『ぼくのなつやみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!』、面白かったなあ。 面白かった、というよりは良くできてる、と言った方がいいのか。 一見自由に遊んでください、と見せかけて、実はプレイヤーが飽きないようにテンポ良くイベントを挟んである。 イベントは劇中の主人公よりも大人向けの内容なのだが、それを子供の側から見ると、切ないような悲しいような形容しがたい感情を呼び起こすんだな、これが。 凄く良かった。 最初は大人のナレーションが郷愁を強制しているような気がして、反発したい気分もあったのだが、最終的には大満足だった。 今更このゲームの細かいことを書いても意味ないだろう。 6年も前のゲームのリメイクであって、そのリメイクが発売されて更に2年が経過している。 だから私は全然関係ないことを書こう。 私のなつやすみを書く。 これは単なる与太話であって、ゲーム話ではない。 今年の夏は実家で一月ほど暮らした。 これほど長い間実家で暮らしたのは実に17年ぶりである。 要するに、一人暮らしを始めてから初めてのことだった。 我が家は田舎というほど自然の中にあるわけではない。 地方ではあるが県庁所在地の住宅街にある。 若者がほとんど住んでいないので、住宅街といっても人通りもあまりないのだが。 ちなみに若者の多くは幹線沿いに住む。 田舎では車が必需品なので、街の中心よりも車で移動しやすいところに住みたがるようだ。 もっとも田舎であろうとなかろうと、実際にはさほど問題ではない。 私は外に出ないんだから。 久々に実家に帰ると家の中は大変なことになっていた。 元々私の母親は片付けの出来ない人で、家の中はグチャグチャである。 この人が働いている頃は共働きだから仕方なかろうと思っていたが、定年を迎えても一向に掃除をする気配はなかった。 忙しいから片付けないのではなく、片付けられない性分なのだ。 当然レンジ周りもベタベタ。 ゴキブリも繁殖し放題である。 帰省して最初に私の目に飛び込んできたのは、アコーディオンカーテンにくっついている大きな黒い物体であった。 彼を片付けることが私の初仕事となった。 その後も小さなゴキブリを見つけては殺していたのだが、ある日、久々に成体のゴキちゃんがタンスの裏に入っていくのが見えた。 私はすかさず殺虫スプレーをタンスの隙間に吹きかけた。 すると、一匹じゃなくて、3匹ゴキブリが出てきたのである。 そのゴキブリに殺虫剤をかけていたら、またさらに2匹でてきた。 そのあたりがゴキブリの巣になっていたのであろうか。 一度に5匹の成体を見たのは生まれて初めて事だった。 しばらく人が住んでいなかったので、ゴキちゃんにとっては楽園だったに違いないが、私と出会ったのが運の尽きである。 全てあの世に逝って頂いた。 我が家にいるのはゴキブリだけじゃない。 田舎はムシがいっぱいだ。 ことに我が家にはクモがいっぱいいる。 さすがに家の中に巣は作らないが、庭・車庫・軒下、至る所にクモ巣が張られている。 まだ幼体だからよく分からないのだが、たぶんほとんどがジョロウグモだろう。 黄色と緑のまだら模様で手足の長い奴らである。 私の母は農家の出だけあってクモを殺さない。 いわゆる益虫というヤツだ。 母親曰く、クモは家の守り神なんだそうである。 おかげで彼らは堂々と巣を張り巡らせていた。 もっとも私は生まれついての町育ちで、あんまりムシは好きじゃない。 巣を張らないクモならば見逃してやっても良いが、こう堂々と巣を張られていては見逃すこと罷りならぬ、と最初思った。 が、しばし見逃してやることにした。 蜘蛛の巣をよく見ると、蚊が大量に引っ掛かっているのである。 実家で何が困ったって、蚊が多くて困っていた。 これは自業自得で、鉢植えの受け皿なんかにボウフラが沸いているからなのだが。 こいつ等を蜘蛛の巣が取ってくれているのだ。 なるほど家の守り神と言えなくもない。 ジョロウグモは自分の巣の上で脱皮する。 クモが脱皮しているところを直に初めてみた。 足全体をすぼめるようにして、皮から体を上へ抜いていく。 見慣れてきたせいか、気持ち悪いとかは思わなかったな。 気がつくと、そこら中の巣にクモの皮がぶら下がっていた。 どいつもこいつも脱皮していくのである。 夏も終わりに差し掛かる頃になると、当然ながらジョロウグモは大きくなっていた。 はじめは黄緑だった体も次第に赤い部分がハッキリと見えるようになってくる。 ジョロウグモには微量だが毒があるので、このまま繁殖を許すわけにもいかないだろう。 私は大きくなったクモから順に殺虫剤をかけていった。 クモは藻掻きながらタコが茹でられたときのように足を丸めて死んでいく。 もうこの家には守り神はいらないんだ。 そう思いながら、私はクモを殺していった。 なんだか沢山の虫を殺したなつやすみだったな。 クモは分類上、昆虫じゃないけど。 他にもアリさんやらゲジゲジやらいっぱい殺した。 畳の上に上がってくるんだもの、仕方ないじゃない。 私は田舎では生きられない人間なんだな。 |