エッセイ・四角い箱から

 
●2000年欧州旅日記●
 
イタリア

3月24日  
ローマです!成田のカウンターに係員がいなかったり、乗り継ぎのフランスで入国すること になったり、いろいろありましたが、無事到着しました。ローマまでの飛行機には、サッカー 観戦かなという若者が結構いて。ホテルの設備がちょっと悪いのが難だけど、とりあえずは ローマダービーを楽しんできます。

3月25日  
早起きをしてシスティーナ礼拝堂に行きました。列がすごかったけれど 案外すぐ入れて、最後の審判やラファエロの絵をみて。 朝からの雨も上がり競技場には2時間前について、次第に盛り上がって いい感じ。そして始まってすぐのローマの先制点。これは幸先がいいと 思ったら、逆転されてしまいました。中田選手は引っ込んじゃうしローマ の攻撃はパッとしないし、どんよりしながらホテルに戻ってインターネット でJリーグの結果を見たら、マリノスが負けたとのこと。追い討ちをかけ られたようです。 夜になるとまた雨が降り出して。明日は鉄道のストとか。一日観光する 時間があるから、有効に使いたいんですけど。

3月26日  
鉄道のストはありましたが、地下鉄が動いていたのでそれに乗りバスに 乗り換え、チボリという町のヴィラデステ公園へ。エステ家の別荘だった ところで、いろいろな噴水があることで有名です。丘の斜面に建ってい て、バルコニーから庭に降りると下がっていくにしたがって雰囲気の違う 噴水の数々が。どこを見ても美しくて絵になって、時間も忘れてしまうくら い。おかげでもうひとつ行こうと思っているところに行けなくなってしまい ました。 その後かの有名なスペイン階段に行ったら、ものすごい人でびっくり。 そして夜はちょっと贅沢なレストランへ。といっても日本に比べれば、値 段はとても安いのですが。結構充実した一日でした。

3月27日  
本日からロンドンです。ローマから飛行機で3時間、ガドウィック空港に は初めて降り立ちますが、表示どおりに進めば大丈夫。空港から市内 への直通の急行にもすんなり乗れて、5時ごろホテルにつきました。お 部屋は味気ないけれど設備がちゃんとしていて快適に過ごせそう。 昨日から夏時間になったので、日没は8時近くです。ただお店が6時ご ろにはしまるため、今日はそのまま荷物の整理などして、夕飯の時間に なってから外へ。 初めてのパブを体験した後、その二階で食事をしました。友人の取った フィッシュアンドチップスは、味はよくても量が多くてちょっと閉口。私の 取った鶏肉とマンゴーのカレーは、日本でも出てきそうな普通の味で抵 抗なく食べられて。湯沸しのあるホテルの部屋で久しぶりの日本茶など 飲みました。

3月28日  
友人の案内で、英国の田舎を回りました。彼女の勤めていた学校を中 心に、近くの町や海岸、マーケットにパプなどなど。 途中の道に咲いている花々も印象的でした。春を告げる黄色の水仙、 薄紫の木蓮や散り始めた桜、芽吹いたばかりの緑も鮮やかで。ただ気 温が低くて東京の真冬みたい。 風の中で話していると顔がこわばって口が回らなくなるくらい。おまけに 帰りは、列車でロンドンに到着してたのに、途中駅と勘違いしてずっと乗 っていて、危うくそのまま折り返してしまうところ。ホテルに着いたときは 心底ほっとしました。

3月29日  
本日はロンドン市内観光です。まずはバッキンガムの衛兵交代。ところ が昨日に引き続き寒いし、その上細かい霧雨で、写真どころじゃありま せん。衛兵も雨用のマントを着ていてビジュアル的にもいまいちだし。凍 えそうになりながら昼食をとるためにカフェへ。 ロンドンは何でも高くて食べ物ももちろんそうなのですが、この店はどう いうわけかとても安くて、おっきなパンのサンドイッチとミルクティー2杯で 3ポンド70ペンス、700円しません。そのあとウエストミンスター寺院を ゆっくり見て友人の買い物に付き合って。 昨日の帰りが遅かったので、今日は早めに切り上げることにしました。 夕飯はチープにテイクアウトのイタリアン。これからゆっくりメールを書き ます。

