私はBGMの話を書くのが大嫌いなのである。 音楽に良し悪しなんかないからね。 ただし、BGMが狭義の意味でのゲームの構成要素になることはあるし、そうでなくても創り手の意図を示唆していることはあるだろう。 だから、嫌でも書かなければならないこともあるのである。 だってこのゲームにおいては、それこそがロマンを感じさせる源なんだから。 もちろん、これは『FAR: Changing Tides』の話。 この『FAR: Changing Tides』においては船を操作している時間が非常に長い。 帆を張ったり、鞴(ふいご)を吹いたり、燃料を運んだり。 そのこと自体がゲームとして面白いかといえば、正直なところ、それほど面白いと思っていたわけではない。 しかし、それらの作業が特に嫌だったわけでもないんだ。 というのは、そこにワクワク感があったから。 ここがこのゲームの肝だと私は思っているのである。 このゲーム、退屈なのにBGMがかかっていない時間が長い。 波の音やエンジン音だけしか聞こえないの。 BGMがかかるのは何かイベント起こるとき。 つまりプレイヤーに準備を促すという意味で、多少ゲームの構成要素にはなっている。 しかしそれだけじゃなくて、創り手が次に起こるシーンをプレイヤーにどう感じてほしいか、ということがBGMに凝縮されているのだ。 無音の状態からスタートするから、BGMだけど効果音のような位置づけになっているのかもしれない。 そのBGMに必ずワクワク感が入っているのだ。 音楽の素養がないので説明しようがないのだが、不安をあおるようなBGMの中に必ず入っているんだよ、高いピヨピヨした音が。 フルートだか管楽器だかなんだか、私にはわからないんだけど。 それが顕著なのは、カメラを引いて遠景を見せるとき。 BGMと相まって、未知なるものに突き進んでいくワクワクが感じられるんだ。 それがあるからこそ、このゲームを私は素晴らしいと感じたのだと思っている。 実はこのゲームには前作があった、『FAR: Lone Sails』という。 今やっているのだが、こっちにはワクワク感はないね。 タイトルに「Lone」が入っているだけあって、孤独感というか、人恋しさを演出している感じ。 やはりタイトルが違うだけあって、同じじゃない。 こっちは「Changing Tides」だから。 凄く前向きな感じ。 私はこのゲームをプレイしているとき、ボートによる単独世界一周を試みる人はこんな気持ちなのかな、と思いながらやっていた。 独りっきりでわざわざ困難に挑むからには、何かしらロマンが必要なんじゃないかな。 |