エンスレイブド、ENSLAVED ODYSSEY TO THE WEST

奴隷という解釈 2010_11_26

 

「西遊記」というと、私なんかは真っ先に夏目雅子が三蔵法師を演じたテレビドラマの「西遊記」を思い浮かべる。
人気絶頂だったゴダイゴがテーマソングを歌ってたこともあって、当時大人気だったからな。
私も観てた。
あれなんかだと、三蔵法師が悟空をこき使っても、悟空を奴隷だとは感じない。
なんせ夏目雅子だし、守ってやって当然だろっていう話である。
三蔵法師は偉い人だという先入観があるせいかもしれないが。
しかし言われてみれば、なるほど奴隷だな。
緊箍児(キンコジ:頭のわっか)で無理矢理言うことをきかせているわけだから、そういう解釈もあり得るだろう。

そんな解釈を持ち込んでいると思われるゲームが『エンスレイブド』。
ちゃんと書くと『ENSLAVED ODYSSEY TO THE WEST』か。
「enslave」が奴隷にする、だから、奴隷にされた、されているということでしょう。
買う前は知らなかったのだが、どうも西遊記をモチーフにしているらしく、主人公のモンキーはヒロインが故郷へ戻る手伝いをさせられる、無理矢理。
気絶しているうちにヘアバンドみたいなのを付けられて、ヒロインが死ぬと自分も死ぬようにされてしまったのだ。
モンキーっていうよりはゴリラみたいな外見だけど。
荒廃した近未来のニューヨークから西へと旅をするあたり、まさしく西遊記である。

ゲームの構成は「アンチャーテッド」みたいなタイプだ。
劇中とのシンクロを意識しながらアクションをやらせる。
銃撃系を打撃系に置き換えたと思えば、そんなに違いはないのではないか。
まずまず面白かった。
やや安っぽいけど。
モンキーという設定だから、飛び回る距離が普通の人間より長いのだが、そのことが面白さに繋がらず、大雑把に感じられるあたりは少し残念かもしれない。
距離が長いってことは入力角度がより繊細になるはずだけど、補正のおかげか上下左右の入力だけでほとんど事足りてしまうから、シンクロ感は小さいだろう。

ゲームの内容はともかく、発想が良かった。
奴隷っていうところを悟空にとどめておかないで、人間一般にまで拡張しているところがなかなかいいじゃないか。
人間って何かに制限されている方が心地いいってところがあるでしょ。
こういう風に生きましょうって決めてもらった方が楽なんだよな。
我々はそもそもが奴隷であるといってもいい。
何の奴隷なのかは人それぞれかもしれないが。
その奴隷である我々が、ヒロインに奴隷にされているモンキーに解放されて、さあ、どうするんだ?っていう話だよ。
奴隷というキーワードを使って、上手くまとめている。
「西遊記」という既存の物語をモチーフにしながら、上手いことやりやがったなという感じ。
発想として西遊記が先にあったのか、人間が奴隷であることが先にあったのかは分からないが。


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