采配のゆくえ_2

西軍勝利はアリ 2008_11_18

 

『采配のゆくえ』は面白かったな。
ただし、このゲームを書くことは非常に難しい。
というのも、書こうとするとどうしても「逆転裁判」に触れざるを得ないのだ。
ホントにそっくり。
主人公とサポート役の関係とか、効果音とか、説得する相手の豹変ぶりとかは言うに及ばず、ゲームとしても全く同じである。
創り手の思考を如何にトレースするかを考えるゲームなのだ。
自分が思う正しいロジックを組み立てるのではない。

しかし、この点に関して書いても全然面白くないな。
「逆転裁判」の類似性から面白さを紐解いても全然嬉しくない。
それでは私が満足できないのである。
自分が何を書けば満足できるのか、私はこの2・3日考えていた。
そうすると、やっぱり三成の話を書かないわけにはいかないよな。
このゲームの面白さのキモは石田三成を主人公に据えたところであり、その点について私は書きたいと思うのである。
読む人が読みたいかどうかはこの際関係ない。

考えてみると、石田三成を熱血主人公として描くって、そんなに当たり前じゃないな。
基本的に彼は嫌われ者であった。
とにかく愚直に仕事をするので、常に軋轢を生む。
優れた行政官僚であったればこそ、彼は嫌われざるを得なかった。
ただし、その行動原理には正しいことをやる、という部分はあったろう。
そこには愚直に自分の信念を貫く人間像は見いだせるかもしれない。
愚直からこのゲームのキーワードの一つである「バカ」は導き出せる。
私の知識の源は、司馬遼太郎の『関ヶ原』だけど、読んだのはもう20年近く前のことだから、あんまり記憶に自信はないけど。

また嫌われているはずの三成が、他の武将を説得するってのが非常に面白いんだよ。
戦いに反対した大谷吉継を説得した史実から、この発想が生まれたのか。
いやまて、誰にも仕官しなかった島左近を説得して召し抱えたというあたりからなのか。
あの島左近を説得したんだから、案外熱血漢だったのかもしれない、というイマジネーションは沸いてくるかもしれない。
手がかりとしてはその辺か。

関ヶ原の戦いが西軍の勝利だったら・・・というIFは今まであんまり魅力的なストーリーだと思わなかった。
元々普通にやったら西軍が勝つはずだったのに、実際には負けたんだからね。
しかし、三成をこういう主人公に仕立ててみれば、これは非常に魅力的だな。
西軍勝利はアリだよ。
このゲームが終わってから、石田三成の本、注文したよ、まだ読んでないけど。
あらためて三成を知りたい、と思えるゲームだったな、これは。

このゲームが存在することの意義を思えば、「逆転裁判」のパクリだなんて指摘は大変つまらないことだというべきである。


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