FAR: Changing Tides、GamePass版_2

孤独とロマン 2022_03_08



私はBGMの話を書くのが大嫌いなのである。
音楽に良し悪しなんかないからね。
ただし、BGMが狭義の意味でのゲームの構成要素になることはあるし、そうでなくても創り手の意図を示唆していることはあるだろう。
だから、嫌でも書かなければならないこともあるのである。
だってこのゲームにおいては、それこそがロマンを感じさせる源なんだから。
もちろん、これは『FAR: Changing Tides』の話。

この『FAR: Changing Tides』においては船を操作している時間が非常に長い。
帆を張ったり、鞴(ふいご)を吹いたり、燃料を運んだり。
そのこと自体がゲームとして面白いかといえば、正直なところ、それほど面白いと思っていたわけではない。
しかし、それらの作業が特に嫌だったわけでもないんだ。
というのは、そこにワクワク感があったから。
ここがこのゲームの肝だと私は思っているのである。

このゲーム、退屈なのにBGMがかかっていない時間が長い。
波の音やエンジン音だけしか聞こえないの。
BGMがかかるのは何かイベント起こるとき。
つまりプレイヤーに準備を促すという意味で、多少ゲームの構成要素にはなっている。

しかしそれだけじゃなくて、創り手が次に起こるシーンをプレイヤーにどう感じてほしいか、ということがBGMに凝縮されているのだ。
無音の状態からスタートするから、BGMだけど効果音のような位置づけになっているのかもしれない。
そのBGMに必ずワクワク感が入っているのだ。
音楽の素養がないので説明しようがないのだが、不安をあおるようなBGMの中に必ず入っているんだよ、高いピヨピヨした音が。
フルートだか管楽器だかなんだか、私にはわからないんだけど。
それが顕著なのは、カメラを引いて遠景を見せるとき。
BGMと相まって、未知なるものに突き進んでいくワクワクが感じられるんだ。
それがあるからこそ、このゲームを私は素晴らしいと感じたのだと思っている。

実はこのゲームには前作があった、『FAR: Lone Sails』という。
今やっているのだが、こっちにはワクワク感はないね。
タイトルに「Lone」が入っているだけあって、孤独感というか、人恋しさを演出している感じ。
やはりタイトルが違うだけあって、同じじゃない。
こっちは「Changing Tides」だから。
凄く前向きな感じ。
私はこのゲームをプレイしているとき、ボートによる単独世界一周を試みる人はこんな気持ちなのかな、と思いながらやっていた。
独りっきりでわざわざ困難に挑むからには、何かしらロマンが必要なんじゃないかな。


戻る