アドベンチャーゲームをやるとき、私は創り手と知恵比べをするつもりなのである。 いわば謎解き勝負。 ゲームとしての答えだけでなく、解釈の面でも創り手の意図を解き明かしたい。 ただし、勝負はやはりフェアであるべき。 この場合のフェアとは、ルールが明確であることを指している。 オーバーテクノロジーをどこまで使っていいのかわからない状態で急に、実はこうなってました、と言われても納得できないでしょ。 そういう意味では、今回書く『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』のことを、私はあまりいいとは思っていない。 それでも、一本取られた、と思う部分はあった。 それについて書くには、解決編後のセリフに触れなければならないので、何も知りたくない方は読み進めないでください。 この『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』を謎解き以外の部分でもあまりいいとは思っていない、私は。 とにかくロードが長い。 しかも、ロードの後に無意味なカットが挟まれていることが多く、酷く眠かった。 初見でも早送り機能が使えることに気づいて、どうにかこうにか全クリまでやれた、といったところ。 諸々省くとして。 本来であれば、最も言及すべき点はメインとなるトリックであるはず。 このゲームには大きなトリックが入っていて、おそらく大抵のプレイヤーはミスリードされることになる。 ゲーム中に登場する象徴的な文字の形状とトリックが一致しているあたり、技巧的に巧いと言って欲しい創り手の意図が垣間見える。 しかし、オーバーテクノロジーを使って極めて特殊な状況を作っているので、私は全然感心しなかったな。 そこまでやっていいなら、何でもできるだろって感じで。 私が一番書きたいのは解決編後のおまけシナリオの中でのこと。 物語の中心的役割を演じる敵役の女性が放つ、「だから最初からこの世界はすべて虚構だと言ったでしょ」というセリフについて。(セリフはいい加減な記憶) 少し説明が必要になるのだが、このゲームの中には「シミュレーション仮説」を信じるテロ集団が登場する。(シミュレーション仮説の説明は省く) プレイしている我々からすると、荒唐無稽なテロ集団のように思えるのだ。 ゲーム中で彼らが暴れまくることに全くリアリティを感じない。 ところが、ゲーム中の登場人物からすると、「シミュレーション仮説」は極めてリアリティのある話なんだよね。 だって、作り話なんだから、これは。 実際、プレイヤーの知識と主人公の知識を同期することによって、事件を未然に防ぐこともできたのだ。 これはやり直せる世界。 つまり、「シミュレーション仮説」を信じている連中は狂信者でも何でもない。 極めてまともな連中、ということになる。 そうなると、「だから最初からこの世界はすべて虚構だと言ったでしょ」というセリフはまた意味が違ってくる。 分かってなかったでしょ?ってことだな。 創り手が得意げな顔をしてプレイヤーにマウントを取っているセリフ、と考えるべきだろう。 その点に関しては確かに気づいていなかった。 ここは一本取られたよ。 それは認める。 認める以上は、このゲームにはプレイする価値があった、と言わざるを得ない。 |