XBOX

君に幸あれ 2002_05_24

 

私はきっといると思うのである。
アンチテーゼとしてのXBOXに期待をかける人が。
その行く道のなんと険しいことか。

5月22日になって、ようやくXBOXを買った。
値下げした当日に買うのは、いかにもカッコ悪いなと思ったのだが、ちょうど良い機会だったのである。
それまで「out of 眼中」だったXBOXを買う気になったのは、自分にご褒美を与えたかったからだ。
勉強するのがイヤでイヤで仕方なかったので、テストが終わったら何か自分にご褒美をあげよう、と思って勉強した。
ナイスタイミングで値下げがあったわけである。

とにかくXBOXというのは凄いマシンである。
重すぎ。
渋谷から自宅まで15分の間に指が腫れ上がった。(紙袋の手提げ部分が細かったので)
標準的な女性では、持ち帰ることすら不可能なのではないか。

しかし、XBOXというのは、ある意味においては完璧なマシンなのである。
全て標準装備。
ゲームマシンとして頂点に立つ資格は備えている。

ところが、『Dead or Alive 3』といくつかの体験版をプレイしてみてわかったことには、このマシンは大変なことになっていた。
絶対に日本では売れない。
ハードウェアの問題でもなく、難易度が高いからでもなく、ゲームが面白くないからでもない。
要するにゲームが日本向けに作られていないからだ。

日本は特殊な市場である。
何が特殊って、ゲームを自ら楽しもうという気がプレイヤー側にないのだ。
プレイヤーは楽しませてくれるのを期待してゲームを買う。
あくまで受動的である。
それは日本人が平素疲れ切っているからかもしれないし、日本人がゲーム以外の楽しみをたくさん知っているからもしれない。

だからチュートリアルが非常に重要になる。
どうやってプレイヤーをゲームに導入するか。
それも、例えばAボタンを押すとジャンプしますよ、みたいなチュートリアルではもうダメだ。
極端な話、このゲームの何が面白いのかを説明するところまでやらなければならない。

私が今プレイしている『サイヴァリア リビジョン』を例にして説明してみよう。
おそらく、これぐらいまでやらないと標準的なプレイヤーは導入できない。

「左上から弾幕が降りてきます。
 弾は直線的に降りてきますから、機体の左側を掠る位置で止まってください。
 掠ってる音がしますよね。

 そこで画面左上を見てください。
 レベルゲージがあります。
 レベルゲージがいっぱいになると、レベルアップしますよ。
 ほら、ピカって光ったでしょう?
 レベルアップすると無敵時間が発生するので、無敵時間中にもう一回別の弾幕に飛び込んでください。

 ほら、またレベルアップしましたね!
 そうすると途切れなく無敵時間が発生るするんですよ。
 凄いでしょ!」

ゲームの中でこんな説明はしてくれないし、実際にはこれを暗にやらなければならない。
プレイヤーにそれが説明だと気付かれないように。
たとえチュートリアルに成功したとしても、更に単位時間あたりの喜びを保証してやる、という新たな課題が待っているのだが。

もちろん、疑問はあるだろう。
そこまでしてゲームして貰わなければならないのか?と。
それでもやらねばならない。
ゲームの開発にはお金がかかるのだ。
だから素晴らしいゲームというのは、たくさん売れなければならないのである。

しかし、現在のXBOXの売れ行きを見る限り、今後日本向けにゲームが開発されることはほとんど無いだろう。
あくまでアメリカ向けをローカルカスタマイズするだけになるはず。
現状では悲観的な見解しか取れない。

セガなき今、旧セガファンの中にもXBOXを推していきたい、という方がいるだろうと私は思うのだ。
その道のなんと険しいことか。
ご同情申し上げるとしか言いようがない。

敢えて茨の道を歩む人よ。
君に幸あれ。


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