3月30日  
夕べこのページを書き換えた後、更新をしていないのにパソコンがフリ ーズしてしまって冷や汗をかきました。買ったばかりのくせにマニュアル を持ってきていなくて。何とか復活しましたけど。 今日は丸一日かけて正統派の英国観光です。午前中はロンドン塔をぐ るぐる歩き、昼はホテルで食べられなかったイングリッシュ・ブレックファ ースト。午後は日本語ガイドツアーで大英博物館、たっぷり2時間の見 学。そしてとどめが中世風宴会。さすがに疲れました。明日は5時半に 起きなければ。

3月31日  
朝9時40分の飛行機で移動して、今日からベネチアです。死ぬほど寒 かったロンドンに比べると、暑いくらい。そのわりに道行く人の着ている ものが分厚いと思ったら、日が翳ると急に寒くなるのです。夕方から散 策に出て、それに気づきました。 友人から聞いた安くておいしいけれど探しにくいという店を発見し、開店 時間までマクドナルドで時間をつぶし、いそいそと行ったら予約でいっぱ いだと言われてしまいました。かなりな評判の店みたい。あきらめきれ ずにあさっての予約をして、今日は目についたところで夕食を。ホテル は期待していなかったのに、水まわりを直したばかりらしく最新式で、暖 房も入って快適そうです。

4月1日  
ベネチアの2日目、島巡りに行きました。水上バス・ヴァポレットの3日間 フリーチケットを使って、最初はガラスで有名なムラーノ島へ。地図を頼 りにガラス美術館まで行きました。前にも来たことがあるのだけど、あま り覚えてなくて。 友人がガラスで出来たチェスを買いました。私は昨日モダンなデザイン のブローチを、帯留めにしようと購入したので、買い物は無し。次のブラ ーノ島で入ったレース博物館は、展示物が少なく近代のものばかりでち ょっとがっかり。その代わりレースを売っている店に、古い時代のものが 展示してあって、そちらで素晴らしいものを見られました。 帰りに市場の近くで食料品を買って。ホテルのある駅に近づくにつれ て、ものの値段が高くなるのがわかります。観光地なんですね。

4月2日  
サッカーの試合を見に行きました。その前にサンマルコ広場に行って鐘 楼にでも登ろうと思ったら、何やらイースターのイベントが。古い時代の 衣装を着た少年が、旗を新体操のように投げたりしています。その後張 付けになったキリストが。で、私達から見えない場所で復活したらしく、そ れを追って市民が走るという趣向でした。 サッカーの試合はパッとしなかったけれど、観客はたくさん入っていた し、地方競技場の雰囲気は味わえて。帰りはみなの行く方向と逆の、リ ゾートの島まで行って人がはけるのを待ちホテルへ戻ったのです。 そしておととい予約したレストランへ。おいしくて安くて、隣のテーブルに 居た日本人の夫婦も感じよくて、とても満足できました。明日はゆっくり サンマルコ広場の周りを見て、初めての夜行列車に乗ります。というわ けで、日記の更新は出来ないでしょう。

4月4日  
夕べは夜行に乗りました。夜までまる一日観光する時間があったのに、 大雨で歩き回る気力も出ません。それでも何とか入ったサンマルコ寺院 の、回廊は登る価値がありました。 時間つぶしに店を冷やかすわけにもいかず、なるべくゆっくり食べたか った夕飯は、コースと思って頼んだら一つの皿に盛られたお子様ランチ のようなものであっという間に食べ終わり、結局ホテルのロビーですごし て。 列車は日本で言うB寝台でしかも2段ベッドの上、ちょっとまずったかな と思ったけれど、もうどうしようもないし、落ちないよう気をつけながらも 結構眠りました。が、しかし、ついたニースも雨。美術館も休みが多く、 昼過ぎにはいったんしまってしまうので、どこも見ることが出来ません。 ここは観光地というより避暑地だからでしょうか。 あきらめてホテルに入り、シェスタをとることに。そのあと歩いていける美 術館に行きました。そのころには雨もやみ、明日乗るバスのターミナル を確かめに街の中央に出て簡単な食事も済ませ、ホテルに戻ったので す。

