くりきん ナノアイランドストーリー

菌は戦っている 2007_06_26

 

人間の腸の中には、数多くの菌が存在する。
人間にとって都合の良い働きをする菌を善玉菌、都合の悪い働きをする菌を悪玉菌と呼ぶ、なんてのはよく聞く話である。
しかし、ヨーグルトのCMなんかを見ていると、ちょっと不思議に感じることもある。
善玉菌を増やしたからといって、なぜ悪玉菌が減るのか?
善玉菌と悪玉菌が直接戦っているわけでもあるまいし、数は変わらないのではないか? などと思ったりもしたのだが、実際に善玉菌が増えると悪玉菌は減るんだそうである。

ある一定の空間に存在しうる菌の総量ってのは、酸素の量とか栄養分とかでリミットがあって、その中である菌が増えると、必然的に他の菌は減らざるを得ないのだ。
更に優勢になった菌は自分に有利な増殖環境を作っていくため、その環境に合わない菌の増殖は抑制されてしまうらしい。
おそらく我々が下痢になったりするのは、悪玉菌が増えすぎたときに菌のバランスをリセットする意味もあるのではないか。
もう一度勢力争いをやり直すために。
腸菌達はお腹の中で勢力争いを日々繰り返しているらしいのである。
もちろん腸内だけでなく、あらゆる空間で菌は今日も戦っているだろう。

そんな菌をゲームに置き換えてやったら面白いんじゃないか。
これは凄くいい着眼だな。
DSで発売された『くりきん ナノアイランドストーリー』は実にナイス着眼!なゲームであった。
ほとんど菌の性質をそのままゲームにしているんだな、これは。
ただし、直接菌と菌が戦うという部分を除いて。

実際の菌には増殖に適した温度・pHってのはあるわけだけど、これもそのままゲームのデザインに組み込まれている。
一定の範囲内で増殖できる菌の数に限界があるのもそうだ。
菌の世界の生存競争をそのままDSに持ち込んだだけ。
これがまたリアルタイムシミュレーションに適したDSだけあって、相性がいいんだな。
よくできると思った。
経験値稼ぎとかやってると、ちょっと単調になるけど。

見た目が地味なこともあって、実際ゲームにするのは難しかったかもしれない。
採算ベースにのるようにするためには相当小さなゲームにする必要があったんじゃないか。
菌のデザインなんかを見ると、決してポケモンみたいに凝った感じはないし。
これがちゃんと世に出てくるところがDSの凄いところでもあり、おそらく持ち込みのこの企画にゴーサインを出した任天堂の凄いところでもあるな。
面白かったというよりは、なんだかやけに感心したゲームだった。


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