コミケ中止命令!:南田操:富士見書房(富士見ファンタジア文庫) 


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お名前: 篠原 泰彦    URL
著者:南田操
イラスト:さえぐさじゅん ものぐさずん
発行:平成元年10月20日
発行所:富士見書房(富士見ファンタジア文庫)
定価:本体456円
ISBN4-8291-2337-0

 平成元年といえばすでに十年以上前。私はまだ小学生で、コミケの存在など全く知
りませんでした。それでもこの作品を読めば、当時のコミケやアニメ界の雰囲気を知
ることができます。
 そもそも、コミケとは何でしょうか。今や普通名詞化したこの言葉、本来は「コミ
ックマーケット」という同人誌の即売会の略称でした。今でも行われているこのコミ
ケは、長い歴史を経て、非常に多くの人(数万人)が訪れるまでになりました。
 私自身は、ついこの間まで行ったことはありませんでした。コミケに行っている友
人はいませんでしたし、なにやら怪しげな雰囲気を感じていたからです。
 けれど。
 実際に行ってみて、現実とのギャップに驚きました。若干の怪しさこそあるものの
(未知の空間だけに、驚くことが多かったです)、一つの文化を生み出そうとする熱
気に溢れていました。
 と、とりあえずコミケの説明をしたところで、本論に入りたいと思います。
 「シリウス」というサークルを運営しているアテナこと左崎沙織と、シータこと大
島昭子は、コミケに間に合わせるべく原稿書きの真っ最中。ちょうどそのころ、ノン
シャランスのフィル王子は、あこがれの国日本へ行くことになっていました。なぜ日
本にあこがれるかというと、王子は大のアニメ好きだったからです。
 日本に来た王子は、宿舎を抜け出してサークルの集まりに出席します。アニメ文化
を満喫する王子。しかし、そこには見かけとは別の、どす黒い一面もあったのです。
そして、王子を暗殺しようとする人物がいたりして話は三つどもえ。
 途中、商業主義の大サークルの陰謀にあって同人誌が出版できなくなりそうになっ
たりしながらも、結局は無事新刊を発行。一方、コミケに王子が来ると察知した暗殺
部隊はコミケを占領して中止しようとします。
 「コミケ」という、ちょっとマニアックなものをテーマに展開される、切ない物語。
 読み終わったとき、今のコミケのあり方をいろいろ考えさせられる一冊です。

 イラストはとてもかわいらしくて○ 話の雰囲気ともぴったりです。
 コミケというものを知らない、あるいは興味のない人もぜひ一度読んでみてくださ
い。

 なお、コミケについては自分の考えを述べております。あるいは単なる思いこみで
違うことがあるかも知れません。その時は、ぜひぜひご指摘下さい。

文章力  :7
ストーリー:8
イラスト :8