DEATH’S DOOR、GamePass版_2

矛盾を抱えた事象 2022_02_06



人であれ何であれ、生まれ出でたものは須らく死ぬ。
それはわかっている。
しかし、納得しているか、と言ったら、そうでもない。
死にたくはないよ。
そこに、矛盾のようなものがあるんだな、「死」には。
『DEATH’S DOOR』は上手かった、「死」を設定やストーリーに織り込むのが。
この点について書きたいのだが、これはもうこの物語の核になる部分なので、興味のある人ほど読まないことをお勧めします。
先にプレイしてください。


このゲームの主人公はリーパーである。
リーパーというのは魂の取立屋みたいな職業。
後にわかるのだが、我々がイメージする死神的なものの代わりに魂を回収する機構を創ったのが、自分の雇用主である扉の王だった。
主人公は魂回収機構に勤めるサラリーマンみたいなものらしい。

主人公は仕事の成り行きでビッグソウルと呼ばれる、死から逃れ続けている3人の魂を取りに行く。
その途中で、置き去りにされた、いわば先輩というべき者たちの魂を回収することになるのだ。
リーパーたちは現世にいると時間が進んで死んじゃうのに、扉を閉ざされて帰れなくなったと、そこで知るのである。
どうも雇用主である扉の王のせいらしい、と。
ということは、自分もそうなるのか、と思うでしょ。
悪いのは扉の王なのかも。
いずれ扉の王と戦わなきゃならないんだろうな、と思いつつプレイを進めることとなった。

実際、ビッグソウルと相対しても、彼らがそれほど悪いとは思えなかったな。
大切な人を死なせたくないと思ったり、自分が生きたいと思ったり、あるいは本能のままに生きることが悪いとは言えないだろ。
じゃあ、扉の王が悪いのか、といったら、そうでもなかったんだ。
彼には彼の言い分があって、別にそれが悪いとは言えない気がした。

ここがこのゲームの上手いところで、「死」には矛盾があるんだ。
当然死んで当たり前なんだけど、誰だって死にたくはない、というね。
だから誰も悪くないのに戦わなきゃならなくなる。
結果、何か変わったのか、といえば別に変らない。
生き物は最終的には死ぬわけだから。
カラスたちは扉の王を失って、自由を得る代わりに寿命を全うすることとなった。
それが良いか悪いかって話でもない。
ただ本来あるべき姿に戻るだけ。

一応、真エンドまでやったけど、何か結論があったわけではない。
種が一個足りなくて、フィールドを全部歩き回ったのに、特に何も得られなかった。
でも納得はしている。
「死」ってそういうもんだから。
このお話は、人間の気持ちの面では矛盾を抱えつつも、極めて高い説得力を持っているのである。
ホントに「死」をうまく扱った作品でした。


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