引ク押ス

名前は似てても 2012_02_14

 

私はゲームのことを考えるとき、タイトルにはそれなりに注目する。
創り手が何を考えていたのか、を推測する際の手がかりになると思うからである。
もっとも、近頃はキャッチーなタイトルをつけるのが流行りだから、全く何の意味もないケースも多いんだけども。
3DSのダウンロードソフトとして発売された『引ク押ス』を最初に見たときには全く気づかなかったのだが、このタイトル「ク」と「ス」がカタカナになっていた。
ホームページなんかを見ると「ヒクオス」と表記されているところもあって、どうやら『ピクロス』との類似を意識している節がある。
でも遊んでみると、だいぶ違うな。
ゲームが違うのは当たり前なんだけど、喜びの性質というか、どっちが喜びを得るのか、という点に大きな違いがあった。

『引ク押ス』は、3DSのダウンロードソフトの中で700円とちょっと高めの値段設定がなされているから、それなりに手の込んだ作品だろう、と予想していた。
実際なかなか良く出来たアクションパズルゲームだった。
ブロックが三段階に引き出せるようになっていて、ブロックを足場に上へ登っていき、迷子?を救出していく。
そのブロックが色分けされていたり、同色でつながってたりして、全体として絵になっているところが、『ピクロス』を意識した名前になっている所以だろう。

ところが、一つ決定的に違うところがあって、絵が喜びに寄与してないんだよね、こっちは。
最初から絵が見えちゃってるから。
『ピクロス』だったら、だんだん絵が出来てきて、完成したら嬉しいじゃん。
困ったら、絵を推測して冒険する手もあるしね。
そういうの全くないんだ、『引ク押ス』には。
しかも、複雑な絵を描こうとするとどうしても大きくなるんだけど、大きくなると全体が把握し辛くなるんだよ。
難易度の上昇がパズルの難しさというよりも、全体を把握しにくくなることに掛かっているような印象があって、複雑な絵のステージをやってても全然嬉しくない。
むしろ小さいステージの方が、「これは良く出来てるわ!」って感心することが多かった。

逆に、パズルを創る方は面白いかもしれないけどね。
絵のできあがりとパズルが上手く噛み合ってる必要があるから、創作側の難易度が高くなることは想像に難くない。
創ってる人は達成感があるだろう。
そのことは、創作側に回ってみるのにも大きな敷居があることを意味する。
とりあえず絵を描けば、それが勝手にパズルになる『ピクロス』とは、そういう意味でも違うな。

私の印象としては、『ピクロス』とは全然違って、割とストイックなゲームだったな、『引ク押ス』は。
絵から喜びを得ていないということは、純粋にパズルから喜びを得ているわけだから。
カタカナで発売しなくて正解だったかもしれないね。


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