『F-ZERO GX』。 これを楽しむために、一体どうしたらいいのか? これはかなり難しい課題だった。 発売直後に購入したのだが、楽しめるようなったのは、つい最近のことである。 とにかくプレイするのがイヤだった、『F-ZERO GX』は。 画面から受ける圧力が非常に高くてプレイする気になれなかったのである。 歳を取ると目がつらい。 視力は衰えていないが、ひどく疲れやすくなるのである。 このゲームは2000Km/hが売りの超高速レーシングゲームだけあって、目にかかる負担がもの凄く大きかった。 おまけにコースアウト即リタイアになってしまうので、ただ走るにしても相当な集中力が必要だ。 にもかかわらず、この『F-ZERO GX』はプレイヤーに媚びるところが全くない。 メニュー選択画面を見ると一目瞭然なのだが、9分割の無機質なメニューデザインには、こういう順序で楽しんでね、というメッセージは皆無だ。 今時のゲームとしては、思い切ってプレイヤーを突き放しにかかっているんじゃないか。 実際遊んでみても、ひどくストイックなゲームだという印象しか出てこない。 これは手強い相手だった。 これを克服するために私が考えていたことは、SFCの『F-ZERO』をプレイしていた時の自分を利用できないだろうか?ということである。 私は『F-ZERO』の一番最初の面だけをひたすらぐるぐる回っていた。 コンシューマーに移行して初めてやったゲームだったからかもしれないが、一番簡単なコースを延々と走ったのである。 あれは楽しかったな。 ぐるぐる走るのをやめたのは飽きたからではなく、自分より4秒も速いやつが大学の寮にいると聞いてやる気を無くしたからだった。 そこで、この『F-ZERO GX』でも一番簡単なコースをぐるぐる回ってみるか、と思い立った。 ゲームを楽しむためならば、思い出でも何でも使ってやればいい。 そして、この「同じコースをぐるぐる回る」ということが素晴らしい効果を伴っていることに、私は気がつくことになったのである。 それはゲームの負荷を軽減させ、ゲームを理解させるという効果。 同じコースを走っているから、新しいコースを覚える負荷がない。 コースを理解する前に次々と新しいコースへ進むことは、負荷を増大させるだけで、ちっとも喜びを生まないのである。 出来るだけ上手に加速し、そのスピードを落とさないようにしながら、かつベストラインを通ろうとすると、どうしてもコースを完璧に理解する必要あるからだ。 理解しない状態で走っていても、ただ画面が速く流れていくだけで面白くはない。 最初のコースだけをぐるぐる回っているうち、ようやく私も『F-ZERO GX』の面白さがわかってきた。 面白さを理解した上でグランプリモードへ進むと、ゲームにすんなりと入ることが出来たのだ。 プレイし始めに感じていた苦しさはかなり軽減されて、面白さがエンハンスされたなと感じている。 64の『F-ZERO X』から導入されたバトルの楽しみ方には、まだ到達できていないのだが。 かつて自分が面白いと感じていたことにも理由がある。 これは一つの発見だった。 負荷が大きすぎるのなら、自分で負荷を小さくしてやったらいい。 <後日談 2003_10_27> どうせぐるぐる回るなら一番初めの「ツイストロード」より2番目の「スプリットオーバル」の方が楽しいかもしれない。 ダッシュプレートが沢山あるから。 |