ピクミン2_3

スケールを変えろ 2004_06_04

 

スケールが変わることで今見えている世界が変わる。
同じ物であっても、スケールが変わるとその効果や作用が変わってしまうのである。
それをゲームに組み込んでやると、これはすごく愉快なことになる。

『ピクミン2』はお宝を探すゲームだ。
『1』は壊れたロケットの部品を探すことが目的だったのだが、『ピクミン2』は違う。
探すべき物は、この作品の舞台になっている地球みたいな星に落ちている、あるいは埋まっているお宝なのである。

ところで、この落ちているお宝というのがちょっと変わっている。
宝石なんかはなるほどお宝だが、牛乳のフタとか瓶の王冠なんかは私たちにとってはゴミにすぎないし、乾電池なんかはエネルギーとしてはひどく頼りない物である。
しかし、これがお宝になる。
それはスケールが違うからなんだな。
身長3センチ(推定)のオリマーと身長2センチ(推定)のピクミンたちからすると、これはなんだかすごい物なのである。

スケールが違うということを乾電池で考えてみるとよくわかる。
50分の1スケールの世界では、全てが50の3乗で効いてくる。
同じ乾電池でも12万5千倍のエネルギーになるわけだ。
そうすると、これは私たちの感覚の乾電池ではない。
「永久燃料」になるわけである。

「ピクミン」というゲームを考えたときに、ゲームを成立させるために必要なのは、オリマーがピクミンを投げることが不自然に感じられない程度のサイズ比である。
つまり、3:2という比は必要であっても、3センチである必要はない。
それをこのスケールにして見せたところが、このゲームの愉快なところなんだ。

そうしてスケールを変えてみると、子供の頃集めていた牛乳瓶のフタとか王冠を宝物に出来る。
想像してみるに、創っている方の中にいたんじゃないか、実際に集めていた人が。
あるいはメンコ代わりにしていたのかもしれない。
それは宝物になり得たのである。

スケールを変えることによって、かつての自分の価値観を今に投影することが出来るんだ、ということに気がついていたのかもしれないな、「ピクミン」を創った人たちは。
これは全くの想像なのだが、そんなことを考えながらプレイするのも、また愉快な話である。



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