ファイナルファンタジー13-2

保護に値する期待 2012_01_22

 

民事訴訟のニュースを見ていると時々、法の保護に値する期待に基づく請求権が発生する、というような記事を見かける。
ちゃんと判例を読んだことがないから何をもって「法の保護に値する」と決めるのか、私にはよくわからない。
刑罰や物権には法定主義がとられているが、そうでないものについては個々に裁判所で判断されるから、誰かの期待を裏切ると訴えられかねないという現代は極めてメンド臭い時代のようである。
一方で、ゲームの世界にも守られるべき穏当な期待が存在するのではないか。
この点についてなら私にも答えられそうな気がする。
その期待を裏切ると、訴えられまではしないにせよ、酷評であったり、売り上げの減少といった形でそれは跳ね返ってくるだろう。

ところで私はこのところ、『ファイナルファンタジー13-2』をプレイしていた。
思いの外、ちゃんと遊べるゲームだったという印象である。
そこそこ戦闘がテンポ良くて、レベル上げやらモンスター育成が苦にならない。
暇つぶしにはもってこいの作品だった。
私はそもそもRPGがそんなに面白いとは思っていないので、これより面白いものを期待してはいけないような気がしている。
もちろん、ストーリーには目をつぶらなければならないが、タイムトラベルする時点でまともな話になるはずもないので、そこはぐぐぐぐぐっと飲み込むことにして。

しかしその一方で、このゲームは非常に罪深い作品でもある。
とにかくプレイヤーの期待を裏切る。
前作で仲間の犠牲はあったものの、一応ハッピーエンドになって、これから幸せに暮らしたんだろうな、というプレイヤーの穏当な期待を裏切るところからスタートするわけだ。
ゲームの中で描かれていないエンディング後の世界は、プレイヤーの内側に描かれたものである。
その世界へのプレイヤーの寄与は当然高いわけで、たとえ制作者であろうともそこへ手を突っ込んだら、そりゃ反感は買うよ。
よほど懇切丁寧な手を打たない限り、それは避けられないだろう。
もともと痛いキャラだったから戦女神みたいになったライトニングさんは意外と違和感ないけど、スノウとか可哀想じゃん。
セラを救うためにあんなに頑張ったのに、イケメン新キャラをセラにあてがわれるなんて。
全くひどい話だよ。
序盤すごく気持ち悪かったな。

さらにタチが悪いことに、このゲームは未完で終わる。
マルチエンディングだそうだけど、検索してみたところによると、どうもハッピーエンドは無いらしい。
我々がテレビゲームをするのは、小さな負荷を乗り越えることで大きな喜びを得たいからだ。
努力をしたら何かしら良い結果が得られるのであろうと期待を持つことは、至極穏当な期待なのではないか。
それを裏切るからには、相当な報いを受けねばならないだろう。
プレイヤーの内側に手を突っ込むほどには罪深くないとしても。

私はいつも、RPGは最初と最後だけ上手く出来てればいいんだ、と思っているのだが、このゲームは最初と最後でプレイヤーを裏切っている。
一番大事なところで。
そりゃ褒めてはもらえないよな。
まあ、覚悟の上なら仕方ないけど。
リスクを負ってまで描かねばならんほどのお話とも思えないのだが・・・。


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