『ドラゴンクエスト9』が終わった。 いつもならスクウェアのゲームは中古販売すら一巡した頃に買うのだが、今回は早めに手に入れていた。 ちょっと確認したいことがあったからである。 前作の『8』をやったときに、後半にさしかかったところのボス戦で、あれっ?と思うことがあった。 全体回復魔法が使えないと、どう考えてもクリアできなかったのだ。 全体回復魔法を覚えるタイミングもちょうどその辺りにさしかかるところだったので、どうやらドラクエはどの段階までの回復魔法を持っているかだけでバランスを取っているのではないか、という気がしたのである。 ただ、私は『5』と『8』しかやったことがないから、ドラクエ全体についてどうこう書くわけにも行かないな、と思っていた。 この点を確認したいと思って『9』をやり始めたのである。 ところで、この話を書く前にインフレパラメーターの話をしなければならない。 インフレパラメーターというのは私が勝手に名付けただけなので、名前はどうでもいいのだが、要するにジャパニーズRPGをジャパニーズRPGたらしめているモノのことだ。 通常RPGでは、レベルアップとともにパラメーター上昇していく。 また、次のレベルアップまでに必要な経験値も指数関数的に大きくしていく。(レベルアップに必要な経験値を固定して、得られる経験値をマイナスの指数関数的に小さくしていっても良い。) ある場所に登場する敵から得られる経験値は大体一定なので、弱い敵ばかり倒していてレベルは上がらず、常識的なプレイタイムであれば、ある場所に到達した時のプレイヤーは想定の範囲内のパラメーターに落ち着くはずである。 一方で、次のステージに進んだときに歯ごたえを感じさせるためには、当然敵のパラメーターもどんどん大きくなる。 その敵を倒すために、プレイヤーのパラメーターもレベルアップと共にどんどんに大きくなっていく。 こういうのを私はインフレパラメーターと呼んでいるのだ。 インフレパラメーターのRPGは、少し前の敵は弱すぎて面白くないし、少し先の敵は強すぎるしで、いける範囲が自然と決まってくるので、自由度は低いように感じられるはずである。 FFなんかがその代表例であり、私が大半のRPGがFFの模倣であると考える所以でもある。 しかし、ドラクエは違う。 イベントを通過した地域のザコを倒していても、レベルは上がるな。 経験値もパラメーターも指数関数的ではなく、線形にのびる印象だ。 更に、具体的な計算式はわからないが、どうもパラメーターがダメージ量に与える影響が小さいようである。 ダメージの変化率がパラメーターの変化率に対して小さいので、ダメージ量がある範囲内に収まりやすいようにできている。 また、回復魔法の回復量もパラメーターから受ける影響が小さい。 これは回復魔法の種類さえわかっていれば、プレイヤーがほぼ特定できることを意味している。 そこで、(1ターンに敵が与える総ダメージ量)<プレイヤーパーティーの回復量、かつ、(敵が与える一撃のダメージ量)<(プレイヤーキャラの最大HP)だけ満たしていれば、まあ、プレイヤーがどの範囲にあっても構わない、というようなアバウトなバランス取りをしているのではないか。 『9』でも、最初のイベントボスとラスボス以外は回復魔法を使ってこなかったので、死にさえしなければ大抵の敵はいずれ倒せるでしょ、という事らしい。 緊張感はクリティカルやステータス異常で演出する、という方向のようだ。 むしろこっちの方が創り手は楽なのではないか。 あまけに、限定が弱いわけだから、プレイヤーにとって自由度は高く感じられるはずである。 では、なぜFFタイプが日本で増えていったかという話である。 ドラクエ9をやっているとよくわかるのだが、無駄な場所が多い。 追加イベント用なのかもしれないが、イベントが起きそうなマップデザインなのに何もないところがいっぱいある。 ゲームをクリアするという観点からすれば、ハッキリ言って要らないような場所ばっかり。 要らないなら取ってしまえ、ということになってもおかしくはない。 しかし、要らないってわかるのはRPGがどういうふうにできているかを我々が知っているからだ。 プレイヤーを徹底的に誘導してある範囲内に納めているジャパニーズRPGってのは、RPGの構造がわかっている人に向けて作られているということである。 逆に言うと、ドラクエはRPGの構造がわかっていない人に向けて作られていると考えられる。 普通に考えれば、RPGの構造がわかっている人達はドラクエに対してノーと言うはずなのだが、でも言わない。 或いは言っても無視される。 なんでかといったら、それはドラクエだからだろう。 他のゲームがやったら怒られるけど、ドラクエだけは許されるのである。 何もないところで経験値稼ぎさせてもいい。 おそらくドラクエじゃないゲームがドラクエと同じバランス取りをしても、退屈だと言われるだけだ。 結局の所、パラメーターひとつ取ってみても、ドラクエのドラクエたる所以はドラクエであることだ、という当たり前の結論にたどり着くのである。 |