星空☆プラネット

期待は裏切られる 2000_12_25

 

誰でも生涯に一つくらいは面白い小説を書くことが出来る、などと世間ではいう。
実際に特別文才があるとも思えない人が、一つだけ世間を騒がせるような著書を残すことは間々あることである。
(そういった場合、大抵は闘病記であったり、暴露本だったりするのだが)
どうしてだろうか?
おそらくそれは、自分の人生ぐらいは誰でも書けるだろうし、現実に起こったことより面白い事などそうそう書けるものではないからだと思う。
そういった意味では、実際に体験していないことについて書ける人だけが、物書きとして飯を食っていけるのだと言えるかもしれない。

私はある人の才能に期待していた。
しかし、その反面疑ってもいた。
その人とは「山田一」、『加奈〜いもうと〜』のシナリオライターである。(おそらくペンネームであろう)
私は『加奈〜いもうと〜』に大変惹きつけられたのだが、ひょっとするとこの物語は山田一氏自身に起こったことなのではないか?という気がしていた。
妹であるかどうかは別にして、親族に同じ病気を持った人がいたことが、この物語のベースになっているではなかろうか、と思ったのだ。(だとしても、別段問題があるわけではないのだが)
私は次の作品でこそ、この人の真価が試されるであろう、というちょっと意地悪な気持ちで次作を待っていた。

ところが、なかなか発売されなかった。
ちょうど一年ほど前になるのだが、一回だけ情報が流れて、その後ずっと音沙汰なしだったのである。
私は、山田一氏が「もうエロゲー作るのいやだっ」とか「自分の才能に限界を感じました」と言い出して、逃げたんじゃなかろうかと思いはじめていた。
そんな矢先に発売されたのが『星空☆プラネット』。
否が応でも期待は高まってしまうというものである。

さて、とりあえず一通りプレイし終えて、どうしよう?と思っている。
正直に言えば、期待は裏切られていたのである。
この『星空☆プラネット』は『加奈〜いもうと〜』と比較対照されるべきものではなく、『To Heart』あたりを持ち出した方が良さそうな印象を受けた。
シナリオも山田一氏が一人で書いたものではなく、「星空☆プラネット制作委員会」との共著という事になっているようである。
う〜む。

私はファーストインプレッションでは、どちらかというと否定的な見解を取ろうとしていた。
理由付けはどうにでも出来る。
・各キャラクターのシナリオから中心線だけを抜き出すと案外薄っぺらそうだ
・テーマ的に一見着眼は良かったようにも見えるが、話を膨らませきれず、本筋とは違う部分で勝負している嫌いもある
なんていう言い方も出来るのである。

しかし、全キャラとりあえずエンディングを見るところまでやってみると、これはこれで素晴らしいなと思うようになった。
とにかくキャラクタを立てることに終始したゲームだと私は思う。
プレイし終えてみると、自分の中にキャラクタが完成されているのを感じることが出来た。
それに、あまり夢の部分には共感できなかったが、距離の出来てしまった友人という設定はかなり斬新だったし、共感できる部分もあった。
エロゲーであるということから逃げなかった点も評価したい。

結果から見ると、エロゲーにそぐわぬ期待をしていた私が悪かったということになる。
裏切られて当然。
それでも私は山田一氏に期待を寄せたい。
今度こそ見せてくれ!
君の実力を私に見せてくれ!と結んでおきたい。


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