100万トンのバラバラ

付加価値 2010_02_23

 

ああ、そうか、と気づいてしまった。
これ陣取りゲームの一種なんだな。
陣取りゲームというのは私がそう呼んでいるだけで、業界でなんと呼んでいるのか知らないけど、要するに線でフィールドを区切るゲームのことである。
これは大昔からあった。
1983年には陣取りゲームの発展系であると思われる『リブルラブル』が登場していたぐらいだから、おそらくコンピューターがグラフィックスを扱うことが出来るようになった頃からあったのだろう。
ボードゲームとかだともっと前からあったのかもしれないが、それは私の守備範囲外である。

陣取りゲームだったらなんなんだ?と思われるかもしれないが、私が言いたいのは要するに実はありふれたゲームだという話である。
そのゲームの名は『100万トンのバラバラ』。
先頃PSPで発売された、戦艦をバラバラにしてやっつけるゲームである。

少しだけ説明しておくと、このゲームには巨大な戦艦が登場し、主人公はそれを切断していく。
切断した時に、面積の小さい方が落下して、大きい方はそのまま飛び続ける。
それをどんどん繰り返して、最終的に1%未満まで小さくしたら墜落して終わり、というゲームである。
実際にはもう少し複雑だけれども、興味があったら、それはご自分で調べていただきたい。
切り刻んでいるのが戦艦という設定だから気づくのに時間が掛かったけど、これはどう見ても陣取りゲームの一種、あるいは発展系であると思われる。

で、そういう目でこのゲームを見ると、一つ間違えれば5ドルでダウンロード販売されているゲームとそう変わらないだろう、という気がするのである。
良くできたゲームであっても、ありふれたものであれば、そんなにお金は取れないよ。
ところがこの『100万トンのバラバラ』、ちゃんとフルプライスのパッケージソフトとして満足感を与えてくれる。
非常に上手いな、と思える作品だった。

フィールドを戦艦に置き換える段階で、戦艦が平面であることにしてしまった。
本来は立体なのにね。
おそらくそこで、世界全体を平面にしちゃったんだろう。
物も人間もまったく奥行きのない平面的なデザインである。
で、更に登場人物達も単純なんだよ。
とりあえず敵が来たからやっつけるんだ、というだけの単純さと平面の世界感がマッチしている。
そこには心地よい世界観の統一があった。

フルプライスのパッケージソフトというと、どうしてもいろんなモノをくっつけて長大にして、却って時間を無駄にしているだけ、といったものを良く目にするけど、このゲームは違うな。
ゲーム自体はコンパクトなまま。
付加価値を別のところで出しているのだ。
私はやっててすごく気持ちよかったし、すごく上手なゲーム作りをするな、と思った。
あくまで、一つ間違えれば5ドルのゲームだから、この『100万トンのバラバラ』の世界にどれだけの価値を見いだせるかはプレイヤー次第ではあるけど。
私は好きだったな。


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