元安川 2025.7.27
原爆ドームと平和公園の間を流れる元安川。ここでカヌーをしたのは2000年11月。その頃私は広島に住んでいて「いつもみている 元安川」として記録しています。ところが、その翌年東京へ引っ越したため、元安川は遠く離れた川になってしまいました。しかし、その後も元安川に関する情報に度々接します。原爆ドームの映像には、たいてい元安川が映っているし、平和公園での出来事も元安川で起こっていることと感じています。お隣さんですからね。
私が広島を離れて以降の出来事で、特に印象に残っていることは、2016年5月アメリカのオバマ大統領広島訪問と、2023年5月に開催されたG7広島サミットです。
アメリカの現役大統領が原爆資料館に来る。しかもその大統領は、核兵器のない世界への理想を持ち、ノーベル平和賞を受賞した人物だ。オバマ大統領が原爆慰霊碑に献花し、被爆者の方々と固い握手を交わし肩を抱く姿に大変感動しました。
そしてG7広島サミット。各国の首脳達が横一列に並び、原爆慰霊碑に献花する姿は壮観で、「願いは叶うかもしれない」と、なにやら分からぬ勇気が湧き上がってくるのを感じました。
今日はこれらの出来事を意識しながら、元安川を中心にぶらぶら歩いてみようと思います。
1.広島ゲートパーク
空港から乗ったバスを広島バスセンターで降り、外に出て少し歩くと広島ゲートパークに到着します。ここは旧広島市民球場の跡地で、私にとっては大切な場所です。「勝鯉の森」に刻まれた日付を一つ一つ確認していると、「日本一を勝ち取った試合を観戦したな」、はたまた「ジュニアカープ会員だった子供たちを、毎試合連れて来てたな。あの頃はほんと弱かった」などと、数々の記憶がよみがえってきます。
当時のまま残る黒いビルに沿った歩道は「ピースプロムナード」。この小道の北の端、少し高くなったところから水が湧き出し、階段状の水路を流れ落ちます。湧き出し口の後ろに立つと、プロムナードの先に原爆ドームが見えます。プロムナードの中央に刻まれた線、そしてこの水路は、資料館から原爆慰霊碑、平和の灯、原爆ドームを直線で結ぶ平和軸の上にあります。
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2.元安川から平和公園へ
電車通りを渡ると原爆ドーム。左に原爆ドームを見上げながら、ゆっくり川に沿って歩き進むと元安橋。橋を渡って階段を降り、低い位置から改めて原爆ドームを見上げます。以前は原爆ドームの右側に市民球場の照明塔が見えたのですが、今はありません。その代わりというと変ですが、左側にエディオンピースウィングの銀色の屋根が見えています。2024年にオープンしたサンフレッチェ広島のホームグランドです。
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「原爆の子」像の前には長い行列があり、インバウンドで世界各地から来てくれた人たちが、順番に鐘を突きお祈りを捧げています。私は列には並ばず、像を取り囲む折り鶴を見学しました。たくさんの折り鶴、一つ一つに込められた思いが伝わり胸が熱くなります。
そして原爆慰霊碑。正式には「原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)」だそうです。ここでもみなさん丁寧にお祈りされていました。
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3.広島平和記念資料館
日頃は原爆資料館、あるいはただの資料館と呼んでいますが、正式には「広島平和記念資料館」です。近時は大変混雑していて入館迄に時間がかかるということで、事前予約でスムーズに入館することができました。中では本当に多くの人が、国籍も年齢も関係なく、それぞれ真剣な眼差しで資料と向き合っています。私も皆さんといっしょに、じっくりゆっくり資料を見学しました。何度も見てきた資料ですが、やっぱり目頭が熱くなり、やりきれない気持ちになります。
一通り資料を見学し1階に降りると、オバマ大統領の折り鶴とメッセージが展示されています。折り鶴は、資料館で出迎えた二人の子供たちに手渡されたものです。
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| 私たちは戦争の苦しみを経験しました。 共に、平和を広め核兵器のない世界を 追及する勇気を持ちましょう。 |
We have known the agony of war. Let us now find the courage,together, to spread peace and pursue a world without nuclear weapons. |
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隣にはローマ教皇フランシスコの訪問パネル。2019年11月に平和公園を訪れ「平和のための集い」に参加されました。教皇もメッセージを記しています。
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| わたしは平和の巡礼者として、この地の歴史の中にある あの悲惨な日に、傷と死を被ったすべてての人と 連帯をもって悼むために参りました。 いのちの神が、(わたしたちの)心を、平和と、和解と、 兄弟愛へと変えてくださるよう祈ります。 |
I have come as a pilgrim of peace,to grieve in solidarity with all who suffered injury and death on that terrible day in the history of this land.I pray that the God of life will convert hearts to peace,reconciliation and fraternal love. |
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資料館出口近くに、日本被団協のノーベル平和賞受賞を記念したコーナーが設けられていました。授賞式の講演で、代表委員田中熙巳さんが「人類が核兵器で自滅することのないように!核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張りましょう!」と訴えたことが紹介されています。
4.G7サミットの足跡
資料館にG7サミットについての展示はなかったため、少々がっかりで資料館を出たのですが、出口の真ん前に「G7広島サミット記念館」なるもの建ってます。「これはいい」と、勇んで中に入りました。数々の展示品の中に、首脳たちが実際に使ったというテーブルと椅子があります。係りの方に尋ねると、座っても良いとのことで、岸田首相の位置に着席。すると係りの方が日付ボードを持ってきてくれて、撮影までしていただきました。出口に差し掛かると「隣には被爆遺構展示館もありますよ」といって、資料を手渡してくれました。「G7広島サミットを振り返るともに被爆の実相を学べるルートマップ」と書かれたその資料には、「G7首脳による記念植樹」も表示されています。被爆遺構の後は記念植樹をみてみよう。
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G7首脳たちによって植えられたのは、被爆桜から採取した枝を接木し育てたソメイヨシノ。大きく育ち、たくさんの花を咲かせる姿を見たいものですね。
被爆から80年を迎えた今年、例年になく核兵器廃絶・平和についてのメッセージが飛び交っている気がします。ノーベル平和賞受賞記念パネルに書かれていた田中熙巳さん発言要旨にある「核兵器使用は道徳的に許されないという『核のタブー』が崩れようとしている現在の国際情勢に口惜しさと怒り」を感じている人が増えているからでしょうか。
核兵器廃絶・恒久平和実現への思いを込めて