優秀な人間には、ぜひエネルギーの研究をして欲しい。 私はいつも思っている。 全ての問題を突き詰めていくと、結局エネルギー問題に行き着くのだ。 エネルギーが無限にあると仮定すれば、ありとあらゆる問題を解決できるのではないか。 私は仕事がら優秀な人間を見る機会が多いのだが、彼にこそ是非!と思う男がいる。 ここではI氏と呼んでおこう。 彼の凄いところは、頭が良いだけでなく馬力のあるところである。 実際の研究は頭で考えるだけでなく、それを実現させる必要があるのだ。 もっとも、I氏はエネルギーとは全く関係のない、しかも世のためにも人のためにもならない研究をしているのだが。 そんなI氏が『ドラゴンクエスト7』をやり始めたという。 あの忙しい男にそんなもん出来るのか?と思ったら、案の定全然進まない。 私は彼の顔を見るたびに「ドラクエ進んだか?」と声をかけることにした。 私にとっては「今ゲームをする」ということだけに価値があるわけで、彼が国際学会で発表しようが、論文をいくつ書こうが知ったことではないのである。 ましてや、彼の研究で人が救われるわけでもないし。 私は「はよヤレ、ほれヤレ、すぐにヤレ」と言い続けた。 いったい何ヶ月言い続けただろうか? いつまで経っても終わらないので、きっと彼の『ドラクエ7』は永久に終わらないのだろうと思っていた。 私の励ましはいつしか「次俺がやるから、はよ終わってちょ」に変わっていた。 全然やりたくなかったのだが、どうせ終わらないんだから何を言っても構わないはずだったのである。 そんなある日、I氏は私の所にやってきて、おもむろに『ドラクエ7』を差し出した。 ??? 私は何のことかわからなかったのだが、彼が言うには、次は私の番だというのだ。 つまり彼の『ドラクエ7』はついに終わってしまったのである。 私は困ってしまった。 だって全然やりたくないのに・・・。 『ドラクエ7』への意欲なんてのは、既に風化していた。 まあしかし、あれだけ言った手前、私もやらないわけにはいかない。 私は不承不承プレイし始めた。 そしてまた困ってしまったのである。 全然面白く感じられない。 最近ビジュアルに凝ったゲームばかりやっていたせいか、画面がちゃちく見えて仕方がない。 いつも画面の綺麗さとゲームの本質的な面白さとは関係がない!と主張していても、実際にはそういうわけにもいかないのである。 お金払ってないから、意欲はゼロ。 街は人でいっぱいで、これ全部に話しかけるのを思うと目眩が・・・。 本当にこれを400万人もの人がやったのか!?と思ったりした。 プレイする側の姿勢としては最悪である。 しかし一方で、どうしてこんなゲームをI氏がクリアすることが出来たのか?、私は不思議で仕方なかった。 そこで聞いてみたところ、どうも古き良き「ドラクエ」の雰囲気を知っているから、ということのようである。 私なんかは画面もサウンドもチャチくて仕方ないのだが、これがいい!と感じるらしい。 私は『ドラクエ5』しかやったことがなくて、「ドラクエ」というものがそもそも凄いんだ!という意識はまるでない。 思い入れが違うんだよね。 終了まで残り99時間15分(推定)。 本当に困っている。 |