ちゃっくんぽっぷ

贈り物 2001_12_11



生まれて初めてファミコンを買った。
もちろん新品である。
『ちゃっくんぽっぷ』のために必要だったのだ。
PC8801版を手に入れることは困難だが、ファミコン版なら比較的簡単に手にはいるのである。
ファミコンが流行っていた当時、私は「ファミコンみたいなチャチな画面でゲームなんか出来ねーぜ!」とか思っていた。
しかし、いま見てみると結構綺麗だ。
テンキーと十字キーの違いはあるが、これならPC8801版の代わりになるかもしれない。
このファミコンと『ちゃっくんぽっぷ』は母へのプレゼントなのである。
もっとも私は母のことを「おっかあ」と呼ぶのだが。

この『ちゃっくんぽっぷ』は私にとっても思い入れの深いゲームである。
兄と一緒に徹夜で13面をクリアせんと頑張っているうちに、寝てないのに夢精してしまったなどというのは酸っぱい思い出だ。
当時の私はとてもストイックだったのである、少なくともゲームにおいては。
13面をクリアするために、マップを手写しして攻略を考えたこともあった。(1ドット単位の精度がないとマップを描いても意味ないのだが、このゲームは)
だが、私の「ちゃっくんぽっぷ」はFM-7版であって、PC8801版ではない。

母の「ちゃっくんぽっぷ」はPC8801版であった。
どういうわけか彼女は、PC8801mk2MRという、総額50万円支出させたにもかかわらず、私が4年ほどで見向きもしなくなったパソコンで延々と『ちゃっくんぽっぷ』をやり続けたのである。
50万円もしたパソコンを使わない、ということが我慢できなかったのだろうか。
彼女が最後にプレイしたのがいつかは定かではないが、少なくとも1年間や2年間ではなかった。
その後、それほどの執着ぶりからは信じられないことに、彼女はその5インチディスクを紛失してしまう。
以来、彼女は時折思い出したように「ちゃっくん、やりたい」と呟くのだった。
それが私の母の「ちゃっくんぽっぷ」である。

もちろん過去に私がどれほど『ちゃっくんぽっぷ』で遊んだかなどということは、これっぽっちも意味のないことである。
それが私の母についてであっても同じことだ。
しかし、私は確信しているのである。
彼女がこのファミコンと『ちゃっくんぽっぷ』で遊んでくれるということを。
いま『ちゃっくんぽっぷ』をプレイしてくれるということを。
であればこそ、私はこれを贈る。


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