4月5日  
今日は朝から晴れ、欧州に来て初めてかもしれません。そんな天気の 元、グラースの香水工場で、調香を体験しました。最初に好みの香りを 2つ選ぶと、それに沿った原料を指導の女性が選んでくれて、その中か ら何種類かを自分で決めて混ぜていきます。合計で14種の香りを選び ました。 しまいには何だかよくわからなくなって。一応イメージは持って作ったつ もりですが。名前は最初に“衣(KINU)“と決めて。アールデコ風の壜を 選び、ラベルを貼ってもらって出来あがりです。 帰りのバスがカンヌからニースまで2時間と思ったより時間がかかり、お かげで雨に遭ってしまったけれど、めったに味わえない良い体験が出来 ました。バスの乗り換えでカンヌにも降り立ったし、バスの窓から虹も見 えたし、南仏を満喫です。

4月6日  
マルセイユに来ました。ホテルに着いたのが2時前だったので、一箇所 だけ観光に行こうということになって、ノートルダム寺院へ。バス乗り場を 探してきょろきょろしていると、親切なおば様が声をかけてくれました。目 的地より手前で降りようとしたときも、おばあさんが「もっと先よ」と教えて くれて。 着いてみると、丘というよりは山の上の要塞。事実建物の壁には鉄砲を 撃つための細い窓かあいています。教会そのものもとても立派で、海の 町らしく船の絵や模型が奉納(っていうのかな?)してあります。聖母マリ アはまるで観音像のように遠くからは見えて、一風変わった感じです。 そしてまた景色が抜群。360度の一大パノラマ。港やホテル、あさって いく予定のイフ島が見えて。ガイドブックに“ゆるい坂を歩いていくのもい い”と書いてあったのは、とんでもない話でしたが。 で、夜はブイヤベース。ホテルの人に聞いてすぐ近くの店に入りました。 魚介類のだしだけで、塩分はほとんど入っていないような濃厚な味を堪 能。それだけでおなかいっぱいになりました。

4月7日  
本日も快晴!アルルまで行ってきました。ゴッホの絵で有名なところとい うくらいしか知りませんでしたが、ローマ時代の円形闘技場や舞台が観 光のメインのようです。修学旅行というか、野外学習のようなティーンエ ージャーがわんさかいて、うるさくて困りましたけど、その後に行った民 族博物館は人も少なく中庭に遺跡があって、趣のあるところでした。 その近くの、ゴッホが入院した病院の中庭が美しく、建物の一角に入っ ている店で昼食を。珍しく薄味で、サーモンのクリームソースもプロバン ス風オムレツも、美味しくいただけました。アルルの町はコンパクトに出 来ていて、それらの名所がすべて鉄道駅から歩いていけるところにあ り、便利。 帰りはローヌ川沿いをゆっくりと戻り、列車の窓からまぶしい西日を浴び ながらマルセイユに帰ってきました。港のカフェでは人々が夕食前のひ とときを、ビールなど飲みながら楽しんでいます。8時になる今も、まだ 残照が。時計を直すのは面倒で、サマータイムには反対の私も、こうい うのはいいなと感じています。

4月8日  
今泊まっているホテルの朝食は結構充実していて、ヨーグルトや果物、 自分で時間を調節できるゆで卵などがあり、今日はそれをゆっくり食べ ました。それから一番早い船でイフ島へ。『モンテクリスト伯』の舞台にな った監獄島です。といってもその小説を読んでいないので、ピンとこなか ったけれど、人も少なく廃墟のようになった昔の要塞は雰囲気がありま した。言われた時間に帰りの船が来なくて、流刑人の気持ちにもなれま したし。 午後はロンシャン宮と呼ばれる美術館と博物館へ。両方はきついので博物 館のほうへ入りましたが、“自然史“と名がつく割にはただ漠然と集めた ものを並べてあって。早々に引き上げて今度はモード美術館へ。こちら は現代と過去の服を取り混ぜて置いてありました。イッセイ・ミヤケやコ ム・デ・ギャルソンもあったりして。 夕食はガイドブックやカード会社の紹介にもあったところへ行きました が、ちょっとはずれ。やっぱり地元の人がたくさん入っている店がいいみ たいですね。

