DSの初期に発売された『ロストマジック』は酷く安直な作品であった。 タッチパッドに呪文を書くという誰でも思いつくゲーム。 しかしながら、最初に出すことには意義があったし、リアルタイム進行と呪文を書くことは意外とマッチしていた。 それは早く描かなければならないという要請が、呪文を描くことをゲームとして成立させていたからである。 ゆっくり描いてもいいならゲームにはならない。 その後、似たようなものが全くでていないところをみると、案外よくできていて、そう簡単にあれを超えられなかったのではないか。 作りがしょぼいので、似たようなシステムで豪華な作りの作品があってもいいような気はしていたのだが。 そんな『ロストマジック』をWii向けに焼き直したかのような作品が先頃発売された。 その名も『タクトオブマジック』。 アマゾンに発注する段階では「タクト」だから、Wiiリモコンを振って宙に呪文を描くのかと思っていたのだが、やってみたら思いっきり画面に呪文描くゲームだった。 一見して、非常にまずい印象である。 何でまずいのかというと、DSのタッチスクリーンと比べて、Wiiリモコンの方が呪文を書くことにおいて劣っているからである。 精度というよりはレスポンスの問題で、Wiiリモコンでは常にもたつく。 デバイスとしての遅延もあれば、プレイヤー側での補正による遅延も発生するのだ。 同じことをやるとどうしてもWiiリモコンはDSに負けてしまうのである。 Wiiリモコンによるもたつきは、更に質の悪いことに、創り手に間を空けた構成を要求してしてしまう。 プレイヤーが「ココ」と思った場所をポイントするのに常にタイムラグがあるので、それだけマージンを大きめに空けておく必要が出てくるからだ。 マージンには時間的・位置的・量的など、いろいろなものがあるけど、ここでは特に分けて考える必要もないだろう。 要するに、間延びしているのである。 極論すると、同じゲームを構成するのに明らかに劣ったデバイスでより良いものが出てくるはずがない。 当たり前のことである。 Wiiは困ったゲームマシンだ、ホントに。 せめて、据え置き機なんだから画だけでも豪華に・・・ということならまだ理解できるのだが・・・。 もちろん作りの安いゲームなので、特に見栄えがいいわけじゃない。 むしろGC時代よりもへなちょこに見えるぐらいである。 ただ、それは比べるからそう思うだけで、決して『タクトオブマジック』が悪いというわけではない。 これ単体としてみれば、悪いとは言い切れないだろう。 初めてやる人には新鮮に感じられるかもしれない。 実をいうと、ようやく呪文の重ね書きができるようになって面白くなってきたのにセーブデータが飛んだ。 おそらくこの辺から少しずつ時間制限がきつくなって、よりゲームを提供できるようになるはずなのだが。 またあのだるいチュートリアルをやり直すかと思うと、ちょっとしんどいな。 このゲームがプレイヤーにきちんとゲームを提供できているのか、確かめることができないまま終わることになりそうである。 |