20周年なんだそうである、ファミコンが発売されて。 しかし私には、「ファミコンが発売されて20年って、それがなんぼのもんやねん!」という気分がある。 私はファミコンで遊んだことなどほとんど無いのだ。 当時私はパソコンゲーマーだった。 任天堂が「20周年20周年」と言い張るなら、やはり私も20周年を主張せざる得ないだろう。 つまり今日で私がFM-7を買ってもらってから、ちょうど20年が経つのである。 ただ、私はそれ以前からゲームはやっていたので、それはゲーマーとしての20年を意味するものではなく、エロゲーマーとしての20年を意味するものであった。(もっとも、当時「エロゲー」という言葉は存在しなかったが) FM-7を買ってもらったのは、忘れもしない20年前の3月25日だった。 私は基本的に、何月何日というのはひどくつまらないことだと思っているけど、それでもあの日は忘れない。 あれは嬉しかったな。 親が買ってくれただけで自分は何一つしていなかったわけだが、なにやらとても自分が偉くなったような気がしたものである。 ちなみにFM-7というのは、当時富士通が発売していた8ビットコンピュータのことである。 ライバル機(NECのPC8001mk2とかシャープのX1)と使い比べてみて、画面処理が段違いに速かった。 名古屋の九十九電機で、12インチモニタ諸々のセット価格が18万円ぐらいだった様に記憶している。 今の価値でいうと30万円ぐらいに相当するだろうか。 子供に買い与えるにしては高すぎるオモチャであった。 ところが、意気揚々自宅に戻ってきた私は発見するのである、あるものを。 それはおまけで付いてきた10本のゲームの中の一つであった。 『野球拳』 カセットテープのラベルにはそう印刷されていた。 この当時はカセットテープが記録媒体だったのである。 早速プレイしてみると、なんのことはない、単なる野球拳であった。 ジャンケンで勝つとオネエちゃんが脱ぐ。 負けるとオネエちゃんは服を着てしまうので、全裸にするのはなかなか大変なことであったが、当然私はすべてを脱がせたわけである。 そこで私は驚いた。 股間にピンクの"ハート"がついていたのである。 この"ハート"というのは、当時のパソコンには必ず装備されていた半角のハートマークのことだ。 今のPCにはもうないかもしれない。 早い話が、私はあそこを見せてはもらえなかったわけである。 私はその"ハート"を取り除きたいと思った。 その下に何が描いてあるのかを知りたかった。 私は知りたかったのである。 それがスケベ心だったのか、探求心であったのか、今となっては記憶にない。 そして私にはわかっていたのである、”ハート”を取り除く方法が。 すでに電気屋さんでパソコンをいじっていた私は、それがCGの上に置かれたテキストの”ハート”だということが一目でわかった。 当時のパソコンというのは、テキスト面とグラフィックス面が別々に制御されていた。 グラフィックス面の上にテキスト面が被さっているのである。 つまりグラフィックス面に描かれたオネエちゃんの股間の位置にテキストの”ハート”が表示されていたのだ。 今はCGといえば一瞬で表示されるものと思っている人が多いかもしれないが、当時は違う。 当時のCGはLINE文(線を引く)やPAINT文(色を塗る)を使ってプログラムで書かれていた。 短い直線をつないで曲線を表現し、線で囲われた内側を色塗りしていく。 ジャンケンのアルゴリズムなんてのは30行もあれば済むわけで、『野球拳』プログラムの大半はLINE文とPAINT文である。 私は知っていたのである、そのプログラムに紛れて、こんなような一文があるはずだということを。 LOCATE(X,Y):PRINT"ハート" これはテキスト画面上の(横X座標、縦Y座標)に"ハート"を出力せよ、という意味である。 私はそれを探した。 そして、それはすぐに見つかったのである。 この一文を削除して、RUN(実行命令)すればいいだけの話だった。 その結果わかったことには、その下には何も描かれてはいなかった。 何もなかった。 線一本ひいてなかったのである。 ただ、あまりガッカリしたという記憶はない。 私が記憶しているのは、無性に"ハート"を外したかったし、それを外してみせたということだけである。 それがきっかけでエロゲー道を邁進することになったわけではないし、そんなことを書くつもりもない。 ただただ、あれから20年が経ったんだね、というだけの話である。 無性に"ハート"をはずしたいと思った日から20年の歳月が流れた。 時が経つのは早いものである。 とはいえ、たとえ今『FM-7ミニ 野球拳』が発売されたとしても、私はプレイしたいとは思わない。 どうせやるなら私は今のエロゲーをプレイする。 残念なことに、今の私はモザイクを外す技能を持ち合わせてはいないのだが。 |