学生時代、同じ研究室に造影剤の研究をしてるグループがあった。 モルモットに造影剤を注入して、時間の経過とともに造影剤がどこの臓器にどれだけ溜まるか、を調べていたのである。 当然そのモルモットは解剖されることになる。 モルモットを解剖するのは電気系の学部生には酷らしくて、助手がやってくれるって言ってたな、そっちのグループの学生は。 自分で飼育していると情がわいちゃって、解剖できないんだって。 私は専門が違う助教授についていたから、まったくノータッチだったけど。 『MAD RAT DEAD』をプレイし始めて、すぐに学生時代を思い出したよ。 モルモットに人間並みの知性があれば、そりゃ復讐に駆られることもあるかもしれん。 このゲームの主人公であるネズミは、解剖されて殺された恨みを晴らすべく、ネズミの神様に与えられた時間を巻き戻す能力を使って人間に復讐しようとするのである。 しかし、プレイヤーである私は人間側なので、ネズミに復讐される結末はあんまりうれしくない。 いったいどうするつもりなんだろう?というのが最初の感想であった。 もっとも、絵が割とポップなので、たぶんそんなに悪い結末にはならないだろう、という予感もあった。 これからこのゲームの重要な部分について書くので、知りたくない方は読み進めないでください。 なんとかかんとかエンディングまでたどり着いてみると、これは極めて整ったゲームだと感心させられた。 ここがおかしいっていう気持ちに全くならなかったのである。 まず物語を進行するうえで重要な役割を果たす相棒を自身の心臓にしたことが上手い。 だって、心臓は常にビートを刻んでいるわけだから。 ゲームの内容とマッチしている。 しかも、ストーリー上で主人公が解剖で殺されたと勘違いしたこととも整合しているんだ。 この心臓が自分の存在について種明かししない点も、ある程度納得はできた。 よくできたお話だったな。 ネズミの神様の存在もなかなか面白い。 ネズミの神様っては実は嘘っぱちなのだ。 寄生虫なのか菌なのかウイルスなのかは定かではないが、ネズミを操る何からしい。 ネズミについてではないが、生物の脳を操る寄生虫や菌の話は聞いたことがあって、まあまあ納得できるお話だった。 しかも、この存在によって、敵が人間じゃなくなるんだよね。 最後はすごく気持ちのいいエンディングになった。 すべてが整ったゲームだったな。 これは苦労してでもクリアする価値があった。 これが話題にならなかったのが不思議だな。 一年以上前のゲームらしいのだが、全然聞いた記憶がない。 リズムに合わせて入力するアクションゲーム、という意味では、もっと簡単で面白いものが登場するだろうと思うよ。 これにインスパイアされる人がいないとは思えないぐらいのポテンシャルを持ったゲームだから。 しかし、設定やお話まで含めた意味でここまで整った作品が今後登場するか、といったら、それはかなり難しいのではないか。 『MAD RAT DEAD』、これはやはり唯一無二だと思うな。 |