自分の両親を見てきて、子供を育てて何かいいことがあったのだろうか、と私は思うのである。 私の立場からすると、何も思い当たらないんだ。 私は何もしていないからね。 唯一あるとすれば、死ぬときに看取ってもらえる人がいる、という程度のことか。 幸いにして、私はふたりとも看取ることができた。 しかし、死ぬ当の本人は看取られていることがわからないはず。 大抵は昏睡状態だからね、死ぬときは。 とすると、何にもいいことがなかったんじゃないか、とすら思えてくる。 ところで。 『Spiritfarer: Farewell Edition』が終わった。 前回書いた後、どんどん話が進むようになって、大半の魂を送り出すことができたよ。 これは素晴らしいゲームだったね。 あまりに素晴らしくて、この物語について書くことは憚られる。 書いたら野暮だよ。 そこで一つだけ書いておきたいことがあるとすれば、やはりハグになるのかな。 日本ではあんまり習慣にない、あのハグですよ。 抱きしめるやつ。 このゲームではハグがすごく重要。 魂のご機嫌を取るのにも使うのだが、一番重要なのはあの世へ送り出すとき。 最後の最後に、主人公からダっと駆け寄ってハグするんだ。 プレイヤー側からすると、今までの苦労が報われる瞬間である。 送り出される方は必ずしも満たされて逝くわけじゃないんだけど、ハグしてくれる人がいることで何かしら納得して逝ったような雰囲気にはなる。 このハグが何のためなのか、誰のためなのか、ということがこのゲームの問題意識なのだろう。 現実においても、ハグで送り出してあげられたらいいのに、と私は思ったね。 まだ意識のあるうちに、親族やら友人やらとハグして、そのまま逝かせてあげられたらいいのに、と。 その方が、生きてきた甲斐があった、子供を育ててきた甲斐があった、と満たされた気分であの世にいけるのではないか。 満たされた気持ちであの世へ旅立つ人を見送ることができていれば、自分が死ぬこともそんなに怖くはないのかもしれんよ。 この考えは、おそらくこのゲームの創り手が考えていたことと、そんなに離れてはいないだろうと私は考えている。 |