返校 -detention-、Steam版

過不足のない適正なサイズ 2018_03_05

 

米国で赤狩りが流行った時期がある事は知っていた。
赤狩りを描いた映画は幾つかあったし。
時期で言うと、1950年前後のことかな。
日本は敗戦の影響もあって左派が大手を振って活動していたが、西側世界ではむしろ逆だった、という事は知識としては持っていたのである。
しかし、台湾でも赤狩りが行われていた事は知らなかったな。
よく考えれば、反共を掲げる軍政下においては、当然赤狩りも行われるだろう。
それもより苛烈に。
そんな時代の台湾に生まれたある女子高生に何が起こったのかを描いたホラーゲームが『返校 -detention-』。
私はこのゲームを任天堂のHPで知ったのだが、Steam版の方が少し安かったので、こっちをやる事にした。

このゲーム、表現も素晴らしいんだよ。
少女の記憶を映し出したステージに、台湾文化をちりばめた謎解きを埋め込んで、特色のある作品に仕上げられている。
ただそれ以上に、コンパクトにまとまっているところに感心させられた。
このゲームの主人公である少女が、なぜ悪夢にとらわれ続けているのか、を説明するために必要な内容がきっちり入っていて無駄がない。
謎解きにも、そこへ至る必然性が感じられたな。
一応、悪霊?をかわすアクション的な要素も入ってはいるのだが、全然クドくないのが良かった。
同じ悪霊はせいぜい2-3回ぐらいしか登場せず、トータルでも10回あるかないかぐらいだったんじゃないか。
おかげで、少女がそうなってしまった、というお話が抵抗なく受け入れられた。

学校の中にまで軍関係者が入り込んでいる状況や、命がけで学ぶ自由を求めている人たちを断片的に描く事で、プレイヤーのイメージを膨らませているところも上手いんだろうな。
第三章あたりでだいたいお話は読めてしまうのだが、それでも先へ進まずにはいられなかった。
まさにゲームならではの表現方法だったよ。
創り手は全部自分で表現したいから、映画が究極の表現だと思いがちだけど、プレイヤーの取り分を残す表現の方が上でしょ!と私は言いたい。
ゲームの可能性を感じる作品だった。

日本のメーカーさんには見習ってもらいたい。
フルプライス(大作の標準的価格帯)を維持したいがために、何回も同じ事をやらせて時間を稼いだり、プレイヤーの取り分を奪ってまでも全部描いちゃうような作品ばっかり創ってないだろうか。
内容に見合ったサイズ、サイズに見合った価格、価格に見合った開発体制。
何を表現したいのか、から逆算していく必要もあるんじゃないの?


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