ローグギャラクシー

もはやご褒美ではない 2006_05_12

 

RPGにおけるイベントシーンはご褒美なんだと、年来私は思ってきた。
だって、そこに至るまでのザコ戦とか、面白くないことが多いんだもん。
経験値稼ぎが面白いRPGがあることも否定はしないけど、概ねイベントシーンを見るためにRPGはやるモノだと思っていた。
イベントシーンにムービーが組み込まれるようになったのは、要するにご褒美の価値を高める必要があったからだ、と考えれば納得がいく。
しかし、あれだな。
もはやご褒美だとは言えなくなってきているんだ、と感じるゲームがあったのである。
昨年末にPS2で発売された『ローグギャラクシー』がそれであった。

私にとってSCEは仇敵だけど、SCEが発売したゲームは嫌いじゃない。
そんじょそこらのメーカーに比べたら、よっぽどチャレンジスピリットに溢れたゲームを創ると思っている。
SCEは資金を出しているだけかもしれないが。
自分で自分をホメ殺したことで有名な『ローグギャラクシー』だって私はやってみたかったのである。
中古価格が、ベスト版が発売されたとしてもこれよりは安くならないだろう、というレベルになっているので私は安心して購入することが出来た。

プレイしてみて、悪くはないと思っている、『ローグギャラクシー』。
最初の10分は減点法でいけば私の基準では満点だ。
10分で最初のセーブポイントに辿り着いたときは、これはすごいゲームなんじゃないかと思った。
RPGみたいな世界観も含めて頭に入れることの多いゲームは最初が一番肝心なので、私はかなり好印象を持った。

しかし、一つ大きな発見があったのである、悪い意味で。
ムービーシーンのテンポが悪いのだ。
あれはイライラするな。

このゲームを創った人たちは、よほど自分たちのモデリングに自信を持っているようで、リアルタイムレンダリングのムービーシーンを多用している。
オマケにワンシーンワンシーンも長い。
おそらくこの人達も私と同じように、ムービーシーンをご褒美だと思っていて、たくさん組み込んだ方が喜ばれるだろうと考えたのではないか。
プリレンダリングと違って、リアルタイムなら安く出来ちゃうから、ついついやり過ぎちゃうのかもしれないな。

ところが、喜び量の低いムービーシーンなんては、もはやご褒美にもならない。
娯楽世界における喜びの相場が時代と共に変化してきているのである。
シナリオの進行と関係ない、サブキャラのコントなんか見せられても全然嬉しくない。
ムービーならなんでもいいじゃなくて、そこに喜びがギュッと詰め込まれてなきゃダメだ。
2Dのアニメーションやプリレンダリングでお金をかけてやってた時代には長くは作れないから、重要なところに絞り込まれてかえって良かったのかもしれないな。

『ローグギャラクシー』はゲーム界に一つの良い示唆を与えたんじゃないか。
これからムービーシーンはどんどん増える可能性が高い。
だって、次世代機になればリアルタイムレンダリングでも綺麗な絵が出せるからね。
モデリングには時間とお金がかかるけど、一端創ってしまえば、どれだけ使い回してもそんなに手間はかかるまい。
ご褒美はあればあるほど良い、と思っていると、ムービーシーンはどんどん長くなるに違いないのである。

実際、絵が綺麗になれば、初めはご褒美で通用するだろう。
しかし、人間はすぐに慣れる。
あっという間にご褒美にならなくなるに違いない。
ムービーにだって、喜び密度の概念が必要になってくるはずだ。
『ローグギャラクシー』が示してくれた教訓をこれからのゲームは活かすべきである。


<追加>
そういえば、『バイオハザード4』なんかはリアルタイムレンダリングなのに、ムービー控えめだったな。
節度をもって使えば、ムービーだからといって悪いわけじゃないと思う。


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