4月9日  
TGVに乗ってパリまで来ました。車中は満員で子供連れが多く、うるさい のなんの。後で知ったのですが、イースター休暇が2週間もあるそうなの で、そのせいでしょう。駅まで友人が迎えに来てくれて、とりあえずホテ ルに荷物を置いてから、明日は休みで見られない美術館へ。 昨日に引き続きモードの美術館。こちらは個人が集めた服を何着かず つ紹介してあって、時代は1920年から40年が主、中には70年代あた りのディオールなどもありました。展示の仕方が面白く、なぜかガラスの こちらに薄いカーテンがかけてあって、それを少し手で片寄せながら見 ます。 その後はカフェでお茶をして、夕食は友人おすすめのビストロへ。メニュ ーを全部読んでもらって、私は前菜にいわしのマリネ、メインに舌平目 のグリルを取りました。友人達は生牡蠣や貝の盛り合わせ。今が旬だと いう白アスパラガスがメインというのも、日本では見ないものです。どれ も美味しくて、調子に乗って人の残したものやデザートまで平らげたら、 さすがに満腹になりました。

4月10日  
朝からの雨も何とか上がり、パリに居るサッカー友達の案内でクリニヤ ンクールの蚤の市に行きました。「あまり期待しないほうがいい」という言 葉でしたが、同行の友人はレースでできたアンティックな帽子とワンピー スを買って。 昼はサクレクール寺院の近くでマッシュルームとツナのクレープ。その後 はノートルダム教会へ。これが混んでいて、普通の見学はそうでもない のですが、上まで上るには長蛇の列。人数制限をしているせいでした が、それでも我慢して並んで階段をゼーゼーいいながら昇り、ガーゴイ ル達を間近に見ました。その上は360度の大パノラマ。パリ市内の名 所を上から確認して満足です。 夜は昨日会った友人の家へおよばれ。サンジェルマン・デュプレのすぐ 近く、建ったばかりの綺麗なアパルトマンで、失礼を省みず写真を撮ら せてもらいました。こんなチャンスは二度と無いと思うので。心づくしの手 料理をご馳走になり、またしても満腹で帰宅したのです。 それにしてもいつもは1日2食とお茶の生活なのに、3食めいっぱい食 べています。うーん、体重が増えていそうな予感。そのぷん動いてはい るんですけどね。

4月11日  
フランスでエッフェル塔に次ぎ観光客が多いと言われているモンサン・ミ シェルに来ています。ハイシーズンにはパリからの1泊ツアーがあるそう ですか、今回は友人がいろいろ調べてくれて電車とバスを乗り継いで。 到着してしばらくは何とか持っていたのに雨が降り出して、僧院の中は いいけれど外の写真が撮れません。雨が強くなったのであきらめてホテ ルに戻り夕食まで休憩。名物になっているふわふわの巨大オムレツを 食べている間に雨が上がってきました。 「よし、写真をとろう」とお茶も飲まずにレストランから出て、かろうじて島 の全景をとって戻ってきたら、また雨が。今度は雹まで混じってます。慌 てて戻ったホテルの部屋から雨といを見たら氷のかけらがたまっていま した。何だか天気に翻弄された一日でしたが、明日に期待しまし ょう。

4月12日  
いよいよ旅の最後になりました。モンサン・ミッシェルからサン・マロへ。 駅前から15分くらい歩いたところに、城壁にかこまれた都市がありま す。まずはその城壁の上をぐるりと一周。風が強くて寒かったので途中 でお茶の時間をはさみながら。どこから見ても絵になる景色で、資料用 に写真をバシャバシャ。 基本的には晴れていたのだけど、時折昨日のような雹が降ったり変わり やすいお天気。きっとそれがいつものことなのでしょう、すれ違う人の押 している乳母車には、ちゃんとビニールで覆いがしてあります。元の場 所に戻ったところで、名物そば粉のクレープのお昼を取りました。 昼休みが終わるのを待って入った城跡の博物館、展示物はいまいちで したが塔からの眺めが良く、城塞都市の様子が良くわかりました。町の 中央にある教会はステンドグラスが素敵で、それを通って虹色になった 光か差し込んでいて幻想的。 その周りのお店にはさまざまなマリングッズが売られていて、見ているだ けでも楽しくなります。貝や魚のモチーフの家庭用品、ファブリック、本格 的な船で使う家具、金具、海の男が着るボーダー柄のシャツなどなど。 面白がってみていたら、列車の時刻が迫ってきて慌てて駅へ急ぎまし た。これですべての観光は終了、後は明日空港までたどり着けば、その まま日本です。

 

 
2000年4月15日UP

着物deサッカー