著者:村上龍
発行:2000年7月20日
発行所:文藝春秋
定価:本体1571円
ISBN4-16-319380-4
一時期話題になったこの本。ふと古本屋で見かけたので購入してみました。読む前の私のイ
メージは「血の流れないバトルロワイアル」といったもので、中学生と大人達との血を流さない
争いが展開されるものと思っていました。
経済が停滞する中で、多くの問題を抱える学校。ある時中学生が反旗を翻した。彼らはイン
ターネットを使って団結。ネットビジネスを展開して日本を大きく揺るがしていく。
さて実際読んでみての感想なのですが、お話としては良くまとまっていると思います。ただ、
中盤を超えたあたりから時の流れが加速して現実味が薄くなったのが気になりました。中盤まで
は興味深く読めただけに残念でなりません。最後はおそらくハッピーエンドに近いと思うのです
が、現実味が薄れたことによりはたしてハッピーなのかハッピーでないのかがよく分からなく
なってしまってします。後半部分はむしろ切り捨てる位のつもりで、地に足をつけた展開を繰り
広げればもっと面白いものになったのではないかと思いました。
日本にあるのは絶望なのか希望なのか。自分の住む国の今後について考えさせられる作品で
す。
しかし正直言って若い人に受け入れられにくいと思いました。全体的に小難しいのです。ま
た、視点が結局大人側であることも私にはあまり良くないことに思えました。こういうお話はぜ
ひ中高大学生に読んで欲しいのですが、やや敷居が高いようです。
全体的に中学生側の行動がうまくいきすぎる点と、中学生側の人物描写が弱い点が気になりま
した。
文章力 :8
ストーリー:7
イラスト :なし(表紙は7でしょうか)
経済のお話が苦手な人はやめておいた方が無難です。
中学生の視点を期待すると裏切られます。
コンピュータやインターネットが苦手な人も避けた方がよろしいでしょうか。
上記に該当しない方で、やや堅めなお話でも大丈夫な人はぜひ一読してみることをおすすめし
ます。