ギフトピア

大人式 2003_05_05

 

かつて一枚の写真があった。
「あった」というからには、今はもう無い。
私には写真をとっておく習慣がないのである。
それは某年の1月15日に撮られたものだった。

その写真には晴れ着を着た男女数名が写っているのだが、端の方になぜかTシャツ短パンで写っている男がいたはずである。
それが私。
成人式帰りの同期が私の下宿に集まってきて、なんだか無理矢理写真に写らされたのだ。
私の住んでいた下宿は部員の溜まり場だったから。

私は「式」というものをおしなべて馬鹿げていると思っていた。
当然、成人式のことなんか考えもせず部屋に閉じこもってゲームしていたのだが、世間の皆さんにとっては重要なイベントだったようだ。
女の子なんかはこの一回のためだけに着物を仕立てる。
奴らが集まってきたときは、何事かと思った。
その時のことを、私は後によく思い出すことになる。

どうしてかというと、私一人就職浪人して、相変わらず学生時代の下宿に残っていたからである。
みんな就職するなり、大学院に進むなりして、進路を決めていったというのに。
自分はダメちんだなあと落ち込まざるを得なかった。
そんなとき私はあの日の自分を思い出した。
あの写真に写っていたはずの自分である。
一人だけTシャツ短パンで写っていた自分。
私にはそれが大人になる自覚を持たない自分の象徴のように思えた。

あのとき自分が皆と同じようにスーツの一つも着て成人式に出ていたら、その後の私は何か変わったか?と考えてみる。
そんなことで大人の自覚が生まれたかどうか。
物事はカオスなので、何かは変わっただろうが、どう変わったかはわからない。
大人になるとは一体どういう事なのかも、そもそもわからないわけだが。
まあ、今になってみれば、これはこれで良かったんだろうと思うけどね。

私は任天堂から発売される『ギフトピア』という作品を、『チュウリップ』(PS2)の情報を検索しているときに見つけて、これは絶対にやりたいなあと思った。(両者にどういう関係があるのかよく知らないのだが)
『ギフトピア』は、大人式に寝坊した主人公が再大人式をするための費用を稼ぐゲームだという。
よくまたこんな所に着目したものだ。
ただそれだけで惹きつけられた。

実際やってみると、任天堂ブランドだけあって遊びやすく創ってはあるものの、『チュウリップ』にそっくりな印象。
結構きついゲームかもしれない。
なんせこちとら、一回ダメ出し食らってる身の上だからね。
おまけに、正反対の方向にゲームが分岐していきそうで、ひょっとして2回やるの?って感じ。
ゲームの世界でも大人になるのは大変なことのようだ。
どちらへ進んでもたどり着くところは同じなんだ、という事かもしれないけどね。



<後日談 2003_05_13>

「結構きついゲームかもしれない」と書いてしまったが、全然そんなことはなかった。
立ち上げは激丁寧に誘導されている。
しかも、時間制限を利用して、行動範囲を限定している点が旨いね。
必然的に誘導されるので、導入がスムーズに感じられる。
さすがは任天堂ブランドだ。
恐れる必要はなかった。




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