと間違っているような気がする。
始まりは「メガドライブ後期」からとみる方が正しいかも。

セガは元々外資系だったが、CSK(?)に買収されて現在に至っている。
赤字になってもシェアを取りにいく戦略は買収後から始まったらしい。
それは廉価な「メガドライブ2」の発売という形で表れている。

そのことは、ゲーム業界がオモチャ業界の一部から独立したことを意味しているのかもしれない、などと今になって思ったりする。
オモチャ業界では、「ポケモンカード」と「たまごっち」が同時にブームになっても構わないが、ゲーム業界はそうはいかない。
トップシェアを持っている企業だけが大きな利潤を挙げることが出来る。
開発費が大きくなった昨今ではその傾向はより顕著なものになっているのだ。
私達がかつて享受した胸の高まりには(つまりそれはPSとSSとのシェア争いなんだけど)そういう背景があった。
もちろんその当時は、そんなこと知るはずもなかったのだが。

あの頃の、セガのBBSに通っていた頃の自分は本当に熱かった。
どれぐらい熱かったかというと、セガサターンのゲームを褒めると、全部嘘になってしまうんじゃないかと恐くて何も書けなかったぐらい。(特にセガサターンの末期は)
以前は自分も「このゲーム面白いよ」って書いていたのに、他の人が「面白い!」って言い出すと、必死に「面白くないでしょ!」って書かずにはいられなかった。
だって誰かが「面白くない」って書かないと、全部嘘になっちゃうんだから。
あんな気持ちにはもうなれないかも。

もっとも、現状を見る限り、あんな熱い戦いはもう起こらないんだろうけど。
マイクロソフトは本気でトップシェアを取りにいっているとは思えないし(取りに行くつもりなら、多分ゲームメーカーを買収しているはず)、任天堂は依然として「ゲームはオモチャだ」という立場を貫いているからね。
寂しいことです。



<後日談 2002_05_04>

コレクションがてら『サクラ大戦2』のDC版を買ってきた。
おまけに付いているDVDに、広井王子の語る「サクラ大戦」が入っている。
これを見ると、彼らが「サクラ大戦」というものに強い思いを持っているということはわかるのだが、だからといってセガサターンやドリームキャストに愛着を持っているというわけではないようだ。
『サクラ大戦4』のエンディングを見て、セガが可哀想で目頭が熱くなるような人間は、まあ、めずらしいんだろうなあ、と思った。
私は「サクラ大戦」好きは好きなんだけど、そんなに思い入れがあるかというと、そうでもないんだよね。

ちなみに「舞台公演のサポートまで約束」というのは、当時の入交社長との間で50万本売れたら、という条件付きだったそうだ。


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