掘り出し物 '99_10_31

掘り出し物 '99_10_31



まさかこんなに面白いなんて。
「クロス探偵物語」。
いま、終わってしまったことの寂しさと、これで睡眠不足から解放されるという
安堵が同居した不思議な気持ちだ。

このゲームのことを不覚にも私は知らなかった。
ファミ通のレビューでオール8点を取った事もそうなんだが、なによりほぼ同内
容のSS版が存在するという事に驚いた。
SSの良質なゲームは見逃しているはずがないと思っていたのに・・。
その辺のことはまた別の機会に書きたいと思う。

その記事を読んで以来、私はゲームショップを訪れるたびに新品・中古を問わず
このゲームを探し続けたが、どうにも見つけることが出来なかった。
どうやら評価の割に販売数が少ないらしい。

そんなある日、記事を読んでから1週間も経ってからのこと(PS版発売から数
日後になる)、ついに私はSS版の中古を見つけた。
しかし、あまりの高さに断念しPS版を購入することになってしまった。

このゲームのパッケージ見ると、『読みとり時間ゼロ、先進のエンジン”マッハ
シーク”搭載』と書いてある。
読みとり時間の速さは、CDバッファの大きいSSの大きな利点の一つ、と長年
思っていただけにちょっと寂しいものはある。
SSでなくても出来るんだ、そういうのって。
実際プレイは快適だった。

しかしながら、このゲームの真の素晴らしさはキャラクターにある。
とにかく生き生きしている。
この『生き生き』感の源はなんなんだろうって考えてみたんだけど、なかなか見
えてこない。
敢えて言葉を探すとすれば、それぞれのキャラクターが自分なりに考えているよ
うに感じられる、といったところだろうか。
もちろん話の都合上、あからさまに間違わんとして間違っている部分もあるんだ
けど、それがそのキャラクターの持ち味として描かれていると感じた。
だからこそ、脇役に至るまで、私はこのゲームの登場人物の多くに心を惹かれて
いったのだろう。
エンディングを迎える寂しさはその証だ。

また、状況証拠で犯人の目星さえつけられれば、とりあえず先へ進めるようにし
た点も評価したい。
トリック自体が難しいわけではないんだけど(話の半ばで大体わかってしまう)、
謎解き部分が文字入力形式になっているので、変に詰まってしまう可能性もある。
そんなことでゲームを投げ出されてしまっては勿体ない。
プレイヤーに達成感を与え、かつ読み物としての楽しさをストレートに表現でき
たのは、この適度な難易度設定のおかげだったと思う。

もちろん納得できないところもあった。
全7話のうち、第4話・第6話にはいささか閉口した。
第4話は作者の自己満足に付き合わされている感があるし、第6話は明らかなプ
レイタイム稼ぎだ。
それを推してもなお、私はこのゲームを高く評価したい。

いま振り返ってみると、エンディングまで一直線だった。
充実したプレイだったな、と満足に浸っている。
SS版をプレイできなかったことは残念だが、こうして素晴らしいゲームが再び
日の目を見るというのは素晴らしいことだ。
私個人としても、このゲームを作った「ワークジャム」という会社にとっても、
そして、全てのゲーマーにとっても。



<注意!>
文中で第4話を「作者の自己満足」と書きましたが、これが適切な表現であるか
どうかには、いささか自信がありません。
表現が失礼だという意味ではなく、一般の人と自分の間にある感覚の差に対して。
SS版が先行して発売されている以上、アンケート結果が作品に反映されている
であろうと予想するのですが、この第4話はおまけとしてドラマCDになって納
められているのです。
ということは、評判が良かったであろうと思われます。
私にはただ退屈なだけだったのですが・・。
ヒロインを死なせるストーリーにも賛成できない。


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