『銃声とダイヤモンド』、これは面白かった。 この面白かったことについて当然書きたいのだが、実はゲームが面白いわけではないかもしれない、とも思っている。 さて、どうしたものか。 このことを説明するためには、どうしても少し内容について触れなければならない。 タイトルからは想像できないが、このゲームの主人公は交渉人である。 近未来の日本で新たに創設された交渉専門部署、警視庁ゼロ課に民間から登用されたフリーの交渉人という設定だ。 犯人との交渉になると、ゲーム開始。 リアルタイムで現れる選択肢を選び、あるいはスルーして、犯人と交渉を進めていく。 へたなことを言うと犯人が激怒して人質を殺してしまうかもしれないので、プレイヤーは綱渡り感の中で対応を決めていくことになる。 狭義の意味ではゲームはほぼその部分に限られる。(多少は他にもあるけど) このゲーム部分が実はすごく短いのである。 特に序盤から中盤にかけては時間にすると全体の5%ぐらいしかないだろう。 私が面白いな、と感じていたのは、実は交渉シーンではなかった。 基本的には話を読み進めていくのが楽しかったのである。 眠れなくなってしまうほどに。 感覚としては連続TVドラマを見ているような感じだったな。 主人公以外の登場人物を見ていると、頭に既存の役者のイメージが湧いてくる。 ヒロイン?に深津絵里のイメージがわいてきたり、上司に小林稔侍のイメージがわいてきたり、ある意味においては非常にステロタイプではあった。 その辺がプレイヤーのイメージを膨らませる手助けをしていたのかもしれない。 また、テキストがうまかったな。 情景描写が全くないタイプなので、プレイヤーに対する説明はすべて会話で行う。 これは本来すごく難しいことだ。 会話する当人の間ではわかっていることまで説明し始めると、おかしなことになってしまうからね。 そこをうまいこと自然につなげてある。 私はその道のことを知っているわけではないけど、おそらく小説家の仕事じゃなくて、脚本家の仕事なんでしょ。 すごく自然にストーリーが頭に入ってきた。 得体の知れない主人公に周りが心酔していく様子も嘘臭く感じなかったな。 ゲームも終盤にさしかかると、交渉シーンが連発するようになる。 交渉でA判定をとらないと真のエンディングに到達できないので、繰り返し繰り返し交渉をやり直すことになるのだが、やはりメンドクセーと思う自分に気づくのである。 最後の方は大変だった。 この点についてはまた別に書きたい。 このゲームは希に見る傑作だとは思うんだけど、褒めやすいかというと、実はそうでもない。 キャラの掛け合いを楽しみにしているだけなのに、矛盾を証明するロジックを組み立てるのが面白いんだ!!、と「逆転裁判」みたいに主張する事は出来なかった。 結局、肌に合う合わないで決まる部分が大きいだろうな。 私は大好きだ、と書くしかないね。 |