南米便り・能活編

 
 
6月28日
  練習に向かう川口選手  33時間の移動のすえ、たどり着いたパラグアイはアスンシオン。休憩もそこそこに、選手のホテルに行ってみました。私達のツアーは、途中イグアスの滝への観光があって、練習を見るチャンスはこの日しかありません。結果からいうと、その望みは叶えられませんでした。試合前日のため、競技場での練習だったからです。しかし、バスに乗り込むところを見送ることは出来ました。
 ボールを持った岡野選手を筆頭に、次々出てくる選手達。川口選手が来たのは、中頃。取り立ててご機嫌でも、不機嫌でも無かったように思います。ただ、バスの中では外から見える窓際には座りませんでした。出発するバスに手を振るサポーター、応えてくれたのは藤田選手と監督だけ。新人の吉原選手は頭を下げていたそうです。
 6月29日
  第1戦、対パラグアイ。試合開始1時間前くらいに何気なく選手入場口のほうを見たら、川口選手が出てきていました。藤田選手と森岡選手が一緒。その時、川口選手があくびをしたのが見えたのです。先発じゃないんだなとわかりました。この時間先発の選手ならアップを始めているはずだし、何より試合に向けて神経を集中しているでしょうから。そして、私の推量は当たりました。キリン杯で先発の相手がベルギーだったときから、こうなるのではと思っていましたけど。
 試合中はサブに入っているフィールドの選手が早々アップする中、じっとベンチに座っていました。バックスタンドからでは、表情はわかりません。日本に点が入っても、それほど大きなアクションは無かったように見えます。ただ、最後に負けが決まった瞬間、芝生に向かってこぶしを振り下ろしていたのが印象に残りました。
 7月2日
  パラグアイの新聞
 待ちに待った川口選手の登場です。試合前はパラグアイのキーパーと挨拶などして、落ち着いているように見えました。でも始まってみると、いつもの彼のプレイではありません。最初の飛び出しでボールに触れられなかったとき「え?」と思いました。その後も何度もDFとぶつかって。昨年のダイナスティー杯の頃が、甦ってしまいます。川口選手にとっての本当の敵は、パラグアイでもそのサポーターでも荒れたピッチでもなく、味方からの、特に監督からの不支持ではないでしょうか。感受性の強さが、彼の一番の弱点だと私は思っています。それは長所でもあるけれど、時に彼にもろさをもたらすと。
 思えば同じチームの井原選手とも、連携がスムースになるまでにずいぶん時間がかかりました。それには単にサッカーの技術だけでなく、人間としての信頼関係が必要だからです。故に、それを築く時間のないオールスターなどの選抜チームでは力が発揮できないのではないでしょうか。もちろん同じ条件で活躍しているマイペースな選手もいますけれど。
 試合後、声を掛けてくれたのは清商の先輩藤田選手だけ。川口選手から他の選手をねぎらう余裕は無かったようです。あんな悔しい負け方をしたのにユニホーム交換していたのがちょっと不思議。いつもはサポーターに挨拶してくれるのに、それがなかったのも残念でした。翌日の新聞には、パラグアイの新星サンタクルスとすれ違う失意の背番号1。悲しい写真だけれど、買いました。「次はないだろうな」と感じてしまったので。
 7月4日
  ペドロファン・キャバレロへ向かう選手を、お見送り。またバスに乗り込むところを見られればいいと思っていったら、チェックアウトするところに遭遇しました。バラバラに出てくるので、みな一人ずつ声を掛けてはサインをもらったり写真を一緒に撮ったりしています。2日前にあんな試合をしたのだから、機嫌のいいわけがないけれど、どの選手もちゃんと応じてくれて。バスの中で川口選手は、新人・吉原選手の隣に座っていました。わりといつも一人でいるように見えるのは、気のせいでしょうか?
 7月5日
  選手バス  第3戦、対ボリビア。思った通り、またサブです。メインスタンドに座った私には、まったく姿が見えません。この日ようやく川口選手を確認したのは、試合後のバスの中。窓際に座った彼は、いつも最前列で“能活”の旗を持ってるSさんに、手を振って挨拶してくれました。前に座っていた奥選手と何か言葉を交わし、ほんの少し笑顔も。勝手な解釈だけれど、日本に帰ったらまた1から出直しだと、気持ちを切り替えたのではないでしょうか。
 選手が窓から投げたアンダーシャツを、現地の少年達が奪い合っています。それを見て選手達も笑ったり驚いたり。本物のユニホームを投げてくれたボリビアの選手にはかないませんが。これが勝った試合の後ならどんなにいいかと思いました。
 7月6日
  空港ロビーにて  早くも帰国の日です。空港でチェックインの手続きをしていると、後ろにトルシエが。選手はもう中に入ったとのこと、慌ててゲートに向かいます。するとそこには川口選手が。ラウンジでお茶を飲んでる選手の多い中、彼だけはプレスの人とずっとベンチで話し込んでいました。週刊と月刊の連載を抱えているから、その取材でしょうか?マスコミを通じてきちんと選手としての考えを伝えることが、取材の多い自分に課せられた義務だと感じているように見えます。
 
 

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