中学生の頃は私もエラリー・クイーンの国名シリーズを読んだものである。 私が子供の頃に推理ものというと、これぐらいしか読むものがなかった。 少なくとも私は他に知らなかったな。 タイトルに国名が入っているから国名シリーズと呼ばれているのだが、国名シリーズには全て「読者への挑戦」が入っていることで有名だ。 謎を解くための全ての情報を開示した時点で筆者が読者に挑戦してくるのである。 それが楽しみで読んでいたと言ってもいい。 もっとも、推理が当たった試しがないのだが。 300ページも読んでると細かいこと忘れちゃうので、読者的には動機や作者の書きぶりから犯人を推定して無理矢理ロジックをたてちゃうんだけど、答えはヤケに細かいところの一部分だけを使って犯人を特定したりする。 そりゃそうだ。 書き手は、如何に手がかりを書きつつそれを隠蔽するか、如何に犯人への目をそらすか、を考えて書いているわけだからな。 なんか納得いかないよな、とか思いつつ読んでいた覚えがある。 しかし、この推理をゲームにするとなると、話はちょっと違うことになる。 完璧に隠蔽されたら、プレイヤーは困っちゃうよな。 娯楽なんだから、頑張ったら謎が解けるようにしておかないと。 かといって選択式だと、例によって総当たりで解けちゃうし。 さて、一体どうしたものか。 アドベンチャーゲームの世界ではもう随分前からチャレンジはされてきたけど、なかなかいいフォーマットが出来てこなかったな。 そんな中で近頃、これは!と思うゲームに出会った。 PSPで発売された『TRICK×LOGIC Season1』は見事なフォーマットを搭載してきたな。 面白かった。 推理ものだから話の内容を書くわけにはいかないが、フォーマットについては少し触れておきたい。 文章は1話あたり原稿用紙50枚ぐらいになるのかな。 そんなに長くはない。 しかも、手がかりを一切隠さないで、手がかりとなる文章を色つきでプレイヤーに提示してしまう。 その代わり、間違ったロジックに到達出来るダミーの手がかりも一杯入れておくんだな。 まず色つきで限定をかけながら、プレイヤーにある程度ロジックをたてる余裕を持たせておくのが上手いところだ。 そして、手がかりから疑問をつくって、疑問と手がかりからヒラメキを作る。 そのヒラメキを設問に埋めていくことによって謎を解くのだが、この順を追ってやらせるところがまた上手い。 間違ったロジックをたてると途中で矛盾するから。 複数のロジックを立てる余地を残しておきながら、順を追っていくことで間違ったロジックを排除させているわけだ。 答えに至る途中を自由にしちゃうと、書き手と読み手の乖離がどうしても大きくなるから、短く区切っていくのは正解だろう。 事実上、プレイヤーに選択肢を作る作業を行わせつつ、自分で間違った選択肢を排除させるように出来ている。 誘導が効いているという言い方をしてもいい。 非常に上手いと思った。 手こずってると、ヒントが少しずつ解放されていくのもイイ。 順を追ってロジックを立てていく途中で一部分だけ詰まったときなんかに、そこだけ助けてもらえると、ある程度自分で解いたという満足感を失わずに済むし。 実際いくつかヒントを使ったけど、クリアしたときの満足度は非常に高かったな。 これは素晴らしいフォーマットなんじゃないか。 10年使えるフォーマット作ってきたなという印象だ。 これからも楽しみだね。 |