直江兼続編

閻魔大王への手紙

直江兼続といえば、上杉景勝の股肱の臣であると共に、豊臣秀吉から米沢三〇万石を賜ったほどの人物である。

そんな兼続が地獄の閻魔大王に対して、書をしたためたという話が残っている。 話はこうである。

上杉領内において、ある者が処刑された。その処刑された者が犯した罪までは定かではない。しかしその者の身内の者が、
「殺されるほどの罪は犯していないはず。これは不当である。」
と訴え出た。
それ以後も何度となく訴えだし、しまいには
「死んでしまった者を生き返らせてくれ」
などと無理難題を迫ってきた。
それを耳にした兼続。
「なんと不便なことよの」
という事で、その遺族に対して現在でいうところの慰謝料を払い、仏様を供養しておしまいとした。
しかしそれでも直引き下がらず、
「死人を生き返してくれ!!!」
などと文句がつらつら出てくるので、兼続は遺族を自ら呼び出した。
「そしてそんなに死んだ者に会いたいというなら、おまえらが地獄へ行き、閻魔大王様へ直談判してこい」
というなり、その者達の首を斬ったという。

そしてその首を掲げた傍に、高札がたてられた。

「未得貴意候ヘドモ一筆令啓上候、
三宝寺家来何某不慮ノ仕合ニテ相果候、
親類歎候テ呼返シ呉候ヘト様々申候ニ付、
則三人迎ヒニ遣シ候、
彼死人人御返シ可被下候、
恐惶謹言
慶長二年二月七日 直江山城守兼続判
閻魔大王 冥官獄卒御披露」

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