試合レポート

 
2005年4月10日 FC東京対ジュビロ磐田 味の素スタジアム

 Jリーグの試合を見るのは何年ぶりだろう。家を出る前にまず戸惑ってしまった。長い間マリノスと日本代表を応援してきたので、観戦グッズは青がほとんど。けれど今日それでは、敵チームの色になってしまう。何とか水色をかき集めて出発した。

 満開の桜と初夏を思わせる陽射し、ピッチに登場した能活は鮮やかな黄色の練習着。アウェイ側に居るカメラがスタンド下に向いていたのは、この登場シーンを撮るためだ。湧き上がるヨシカツコール、それを聞いたとたん胸にこみ上げるものがあった。長かった3年半、能活にもそして私にも色々なことが起こった。だがゴールマウスに立つ姿は変わらない。試合前の練習はどこかダルそうなのも。芝の感触を確かめるように、キャッチングの合間ゴール前を行ったりきたりしている。一つ気になったのは、キックがいつものように正確無比ではなかったこと。再びのヨシカツコールに送られて、練習を引き上げていった。

 オレンジのユニフォームに着替え再登場した能活、試合前の写真撮影で、ユース世代の時に日韓のライバルとして対決したチェ・ヨンスと肩を組む姿は感慨深いものがある。少し緊張したような面持ちの中、キックオフの笛がなった。

 細かい試合経過は磐田のオフィシャルが詳しいので、この先に書くのは私の受けた印象だ。まず、開始早々クロスをしっかりキャッチしたのを見て、「あ、今日は大丈夫だ」と感じる。練習でキックがぶれていたのは上がっているからかと心配したのは、杞憂だった。その後すぐ石川のシュートをフィスティングし、うまく試合に入れたのだと安堵する。フィールダーのほうは、「一歩ずつ遅い」という印象。こちらがそう見るからかもしれないが、なにやら自信なさげだ。DFがボールを持っても出しどころがなく、青いユニフォームの人数が多く見える。一方FC東京は出足鋭くボールを追って、今野などは猟犬のようだ。そのプレッシャーがあるせいか、どうも中盤でのミスが目立つ。

 この日はセットプレイがパッとしなかった。ヘディングがすべて浮いてしまう。マリノスで中澤や河合のたたきつけるヘディングを見てきた身には歯がゆい。それでも20分を過ぎると少しずつ磐田にもサイドチェンジのパスがでるようになった。そこからスピードを上げればいいものを、選手が交錯するたびに歩を緩めてしまう。この試合の審判はほとんどファウルを流していたのだから、そうと気づいてかまわず前へ進めばいいものを。倒されて座ったままアピールしても無駄だと思うのだが。結局前半は守備陣が耐えて、0−0のまま終了。

 ハーフタイムで磐田の控え選手は監督の話を聞かないらしい。ずっとピッチの横でボールを蹴っていた。細かいことの一つ一つから、チームの一体感がかけているように感じられる。後半開始にそなえFC東京側のゴール前へ立った能活に、大きな能活コールが沸く。それが心からのエールだとは、ガスサポの日ごろの行動を見ていると思えないが、本人が試合後に「嬉しかった」と言っているのだから良しとしよう。

 後半チェに替えて中山登場。今ひとつ動きに切れがないように見えるが、それでもボールは回り始める。その代わり危ないシーンも続出。一番遠い客席からは「入った」と思われるシュートが立て続けに放たれる。もちろんそれは川口能活の手によって、ゴールマウスに入ることなくはじき出されるのだが。前半にあった右手1本のパンチといい、まったくプレイに問題はない。というか、いきなりエンジン全開という感じである。味方のおしいシュートがはずれると頭を抱え、ゴール前に倒れた相手選手を気遣い、ナイスプレイをしたDFには拍手を送り。

 だが40分、ついにゴールを割られてしまう。「危ない」と思った次の瞬間にはもう決まっていた。その前にあった中途半端なクリアが遠因のようだが、それは後に確認してわかったこと。とにかくせめてドローで勝ち点1という私の希望はついえた。マリノスだったら「さあ、ここから」と思えるのに、今の磐田では点の取れるにおいがしない。能活のキックもやはり今日は今ひとつで、ゴールキック→落し→シュート・・・など夢のまた夢だ。西が入り活性化され、立て続けにCKを取ったりもするのだが、結局点は奪えず0−1で敗戦となった。

 それでも試合後の能活には笑顔も見られた。代表でいつも一緒の相手GK土肥とは、なにやら言葉を交わしつつ。久しぶりにリーグ戦を生観戦した私も、負けた悔しさよりは、能活のプレイが良かったことに満足した。まだチームに対する愛着がないせいだろう。今年からリーグ戦は1シーズン制となり、先はまだ長いという思いもある。それに甘えてのんびりした気分で居ると、取り返しのつかないことになりそうな気はするが。なにはともあれ、「お帰り、能活」という試合であった。
 
 
 

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