北条早雲編

泥棒を放免

北条早雲。関東制覇を目論んだ北条氏の初代当主である。

ある時のことである。

北条氏領内でもって馬を盗んだ者がいた。しかし瞬く間に領内を巡察していた北条氏の家臣に捕らわれてしまったのである。そして奉行所でその馬泥棒の取り調べを行う事になった。その取り調べの場に、たまたま早雲も同席していたのであった。

取り調べ奉行「馬を盗んだ事を認めるか?」

すると盗人は正直に「はい」と返事をした。しかし返答には続きがあった。

「たしかに馬を盗みました。しかしたかが馬ですよ?でももっと大きなものを盗んだ御仁がいるではないですか。」

さらに続けていった。

「あなたの主人は国を盗みになった。それに比べたらわたしが馬を盗んだ罪なんて、無いも同じではないか。」

その言を聞いた奉行は、そのまま盗人に斬りかかろうとした。そのとき。横で取り調べを見学していた早雲が笑いだしたのである。

「おまえの言うことはもっともである。」と言い、この盗人を放免したといわれている。

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