ファイナルファンタジー]_3

打ち砕かれた野心 2001_12_08

 

『ファイナルファンタジー]』をプレイするにあたって、私には決めていたことがある。
それはHDDでプレイする、ということだった。
ゲームを楽しむために打てる手はすべて打っておきたい。

しかし、外付け40Gハードディスクが直販価格で19,000円というのは、下手をすると利潤が出てしまう。
SCEに儲けさせたくない、とは思ったのだが、背に腹は代えられない。
今回の私にはゲームを楽しむことの他に、もう一つの目的があったのである。
PS2凋落のシナリオを発見するという。
それは野心であった。

HDDというデバイスは、かつてのPCエンジン拡張メモリーカードほどではないにせよ、ゲームデザインを変えてしまう。
ちょっと例を考えてみよう。

イベントとイベントの間に何回プレイヤーが雑魚とエンカウントするか、ということは、ゲームを創る側が当然に想定することである。
しかし、HDDだったら12回ぐらいエンカウントしてもいいけど、DVDだったら10回ぐらいが望ましい、という状況はあり得る。
アクセス速度が遅いから。
HDDを想定してゲームを創ったとき、DVDでプレイした人は長いと感じるし、DVDを想定したときは逆になる。
また、エンカウントの回数を何回と想定するかで、戦闘一回あたりに得られる経験値を変えなければならない。

もうちょっと技術的な話になれば、プログラムの量やCPUの占有率に変化が起きる。
DVDだったらイベント時の読み込みデータを小さくするデザインをしなければならないが、逆に常駐プログラムは大きく取ってもいい。
その代わりデータの解凍にCPUパワーを割かねばならないかもしれない。
一方、HDDだったらイベント時の読み込みデータを大きくしても良いが、その代わり常駐量は小さくしなければならない。
読み込みデータに余裕があれば、データの圧縮率を落としてパフォーマンスを稼ぐことだってできるのである。

つまり、HDDというデバイスによって、ゲームのデザインは確実に変わるのだ。
私の野心とは、それを『ファイナルファンタジー]』から読みとってやろうじゃないか!ということであり、それはすなわちHDDまでは買いたくないと思っている層がPS2から離れていく、ということを意味する。
オプションを持ってないと快適に遊べないゲームマシン、というのは過去に成功した試しがないのだ。

私はHDDが届く日から逆算して3日前から『ファイナルファンタジー]』を始め、5時間ほどDVD読み込みを経験してからHDDへ移行した。

ところが敵も然る者である。
私ごときには尾っぽは掴ませてくれなかった。
多少は快適になるが、ゲームバランスとしてはさほど問題ないように思えたのである。
DVDでプレイするとラスト直前はエンカウント率が高すぎるように感じるかも知れないが、おそらくあれは故あることだろう。(スフィア盤(注)を進めるためと、アイテムを盗ませるため)
数万台しか売れていないHDDのためにバランスを崩すことなど、あり得なかったのかも知れない。
私の野心は儚くも打ち砕かれたのである。

結果的に見るとこの行為は、税込み2万円強と引き替えに僅かばかりの快適さを購い、自分の中の『ファイナルファンタジー]』評を高めたに過ぎなかった。
ゲーマーとしてはそれで良いわけなのだが・・・。

それでも私は夢見ているのである。
PS2は2千万台売れてるけど、HDDは100万台しか売れてないから、実質100万台なんだよね!なんて話になることを。
そうなったらSCEも許してやろうと思うのだ。



<注>
『ファイナルファンタジー]』には、普通のRPGのようなレベルアップはない。
スフィア盤という、双六みたいなマップの上を進むことで成長するのだ。
自分で成長を決められる点で画期的。
でも、わりと「掌(たなごころ)」な感もあり。


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