インスタントブレイン

全ては最後の一枚のために 2011_11_27

 

私はいつも、RPGなんてのは最初と最後だけちゃんと創ってあればいいんだ、と思っているし、そう書いてきた。
それは、基本的にRPGなんてのは時間つぶしで、そもそも大して面白いジャンルではない、と私が思っているからでもあるのだが。
では、私が大好きなアドベンチャーゲームの場合は、さてどうか。
RPGと比較してアドベンチャーの場合はゲームシステムを覚える必要があまりないので、RPGほど序盤に繊細な気配りをする必要はないかもしれない。
そういう意味では、相対的に最後の方が重要度は増すと言えるだろう。
とはいえ、まさか最後の最後、最後の一枚でこれほど評価が変わるとはね。
XBOX360で発売された『インスタントブレイン』は、ちょっと珍しい経験をさせてくれたゲームだったな。
今回は最後の最後について触れなければならないので、今後このゲームをプレイする気のある方は以下を読み進めてはいけません。


正直、あんまり面白いとは思わなかったな、『インスタントブレイン』は。
推理ものとはいえ、パッケージが見るからにギャルゲー風だから、それほど期待していたわけではないのだが。
アウトラインが悪いとは思わないんだけど、ちょいちょい気になるところがあって、物語に集中出来なかった。

リニアが開通しているところを見ると近未来の日本であることは分かるのだが、今ひとつバックグラウンドの説明がないんだな。
この時代の技術水準が分からないと、推理にどの程度のテクノロジーを織り込んでいいのかわからないだろ。
最後の方になって、突然そこまで出来るといわれても、まあそうだろうとは思ったけど、納得は出来ないんだよな。
納得出来ないと言えば、一般人が最初に証拠に触るなんて、証拠能力が無くなるから止めて欲しい、とか、そういうのは常にあるわけだが。

キャラの立ちもあんまり良くない。
主人公に貧乏キャラを擦り込もうとしているんだけど、それがなんの役に立つのかよく判らなかったな。
それで話が面白くなったとは思えないんだよ。
テキストもだらだらし過ぎている。
基本的にギャルゲーだから、声優さんにたくさん喋らせたいとか、そういうのもあるのかな。
表示域が広いから、短い文章を書こうというインセンティブが働かないのかもしれないが。

ゲームは写真を撮ることと、撮った写真を突きつけることの概ね2つで、ちょっと「逆転裁判」を意識したような印象は受ける。
しかし、質問と答えの距離が近すぎて、頭の中でロジックを組み立てる、というところまではいかない。
それほどゲームを追いかけた作品ではなかった。
演出面でも、部分的に「逆転裁判」を意識したと思える仕草や効果音はあるんだが、えらい中途半端なんだ。
XBOXユーザー層向けのギャルゲーだってところが、悪く作用してんのかなって印象だったな。

ところが、最後の最後に印象が変わった。
なんだこれ、蛇足にもほどがあるだろ、いらねえよ、こんなの、とかぶつぶつ言いながら最終章をプレイしていて、最後の最後に一枚写真が出てくる。
それを見て、ああ、なるほどな、と納得した。
それぞれ違う生まれの3人が一枚の写真に家族として写っているわけである。
全ては最終的にここに持ってくるための前振りだったんだ、と思えば、そう悪くもなかったか、と、私は思ったな。
ずっとややマイナスだった印象が一発でプラ転した。

エンディングを見て評価が一転した、という経験は過去にもあった。
しかし、絵一枚でグルッとひっくり返ったってことはたぶんなかったと思う。
これは貴重な経験だな。
面白く感じられなかった時間が圧倒的に長かったから、あんまり褒めるわけにもいかないんだけど、プレイした甲斐はあった。


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